あと1勝で逃したインターハイ 金光大阪・松井九十九/千原史大ペアが"引退試合"で残した足跡<卓球・近畿高校選手権2026> | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:松井九十九(写真左)と千原史大(金光大阪高)/撮影:ワダハルキ

大会報道 あと1勝で逃したインターハイ 金光大阪・松井九十九/千原史大ペアが“引退試合”で残した足跡<卓球・近畿高校選手権2026>

2026.07.21

この記事を書いた人
インタビューから報道記事、選手・用具紹介記事まで幅広く担当。2019年の全日本で見た出澤杏佳選手のプレーに衝撃を受けて以降、粒高バックハンドドライブの習得に心血を注いでいる。
戦型:右シェーク裏粒

<第80回近畿高等学校卓球選手権大会 7月18日~20日 場所:サカイキャニングスポーツパーク(和歌山県)>

高校卓球最大の大会と言えば、夏のインターハイだ。真夏の太陽以上の熱気で溢れかえるインターハイでは、毎年数多くのドラマが生まれている。

とはいえ、すべての高校生がインターハイに出られるわけではない。ほとんどの選手は県予選で涙を呑むことになり、檜舞台に立てないまま高校卓球を静かに引退していくのだ。

だがなかには、県予選とインターハイの間に開催されるブロック大会で、最後に一花を咲かせようと奮闘する選手もいる。

この物語は、そんなインターハイに出られなかった少年2人の、“引退試合”の記録だ。

明豊を破った先輩の跡を継ぐ

大阪府高槻市にある金光大阪(こんこうおおさか)高校。日本代表の守田英正を輩出するなどサッカーの名門として知られている同校は、卓球でも大阪ベスト4に常に入るほどの強豪校だ。熱心な卓球ファンなら、「昨年3月の全国選抜で明豊に勝った高校」と言えば、ピンとくる人もいるかもしれない。

その金光大阪でレギュラーダブルスを組んでいるのが、松井九十九と千原史大だ。


写真:松井九十九(写真右)と大野翔陽(金光大阪)/撮影:ワダハルキ

(松井)「元々1学年上の先輩(大野翔陽)とペアを組んでたんですけど、先輩が引退したので、去年の新人戦の前に千原とペアを組むことになりました」

大野/松井ペアは、先述の明豊戦で勝利を挙げた金光大阪のエースペア。千原はそんな大野の後釜を務めることになったわけだが、「最初は上手くいかないことが多かった」という。


写真:松井九十九/大野翔陽(金光大阪)ペアは明豊戦で値千金の勝利を挙げた/撮影:ラリーズ編集部

(千原)「僕、ダブルスめちゃくちゃ下手なんですよ(笑)。だから、最初は常に松井の足を引っ張ってたと思います」

千原も金光大阪のレギュラー選手。決して実力がないわけではなかったが、明豊を撃破した松井とペアを組むには足りない部分が多かったという。

(千原)「勝つためには本当に足りないことばかりだったので、とにかくひたすら練習しました」

平日はなるべく朝練に出て、サーブとレシーブを中心にダブルスで必要な技術を磨いた。少しでも松井に追いつけるように。

そんな千原の努力の甲斐あって、松井/千原ペアは9月の新人戦のダブルスで、大阪府ベスト8という上々の結果を残した。

「これはいけるぞ」

手応えを掴んだ2人は、一つの目標を立てた。

「来年のインターハイに出よう」

本気で狙ったインターハイ

通常、大阪府のインターハイ男子ダブルスの出場枠はたったの3枠。大阪の場合、その3枠は毎年、上宮もしくは大阪桐蔭のペアが埋めており、他校のペアが入り込む隙はまったくない。

しかし、今年のインターハイは大阪開催のため、出場枠は5枠に拡大。府でベスト8に入った松井/千原ペアなら、可能性は十分にあった。


写真:松井九十九/大野翔陽(金光大阪)/撮影:ワダハルキ

(松井)「最後のインターハイだし、大阪の枠が増えることは知っていたので、何か1種目でも予選を通りたかったんです。そのなかでも、男子ダブルスは一番可能性があると思っていました」

規定練習では、ダブルスの練習時間をしっかり確保することは難しい。そのため、松井と千原は朝練はもちろん、学校外にも指導を受けに行った。

(千原)「各務博志さん(関西大学→関西卓球アカデミー)に、何度かダブルスの個人レッスンをしていただきました。各務さんには技術はもちろん、ダブルスの戦い方や心構えも教わったので、かなり強くなれた手応えはありました」


写真:各務(写真左)は現役時代、坂根翔大(関西卓球アカデミー)とのダブルスで活躍した/撮影:ラリーズ編集部

そして挑んだインターハイ予選。松井/千原ペアは、代表決定戦となる準々決勝で服部圭吾/松永悠(上宮)ペアに敗れるも、敗者復活戦に進出。敗者復活戦1回戦で秋谷潤/劉海翔(上宮)ペアに勝利して、次に勝てばインターハイというところまで来た。

2度目の決定戦の相手は、酒井脩斗/柳本宗祐(上宮)ペア。松井/千原ペアは、第1ゲームを先取して幸先のいいスタートを切るも、そこから3ゲームを連取されて、ゲームカウント1-3で敗退。あと一歩のところでインターハイには届かなかった。

(松井)「敗者復活戦で負けたのは、本当に悔しかったです。本気でインターハイを狙って、実際にチャンスもあったからこそ、ショックは大きかったです」

近畿大会で有終の美を

インターハイには惜しくも届かなかった松井/千原ペアだが、大阪府で6位となったことで、近畿大会の出場権を獲得した。

(千原)「インターハイを逃した悔しさはあったんですけど、近畿大会は引退試合なので、『ダブルスでは絶対に結果を残そう』と決めて挑みました」

松井/千原ペアは、昨年の冬に行われた近畿新人大会にも出場していた。しかし、結果はランク決定戦で敗れてベスト16と、納得のいく結果は得られていなかった。

「大野さんとのペアではベスト8まで行っていたので、何としてでもランクには入りたかったんです」

だが、トーナメントを見て、松井と千原は顔を曇らせた。

(松井)「3回戦で報徳の草野(一歩輝)/吉田(亮太郎)ペアと当たるかもしれない組み合わせだったんですけど、過去に2回試合して2回とも負けていた相手だったんです。なので、『うわ、嫌だな』って正直思いました」

実際に、松井/千原ペアは3回戦で草野/吉田ペアと対戦。そして、松井と千原の嫌な予感は的中し、第1ゲームを一方的な展開で取られる最悪の滑り出しとなった。

「このまま、俺らのダブルス終わるんかな」

そんな考えも脳裏によぎった。


写真:松井九十九/大野翔陽(金光大阪)/撮影:ワダハルキ

しかし、松井/千原ペアは第2ゲームから流れを取り返し、一気に3ゲームを連取。ゲームカウント3-1で勝利し、4回戦に駒を進めた。

(松井)「気持ちが吹っ切れて、徐々にお互いが声も出せるようになりました。僕らが調子のいいときは決まって声を出して気持ちを高めているときなので、観客席の声援の力も借りながら、試合のなかで気持ちを上げていきました」


写真:観覧席からも金光大阪のメンバーが松井と千原に声援を送り続けていた/撮影:ワダハルキ

そして、ランク決定戦となった4回戦では、近畿新人大会ベスト8の馬場太希/中村颯人(滝川)ペアと対戦。苦しみなからも、ゲームカウント3-1で勝利し、見事ランク入りを決めた。


写真:松井九十九/大野翔陽(金光大阪)/撮影:ワダハルキ

(松井)「インターハイの悔しさを乗り越えるためにも何としてでもベスト8には入りたかったので、ランクが決まったときはホッとしました」

(千原)「ランクが決まって嬉しかったんですけど、ランクに入れたのは松井はもちろん、ベンチの神谷監督や応援してくれたみんなのおかげでもあるので、その感謝の気持ちのほうが強かったですね」

最後まで戦い抜いた者だけが

その後、準々決勝では冬の近畿大会を制した西面睦輝/松島翔空(育英)ペアに敗北。ランク入りした勢いでベスト4も狙ったが、「実力差を感じた試合になった」という。

それでも、男子ダブルスではインターハイに出場しない学校から唯一のランク入りを果たした。

(千原)「自分は個人戦ではずっと近畿大会に出られていなかったんです。でも、松井とペアを組むようになって近畿大会に出られて、最後の最後でランクにも入れたので、いい形で終われたのかなと思います」

(松井)「学校対抗でランクに入れなかったことは悔しいですけど、ダブルスは納得のいく結果を出せました」

目標だったインターハイの舞台に、千原と松井が立つことはなかった。それでも、先輩の跡を継いだ日から二人が積み重ねてきた努力は、近畿大会のランク入りという確かな形になって返ってきた。

「最後まで戦い抜いた者だけが、見られる景色がある」

松井と千原が並んで戦った1年は、そのことを静かに教えてくれた。


写真:松井九十九/大野翔陽(金光大阪)/撮影:ワダハルキ

近畿高校選手権2026 速報中

>>近畿高校選手権2026の記事はこちら

大会記念Tシャツの受注生産受付中


写真:Rallysオリジナルの記念Tシャツ/制作:ラリーズ編集部

>>Rallysオリジナル大会記念Tシャツの注文はこちら