昨今、中学校の部活動について多方面で議論が展開されている。
これまでは学校の教員が顧問として部活動を支えてきたが、教員の働き方改革の一環として、外部の指導員を雇用して担当をするという流れができつつある。
しかしながら、すべての学校が外部指導員を雇って部活動を継続することは容易ではない。なかには、部活動そのものを廃止する学校も出てくるだろうし、「部活動の制度そのものを廃止して、地域のスポーツクラブに機能を移管させるべきだ」という意見も出ている。
そしてこの変革は、中学校の卓球部員が競技人口の3分の1を占めると言われている卓球において、無視できない話でもある。
10月19、20日にこぞのえスポーツ本店で行われた合同合宿に営業に伺った際、卓球業界の行く末を左右するとも言えるこの問題に関して議論すべく、クラブチーム代表者による対談の場が設けられた。
卓球場・卓球ショップ・クラブチームを運営する、小園江慶一郎さん(こぞのえスポーツ)、飯村敏文さん(ヒロタクスポーツ)、松下智子さん(城山ひのくにJr.)、竹谷陽子さん(初喜TTC)、小路雅則さん(コスモスポーツ)の5名に、部活動とクラブチームの今後について、卓球の普及について、指導者兼親として子供への接し方についてなどお話を伺った。
中体連の今後はどうなる?
今回はクラブチームの代表の皆さん、今後の展望を議論できればなと思っています。
じゃあどの層が1番多いかって言ったら中学生なんです。その中学生のボリュームゾーンが減ったら卓球界にとってはマイナスですよね。
写真:小園江慶一郎さん(手前)、松下智子さん(中央)、竹谷陽子さん/撮影:ラリーズ編集部
中学生が卓球を始める4〜6月に売り上げがドンと増えます。そこで年間の半分程度を稼ぐこともあります。
それが「先生の働き方改革でできなくなります」→「外部コーチに委託します」→「外部コーチはタダで働けないからお金が発生します」となると、かなり事情は変わってくると思います。
なので、生徒の保護者からいくらか徴収する形にしなければ、受けてくれる外部コーチの人も「この金額じゃできません」となって、外部コーチをやる人がいなくなる可能性は高いですよね。
五輪効果もあって人気のスポーツなのに「中体連がなくなったらみんなどうするんだろう?」とは思います。
数で言えば、部活動でプレーしている子のほうが多いんですよね。
卓球人口減少への対策
それに対して何か取り組んでいることとかあれば、教えていただきたいです。
写真:飯村敏文さん(手前)と小路雅則さん/撮影:ラリーズ編集部
結果的に、認知が広がって初心者の小学校低学年の子どもやママさんが生徒として増えたので、効果はあったと思います。
クラブの卒部生にも手伝ってもらいながら園児たちのために活動してます。
まずは卓球の楽しさを知ってもらうことが大事だと思うので、クラブに来てくれるのを待つだけではなく我々から卓球の素晴らしさを伝える活動をしています。
普及に関しては、もちろん何かやらないといけないけども、結局自分たちの仕事や身の回りのことでいっぱいいっぱいで…。
従業員を雇っているわけでもないし、県や市の卓球協会の仕事もあるしで、普及活動に使える時間はほとんどないですね。
普及はしたいけれども、商売もちゃんとして強化もしていかないと普及にもつながらない。本当に大変だと思います。
指導者として、親として 子どもへの接し方
怒ってもしょうがないと思っているので、どうやってやる気にさせるかだけをいつも考えていました。
写真:明治大学で活躍している息子の飯村悠太/撮影:ラリーズ編集部
親子というより、卓球仲間みたいな感じで僕としては嬉しいですね。
でも、家では卓球の話を禁止にしていました。ずっと卓球場にいて卓球のことを考えていて、家でも卓球の話をしたら家族の時間がなくなるじゃないですか。嫁は料理しながら卓球の話をしていましたが、僕は抑止していましたね(笑)。
小学生の時は、家の玄関を出たら敬語を使うようにしてました。とにかく礼節を重んじて、感謝の気持ちを忘れないように育って欲しいと思ってました。
そうしないと周りのクラブ生にも示しがつかなくなるのと、私もそっちの方がやりやすかったですね。
写真:娘の竹谷美涼(香ヶ丘リベルテ高)はインターハイシングルスを制した/撮影:ラリーズ編集部
これからも、目標を達成できるように親として、私生活もそうですが海外でもっとチャレンジできるようできる限りのサポートを続けて行きます。
うちの三男が野田学園に行ったときにお父さんって怖いものだと思っていたので、他の選手のフレンドリーなお父さんを見てびっくりしていました(笑)。
家で卓球の話どころか普通の会話も怖くてできなかったと思います。今はそんなことありませんけどね(笑)。
なので、反面教師ではないですが、卓球以外のところでは優しく接するようにしています。
うちも家ではなるべく卓球の話をしないようにしていますね。
でもそれには、自分の子どもに対して厳しくすることで周りの子どもたちにも緊張感を与えるという意図があったんです。ある意味見せしめですけど、子どもたちにはそれを伝えたうえで厳しく接していました。
僕からみなさんに聞いてみたいんですが、自分の子どもに一番怒ったことってどんなことですか?
5時から練習なのに、5時になったら自転車で逃げるんですよ(笑)。それを車で追いかけて練習に連れて行っていました。
写真:今では実業団やTリーグで立派に活躍している松下家次男・松下大星(クローバー歯科カスピッズ)/撮影:ラリーズ編集部
うちはさっきも言ったんですが、子どもに対して怒ったことはないです。
僕は中学生で卓球を始めたんですが、親から英才教育を受けてきたわけではない。
一方で、子どもは小学生から卓球を始めて英才教育を受けさせている。
つまり、子どもに期待しているからこそ、子どもができなかったときに「なんでできないんだ?」って怒りの感情が出てくるんじゃないかなと思いました。
普及活動については、Rallysとしても今後取り組んでいかないといけないと改めて感じました!本日はありがとうございました!
卓球の普及について何ができるか
日本代表選手の五輪や世界選手権での華々しい活躍が取り上げられ、卓球の人気やイメージはここ10年で大きく変わった。
学校の現場で話を聞くと、卓球部の入部希望者が多く、台が足りないという嬉しい悲鳴も聞こえてくる。
強化を発端とした普及が上手くいっているとも言える。
しかし一方で、それは「中学校に卓球部がある」という身近に卓球を始められる環境があったからこそ成立してきた部分もあるだろう。
今後はその前提条件が成り立たなくなる。
どうすれば卓球を始めてもらえるのか、続けてもらえるのか、再開してもらえるのか。普及面について卓球界全体で真剣に考えなければならないときが来ている。
今回、卓球を普及する現場の最前線に立たれている5名のお話を伺って、メディアとしてメーカーとして、卓球界全体を巻き込んで何ができるのか改めて考えていきたいと感じた。








