2つのクラブが1つのチームで試合に出たら 千葉の合同チームFortisの仮説 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:木本学(アイ・ユー代表、写真左)さんと原田隆雅(礼武道場、写真右)さん/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー 2つのクラブが1つのチームで試合に出たら 千葉の合同チームFortisの仮説

2026.07.12

この記事を書いた人
愛媛県出身。2025年6月からRallysアドバイザー。
軽い小咄から深堀りインタビューまで、劇場体験のようなコンテンツを。
戦型:右シェーク裏裏

千葉市にある商業施設「GLOBO」の中に、ガラス張りの卓球場がある。

800台の駐車場を持つショッピングモールの中にある、そのめずらしい卓球場の中では、2つのクラブの小・中学生が合同で練習していた。


写真:卓球センターGLOBO店/撮影:ラリーズ編集部

千葉県千葉市を拠点とする「アイ・ユー」と、千葉との県境、東京都江戸川区にある「礼武道場」が、合同でチーム「Fortis」を結成、協会登録をしたのは2年前からだ。

少子化の加速、部活動の地域移行の影響を大きく受ける日本の卓球界において、2つの別拠点クラブが1つのチームで登録、試合に出るという仮説はどのような結果を生むのだろうか。

全農杯全日本卓球選手権大会(ホープス・カブ・バンビの部)千葉県予選を終えた翌日、その練習場で話を聞いた。


写真:原田隆雅(礼武道場代表、写真左)さん木本学(アイ・ユー代表、写真ミグ)さん/撮影:ラリーズ編集部

合同チーム「Fortis」結成の理由

――まず、「Fortis(フォルティス)」という、2クラブでの合同チームができた経緯を教えてください。
原田隆雅(礼武道場):私の方の事情で言えば、東京都の千葉寄りの江戸川区で「礼武道場」を運営していて、最初の頃は千葉在住の選手が多かったんですけど、だんだん千葉の選手が減って、東京の選手が増えてくる流れがありました。

元々、(アイユー代表の)木本さんのお父さんと強化練習などを一緒にやってきた経緯もあり、「チームを1つ作って一緒に強化しませんか」と私が持ちかけたところから始まりました。約3年前くらいですね。

――木本さんはそのお話を聞いてどう思いましたか。
木本学(アイ・ユー):率直に、すごくいいなと思いました。

うちはチームとしては人数もいて成り立ってはいたんですけど、外部と組むことによって、競争環境が生まれて選手にいい刺激が入ります。良いお話をいただいたなと嬉しく思いました。


写真:木本学(アイ・ユー代表)さん/撮影:ラリーズ編集部

――基本はそれぞれの拠点で練習するんですよね。何を一緒にするんでしょうか。
原田隆雅(礼武道場):合宿は、礼武道場もアイ・ユーもFortisの子どもたちも一緒にやりますし、今日のように、それぞれの練習場に練習に行かせてもらうこともあります。

団体メンバーを決めるときリーグ戦をするんですよ。礼武道場の上位何名、アイ・ユーの上位何名が総当りのリーグ戦をして、Fortisとしての団体メンバーを決めます。純粋にその順位で決めるので、今までだったらそれぞれのチームで団体メンバーで出られたけれど、漏れる子も出てきます。


写真:2クラブから練習に集まった小中学生/編集:ラリーズ編集部

―― 保護者の方からクレームはなかったですか。
原田隆雅(礼武道場):今のところ無いですね。
木本学(アイ・ユー):アイ・ユーの子どもたちからすると、Fortisが“プロフェッショナル”っぽく見えるみたいで、入りたいという声が多く、保護者の方からも感謝の声をもらっています。


写真:合同の練習風景/撮影:ラリーズ編集部

“子どもの中で子どもが育つ”大切さ

―― 原田さんにとって、アイ・ユーと一緒に活動するメリットはどう感じていますか。
原田隆雅(礼武道場):まず思うのは、商業施設の中のガラス張りの卓球場で選手がたくさんいて、とても良い雰囲気の中で練習できること。

うちは、細かいところまでの技術指導を心がけていますが、そういう次元ではなく、子どもが子どもたちの中で育っていく大切さを年々感じているので、そこはすごくありがたいなと思いますね。


写真:合同の練習風景/撮影:ラリーズ編集部

―― 木本さんはいかがですか。
木本学(アイ・ユー):原田さんと一緒にできる、ということですよね。

僕らは選手としてそこまで実績があるわけではなく、自分たちが指導者として模索し、壁にぶち当たりながらやってきたからこそ子どもたちに教えられるという方針でやってきました。

でも、原田さんのように選手としての実績のある方の壁の乗り越え方や多くの経験値は、僕らには無いもので、とても参考になります。

原田さんのおかげで指導者やクラブ同士の横の繋がりが広がってきたのも、ありがたいですね。


写真:指導風景/撮影:ラリーズ編集部

原田隆雅(礼武道場):もう1点、クラブ運営側からすると、選手が移籍をせずに他のクラブの指導を受けられたり練習できる良さがありますよね。

その代わり、仲の良い指導者同士でも嘘をつかない信頼関係が必要だと思います。


写真:木本学(アイ・ユー代表、写真左)さんと原田隆雅(礼武道場、写真右)さん/撮影:ラリーズ編集部

合同チームの課題点は

―― 今後、少子化が進む多くの地方の卓球クラブにとって、ひとつの選択肢になりうるのかもしれませんね。

一方で、大会運営側からすると、このケースが増えると、組み合わせなどで同門対決に配慮するようなことは難しくなりますよね。

原田隆雅(礼武道場):これは、東京ではありがちな話で、例えば、一つのチームからホープスに15人が出ていた場合に山を分けられない、ということと同じです。

今後Fortisに加盟するクラブが増えて登録人数が増えた場合は、元クラブも含めて同士討ちすればよくて、極端な話ですが、千葉県で1つのチームしかなくても試合は公平に成立すると私は思っています。

もちろん、組み合わせをできる限り均等配置することは大事ですが、それはもしも合同チームが増えたとしても失われるものではないと捉えています。


写真:原田隆雅さん(礼武道場)さん/撮影:ラリーズ編集部

木本学(アイ・ユー):僕も全く同じ意見で、県での代表枠数は決まっているので、そこは同じチームであっても変わらないなと。

あと、千葉県の場合は、協会がポイント制を導入していて、その順位に従って組み合わせは配置されるので、そこまでマイナスの影響はないのかなと思います。

―― 指導者が二人いるということで、指導の場面で住み分けがあったりするのでしょうか。
原田隆雅(礼武道場):いや、全然ないですね。どっちにも聞けばいいと思います。もちろん、“こうやったほうがいい”はあるんですけど、でもその子に合うかどうかも含めて、選ぶのは子どもたちです。

この方法がやりやすいんだろうなと思ったら、僕はそれ以上変えようとはしないです。


写真:原田隆雅さん(礼武道場)さん/撮影:ラリーズ編集部

木本学(アイ・ユー):シンプルに、情報が増えることは子どもにとって悪いことではないと思います。

自分が教えている選手も定期的に原田さんにレッスンしてもらうんですが、動きが変わったなと思ったときに子どもと会話して、本人がやりやすい方法を一緒に考えるという感じです。

迷う場面もあるのなかと思っていましたが、今のところほどんどないですね。


写真:木本学(アイ・ユー代表)さんの指導風景/撮影:ラリーズ編集部

メンタルは“何かの役になりきる”

―― では、Fortisとして臨んだ、先日の全農杯全日本ホカバ千葉県予選を振り返っていかがでしたか。
木本学(アイ・ユー):アイ・ユー側からの通過者は1名で、全体にちょっと悔しい結果でした。

勝負どころで強気になれないとか、競った場面でどれだけ平常心を保つかなど、メンタル面での課題を感じました。


写真:千葉県予選ホープス男子3位の藤山悠大(Fortis)/撮影:ラリーズ編集部

―― ホカバ世代の試合は特に、試合中のメンタルの保ち方が大事ですよね。
木本学(アイ・ユー):“自分はどれだけこの辛い練習を耐えてきたか”と思えることも大事だと思いますし、いかに試合中に自分をコントロールさせていくか、そのあたりの相談も原田さんにできるのも、合同チームの良さだと思います。
―― 原田さんはいかがでしたか。
原田隆雅(礼武道場):2人、お姉ちゃんと弟が出場して、2人とも通過しました。

弟は直前1週間、少しプレーが崩れていたので大会前数日間は細かく見ていました。ただ、試合では嗚咽するほど泣いてしまいましたが、3位で初代表なのでひとまずは良かったのかなと。

メンタルの話で言うと、私は“何かの役になりきる”ような仕掛けをしますね。スーパーヒーローのような衣をつけてあげて、試合中も“自分は演じているんだ”と思えば、我慢できる場面もある。


写真:千葉県予選バンビ男子3位の石丸瑛絃(Fortis)/撮影:ラリーズ編集部

――面白いですね。
原田隆雅(礼武道場):私自身が、卓球をしているときはそういう考えだったので、それを指導にも取り入れています。

通常の自分ではなく演じてるんだと思えば、感情を抑えて冷静になれるんです。

千葉の恵みを囲んで

さて、練習後には、その2つのクラブの子どもたちが副賞を囲んで食事をした。


写真:練習後に副賞の地元の食材を食べる子どもたち/撮影:ラリーズ編集部


写真:優勝の副賞である房総ポーク加工品詰合せを焼いた/撮影:ラリーズ編集部

3位副賞の千葉県産米「粒すけ」は5合炊いたのだが、一瞬でなくなった。

地元の恵みを味わいながら、賑やかに喋り続ける子どもたちは、既にどの子がどっちのクラブか全く見分けがつかない。

子どもにとってみれば、拠点クラブが違うことなど、楽しく交流することに何の障壁もない。

そういえば、どの試合会場でも、試合後はチーム入り混じって、外やロビーで遊ぶ子どもたちの姿がある。

ホカバの風景だなと思った。


写真:楽しそうな子どもたち/編集:ラリーズ編集部


写真:原田隆雅(礼武道場、写真右)さんと木本学(アイ・ユー代表、写真左)さん/撮影:ラリーズ編集部

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