26年ぶり快挙の裏で物議醸した"台上セレブレーション" 「仕方ない」で済ませない3つのワケ<世界卓球2026> | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:ベルナデッテ・スッチ(ルーマニア)/撮影:ラリーズ編集部

大会報道 26年ぶり快挙の裏で物議醸した“台上セレブレーション” 「仕方ない」で済ませない3つのワケ<世界卓球2026>

2026.05.09

この記事を書いた人
インタビューから報道記事、選手・用具紹介記事まで幅広く担当。2019年の全日本で見た出澤杏佳選手のプレーに衝撃を受けて以降、粒高バックハンドドライブの習得に心血を注いでいる。
戦型:右シェーク裏粒

<2026 ITTF世界卓球選手権ファイナルズ ロンドン大会(団体戦) 日程:4月28日~5月10日 場所:ロンドン(イギリス)>

世界卓球ロンドン大会女子準々決勝で見られた“セレブレーション”が、今世界中で大きな話題となっている。

快挙の裏で起きた“事案”

ルーマニア対フランスの第4試合では、エースのベルナデッテ・スッチ(ルーマニア)が勝利し、ルーマニアの準決勝ならびに、同国にとって26年ぶりとなる世界選手権でのメダル獲得が決まった。

そして、その喜びを爆発させたスッチは歓喜の声を挙げて、卓球台の上に乗るセレブレーションを行った。


写真:台の上に乗って喜びを爆発させた/撮影:ラリーズ編集部

チームの勝利がかかった試合や、格上の選手と戦う試合等、緊張が高まる瞬間は何度もある。そして、その大一番の勝負に勝てた時に感情を爆発させ、勝利パフォーマンスを行う選手もいる。

こうしたパフォーマンスが日本で行われることは非常に稀であり、今回のパフォーマンスに驚愕した卓球ファンも多いだろう。


写真:2015年世界選手権決勝で台に乗る馬龍(マロン・中国)/提供:ITTF

実際に、台の上に乗るパフォーマンスは過去にもあった。

2015年の世界選手権男子シングルス決勝では、馬龍(マロン・中国)が勝利後に台の上に乗ってポージングすることもあった。この馬龍のパフォーマンスも当時は大きな話題となったが、馬龍のパフォーマンスと今回のルーマニア代表のパフォーマンスには、大きな違いが3点ある。


写真:直後のブラジル対フランス戦ではカルデラノが18歳のコトンに破れる波乱も/撮影:ラリーズ編集部

1点目は、後続の試合への影響だ。この日、女子のルーマニア対フランスの対戦の後には、男子のフランス対ブラジルの試合が控えていた。

準々決勝からは1台で進行しているため、ルーマニアのパフォーマンス後に卓球台の緊急メンテナンスが入り、フランス対ブラジルの第1試合前のラリーでも、選手が台の状態を気にする様子が見られた。

卓球は、台のごくわずかな傾きや凹みでもボールの軌道や回転に影響を与える繊細なスポーツだ。ゆえに、もしこの台乗りで卓球台に傷がついたり凹んだりしていれば、昨日のブラジル対フランス戦の結果も変わっていたかもしれない。

一方、馬龍の試合は決勝戦だったこともあり、後続の試合への影響はかなり限定的であった。この点は大きな違いである。


写真:まさかの光景に会場も騒然/撮影:ラリーズ編集部

そして2点目が、試合に勝った本人だけではなく、ベンチのメンバーも台に乗ったことだ。一人ならまだしも、複数人が台に乗れば、当然ながら台にかかる負荷は大きくなる。

しかも、このとき選手は素足ではなく試合用のシューズを履いていた。卓球のシューズはサッカーや野球のスパイクのように金具はないものの、素足よりも台に与えるダメージが大きくなることは明白だ。

これも、馬龍のケースでは、世界王者となった本人が一人で台に乗った点で大きく異なっている。(馬龍の場合は、団体戦ではなく個人戦であったことも関係しているかもしれないが)


写真:台の上で跳ねる選手も/撮影:ラリーズ編集部

そして3点目が、台に乗った選手が何度も飛び跳ねたことだ。これも複数人で乗ることと同様に、より卓球台に負荷を与える行為だ。

このときルーマニアの選手は台の上で円陣を組んで、飛び跳ねながら回っていた。チームスポーツではよく見られるセレブレーションの一つだが、まさかこれを卓球で、しかも卓球台の上で見ることになるとは予想だにしなかった。

この点に関しては馬龍も卓球台に飛び乗ってはいたが、ルーマニアのように何度も飛び跳ねたりはしていなかった。

歴史に残る一幕に

もちろん、長年世界の舞台で戦ってきた選手たちの感情が溢れ出た結果であり、その瞬間の高揚感は容易に抑えられるものではない。

実際に、会場からは驚きとともに大きな歓声も上がっており、この“熱狂”そのものが世界選手権という舞台の特別さを象徴していたとも言えるだろう。

しかしその一方で、卓球台は卓球という競技そのものを支える重要な用具である。感情表現としてのパフォーマンスと、競技環境を守るスポーツマンシップ。そのバランスをどこまで許容するべきなのか、今回のシーンは卓球界に一つの問いを投げかけた。

ロンドンの会場で生まれた衝撃的なセレブレーションは、世界卓球の歴史に残るワンシーンとして、今後も大きな議論を呼びそうだ。


写真:ルーマニア代表は今日の準決勝で中国と対戦する/撮影:ラリーズ編集部