文:ラリーズ編集部
<天皇杯・皇后杯 平成30年度全日本卓球選手権大会(一般・ジュニアの部)丸善インテックアリーナ大阪>
20日、全日本卓球選手権大会の最終日、男子準決勝で大島祐哉(木下グループ)が前年度王者の張本智和(JOCエリートアカデミー)をゲームカウント4-3で下した。張本智和と大島祐哉はTリーグ・木下マイスター東京のチームメートでもある。両者は昨年も準々決勝で対戦しており、張本が大島に4-1で勝っていた。大島にとっては、1年越しのリベンジで自身初となる決勝進出となった。
大島vs張本、各ゲームの試合展開
写真:大島祐哉(木下グループ)/撮影:ラリーズ編集部
第1ゲーム、大島には出身である京都・東山高校の後輩たちが観客席からエールを送り、大歓声に包まれる会場。ファーストポイントは張本がサーブから、大島のミドル(懐付近)に見事な3球目攻撃。お互いにチキータを主軸にレシーブする選手であるため、互いにそれを警戒し、フォア前(フォアサイドの浅めのコース)にサーブを集める。
ラリーでは、やや下がって強力なフォアハンドドライブを打つ大島と、台の近くでブロックやカウンターで応戦する張本、第1ゲームから激しいラリー戦を展開する。
8-8と拮抗した場面で、大島が張本の甘くなったサーブをフォアハンドで強打。これで点差を離し、最後は大島のサーブがエッジで入り、張本はこのゲームを落とした。エッジに当たるサービスエースが会場のビジョンに映し出されると観客からは大きなため息が起こる。
第2ゲーム、悪い流れで第1ゲームを失った張本は、流れを取り戻したいが、大島が近年強化してきたバックハンドで重いドライブを打ち、攻めるパターンが作れない。張本はプレッシャーからか、徐々にミスも増え始め、大島の一方的な展開に。大島のフォアとバックでのミスの無い攻撃の前に打開策が見い出せず、張本はこのゲームも落とす。
第3ゲーム、張本の集中力が高まる。ネットインのボールも丁寧に拾い、得点につなげ、バックハンド対バックハンドでのラリーのミスが減る。大島の意表を突いたロングサーブにも驚異的な反応でレシーブし、一気に5-0まで離す。ミスが第2ゲームに比べ格段に減った張本がこのゲームを11-1の大差で取り返した。最後に放った渾身のチキータには会場からどよめきが起こった。
第4ゲーム、大島は得意のYGサーブを多用する。しかし、張本は下回転をしっかりかけたレシーブで対応し、大島のミスを誘う。このゲームも4-0まで離し、優位に立つ張本。8-4としていたが、大島が思い切ってロングサーブで得点を重ね、張本リードの8-7とした場面で、張本ベンチがタイムアウトを取る。一方の大島はベンチコーチをつけていないため、一人黙々と思考を巡らせる。
父親である宇さんからのアドバイスを受けた張本であったが、タイムアウト明けのポイントを大島に奪われ8-8とする。勢いに乗る大島は張本に打たれるリスクを覚悟でロングサーブを続け、このゲームを取り、決勝に王手をかけた。前年王者が追い込まれ、会場も騒然となる。
第5ゲーム、後がなくなった張本はリードを奪いたいところ。レシーブではストップ(台上で短く止めるレシーブ技術)で大島に思うように打たせず、先手を取っていく。しかし、大島も粘り強い。張本に打たれても、台から離れて粘り、張本に食らいつく。8-8とした場面で、張本が思い切ってフォア前のボールをチキータ。これで均衡を打ち破り、張本がこのゲームを取り返した。
第6ゲーム、お互いに意地と意地がぶつかり合う。大島の快速フットワークを使った攻撃に対して、張本がブロックやカウンターで得点を重ねる。会場からは1ポイント1ポイントに大きな拍手が送られる。張本は第4ゲームで苦しんだロングサーブも徐々に攻略し、ゲームを奪い試合は3-3の振り出しに戻る。
運命の最終第7ゲーム、大島が張本のサーブから連続ポイントを奪い、勢いに乗る。張本が思わずベンチを振り返った。張本にも良いポイントはあるものの、緊張からかミスが目立つ。先に5点を取ったのは大島。コートチェンジ後も張本は2点差を縮めることが出来ない。互いに点を取り合う展開が続き、大島が7-5とした場面で、張本が渾身のループドライブとバックハンドのラリーを制し7-7と張本がついに大島に追いつく。さらに、ここで張本が会心のチキータで得点し、7-8と張本が逆転する。
大島もラリーで粘り勝ち9-8とまたも追い越すが、張本がその後強烈なカウンターで9-9となる。死闘と呼べる戦いに観客席からも大きな拍手が沸く。
勝負が決まるこの大事な場面で大島が選択したのはロングサーブだった。一度はレットになり、ショートサーブからの得点でマッチポイントを握ると、最後はロングサーブでエースを取り、大島が勝利を収めた。
大島、張本コメント
写真:張本智和(JOCエリートアカデミー)/撮影:ラリーズ編集部
大島は試合後「バック対バックのラリーでは部が悪いので、フォアで回り込んで張本のチキータを狙っていった。最後はロングサーブしか点を取れるイメージがなかったのでそれ信じて押し切った。勝ちを意識してしまったので、追いつかれそうになったが、一球一球頑張るしか無いと思った。家族も応援してくれているので」と冷静な表情で語った。
連覇を逃した張本は「一番惜しかったのは5ゲーム目。できるだけフルゲームには持ってかないようにしなければいけなかった。(ゲームオールとなった)緒方戦では攻め切れたが、この試合では守りに入ってしまった。相手が攻めてきた。」と敗因を述べた。
また今大会を振り返り「初日から混合ダブルスでも苦しい試合が多かった。連覇の期待もあり、プレッシャーもあった。苦しい全日本だった。負けてここまで違う大会になるとは、本当に悔しい。研究されてて去年とは違うので、3月のカタール(オープン)に向けて、死ぬ気で練習して、一気に突き抜けたい」と世界に目を向けたコメントを残した。
大島は決勝で水谷隼(木下グループ)と木造勇人(愛工大)の勝者と対戦する。
全日本卓球2019 男子シングルス準決勝
写真:張本智和(JOCエリートアカデミー)/撮影:ラリーズ編集部
張本智和(JOCエリートアカデミー)3-4大島祐哉(木下グループ)
8-11/4-11/11-1/8-11/11-8/11-4/9-11