【卓球】タイムアウト/メディカルタイムアウトとは? 具体事例とあわせて解説 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

卓球技術・コツ 【卓球】タイムアウト/メディカルタイムアウトとは? 具体事例とあわせて解説

2025.08.13

文:ラリーズ編集部

今回は、卓球の試合のルールの中でもタイムアウトについて解説します。

卓球におけるタイムアウトとは?

卓球におけるタイムアウトとは、1試合に1度だけ1分以内で取れる休憩・作戦タイムのことを指し、選手はベンチに戻り、コーチに相談ができます。

タイムアウトのルール

日本卓球協会の定めた基本ルール(2025年6月1日時点)によると、タイムアウトには以下のようなルールがあります。

①競技者または組は、個人戦の1マッチ(団体戦においては個々のマッチ)において1分以内のタイムアウトを1回要求することができる。

②個人戦においては、競技者、組または指名されたアドバイザー(ベンチコーチ)がタイムアウトを要求できる。団体戦においては、競技者、組または監督が要求できる。

③タイムアウトの要求に関して、競技者または組とアドバイザーまたは監督の意見が異なる時は、個人戦の場合は競技者または組の要求が、団体戦の場合は監督の要求が優先される。

④タイムアウトの要求は、ゲーム中のラリーとラリーの間にのみでき、その際手で「T」を示すものとする。

⑤タイムアウトの要求を主審が確認したら、主審は競技を中断し、タイムアウトを要求した競技者または組の方にホワイトボードを掲げる。

⑥タイムアウトを要求した競技者または組が、競技を再開する旨を申し出た時、または1分が経過した時(どちらか早い方)競技を再開しなければならない。

⑦両競技者または組(両アドバイザーまたは監督)により、同時にタイムアウトの要求が出された場合は、両競技者または組が協議を再開する旨を申し出た時、または1分経過した時(どちらか早い方)に競技を再開しなければならない。また両競技者または組は、そのマッチにおいて別のタイムアウトを要求することはできない。

メディカルタイムアウト(MTO)

WTT

WTTの規則によると、以下のような場合にメディカルタイムアウト(MTO)を取ることができます。

・審判長は、選手が一時的に行動不能となりプレーを継続できない状況が発生した場合、緊急の「メディカルタイムアウト」を認めることができる。メディカルタイムアウトは最大でも5分を超えてはならない。

・特定のイベントにおいて初めて発生した怪我や医療状況(選手の現在の体力状態による筋肉の痙攣や疲労を除く)であり、審判の判断で相手選手またはペアに不当な不利益を及ぼす可能性がない場合、審判は進行中のゲーム終了時から「メディカルブレーク」を付与する。

・「メディカルブレーク」は、1分間のゲーム間休憩に追加して最大2分間とし、合計3分間の休憩となる。この休憩は、WTT理学療法士またはイベントドクターによる評価および/または治療に利用される。

・WTT理学療法士またはイベントドクターの裁量により、選手がまだメディカルタイムアウトを使用していない場合、メディカルブレイクをメディカルタイムアウトに変更することが可能である。

・競技領域内で誰かが出血した場合、直ちに競技を中断し、該当者の治療が終了し、全ての血液が競技領域から拭き取られるまで競技を再開してはならない。

・競技者は、個人戦の間は主審の許可なしに競技領域から離れてはならない。ゲーム間の休憩やタイムアウト中は、主審の監督のもと、競技領域から3メートル以内にとどまらなければならない。

ITTF

また、国際卓球連盟(ITTF)の規則によると以下のような場合にメディカルタイムアウト(MTO)を取ることができます。

・審判長は競技者が事故によって、一時的に競技不能となったときは、いかなる場合も10分を越えない範囲で競技の中断を認めることができる。ただし中断が相手競技者または組に不当に不利になるおそれがないと、審判長が判断した場合のみとする。

・マッチ開始時に存在した障害、またはマッチ開始時に合理的に予測される障害または競技の通常のストレスによるものによる競技の中断は認められない。競技者の健康状態または競技の進行状況によって生じたけいれんや疲労による障害は、緊急中断を正当化しない。緊急中断は、転倒による負傷のような事故で、競技の継続ができない場合にのみ認められる。

・競技領域内で誰かが出血した場合、直ちに競技を中断し、該当者の治療が終了し、全ての血液が競技領域から拭き取られるまで競技を再開してはならない。

・競技者は、個人戦の間は主審の許可なしに競技領域から離れてはならない。ゲーム間の休憩やタイムアウト中は、主審の監督のもと、競技領域から3メートル以内にとどまらなければならない。

なお、日本卓球協会(JTTA)の規則はITTFに準じています。

タイムアウトの意義

卓球は「戦略スポーツ」とも呼ばれ、ラリー中だけでなく、試合の流れを読む力や戦術の切り替えが勝敗を大きく左右します。その中で、試合中に1分間だけ認められるタイムアウトは、選手にとって非常に貴重な時間です。

プレー中は、ボールを相手コートに返すテクニックに意識が集中しがちで、激しいラリーにより心拍数も上昇します。トップ選手であっても、冷静に戦況を分析し、戦術を立て直すのは容易ではありません。

かつては、ラリー終了後にボールを拾いに行く時間を「一人作戦タイム」として使う余裕がありました。しかし現在、国際大会やTリーグではマルチボールシステム(複数のボールを使って試合を止めずに進行する方式)が導入されています。この制度では、ラリー終了直後に審判から新しいボールが渡され、すぐに次のプレーに入らなければなりません。

つまり、試合中に戦術を考えるための時間的猶予はほとんどなくなっており、この1分間のタイムアウトの重要性はこれまで以上に高まっています。

では、選手たちはこの1分間をどのように使っているのでしょうか?

一般的には、ベンチコーチと「得点パターン」「失点パターン」を整理し、次の一手をどうするかの戦術を決めるために使います。また、緊張や焦りで本来の実力を発揮できていない場合には、メンタルを整える時間として活用されることもあります。

タイムアウトを使うタイミング

タイムアウトの1分間をどのように過ごすかも試合に大きな影響を与えるが、よりポイントとなるのがタイムアウトを取る“タイミング”です。

タイムアウトを取るということは、同時に相手にも1分間の時間を与えることになります。したがって、自分にとっては必要なタイミングでありながら、相手にとっては影響が少ない、または混乱を招くタイミングを見極めることが求められます。

以下は、実戦でよく見られる効果的なタイムアウトのタイミングです。

①劣勢から挽回したい時

1つ目は「劣勢から挽回したい時」です。卓球は一瞬のミスや心理の変化が試合の流れを一気に変える競技です。さっきまで一方的にリードしていた選手が、わずかなスキを突かれて逆転される場面は日常茶飯事です。だからこそ、精神状態をリセットできるタイムアウトは戦局をひっくり返す貴重な手段として非常に重要なのです。

例えば、5ゲームマッチのシングルスでゲームカウント1-2でリードを許している場面から1-3となった時点では、タイムアウトを取ることを真剣に考えるべき状況です。

②大量リードからの追い上げを止めたい時

2つ目は「大量リードから追い上げられそうな時」です。たとえば9-3と大きくリードしていたのに、10-7まで追い上げられてしまった場面。このようなときにタイムアウトを取ることで、相手の連続得点の原因を分析し、流れを断ち切る対策を練ることができます。結果的に、このゲームを確実に取り切る可能性が高まります。

③試合序盤で戦術が定まらない時

3つ目は「試合序盤で戦術が定まらない時」です。戦術転換が早い卓球競技において、1ゲーム目や2ゲーム目で「どのコースを狙うか」「どんなサーブが効くか」などの基本方針が見いだせないままプレーを続けると、終始迷いながらの展開となってしまいます。早い段階でベンチと相談し、方向性を明確にすることで、その後の試合を優位に進めるきっかけとなります。

中国男子の監督を務めた劉国梁氏も、タイムアウトを取るタイミングが早いということで有名で、序盤に優位に立つことが重要だということを示しています。

④確実に次の1本を取りたい時

4つ目は「確実に次の1本を取りたい時」です。ゲームポイント・マッチポイントの場面やゲームカウント1-1でデュースの場面など次の1点でゲームや試合が決まる「勝負所」では、過度な緊張によってミスが増える傾向があります。このような場面でタイムアウトを取ることで、焦りを抑え、どの戦術で1点を取りにいくかを冷静に判断する時間を確保できます。

まとめ

試合に出場する選手のほか、ベンチコーチも取ることができるタイムアウト。「ただの休憩」として捉えるのではなく、誰がどのタイミングで申告したか、なぜ申告したか、タイムアウト中にどんなアドバイスを行い、それによってその後の試合展開はどのようになったのか、このようなポイントを想像しながら観ると卓球をもっと楽しめること間違い無しです。

競技者や観戦者にとって、タイムアウトを理解することは、卓球をより深く楽しむための鍵となるでしょう。