写真:生田大朗氏(シスコシステムズ合同会社)/撮影:ラリーズ編集部
卓球×ビジネス シスコ・生田氏に聞く、卓球W杯テクノロジー支援「アイドルのライブを応用します」<卓球応援企業特集>
2019.11.05
インタビュー・文:川嶋弘文(ラリーズ編集部)
IT大手のシスコシステムズが、卓球へのスポンサーシップを強化している。
ロンドン、リオに続き東京2020オフィシャルパートナー(ネットワーク製品)に決定している同社は、11月6日から開催される卓球チームワールドカップ東京大会への協賛を決めた。
>>国際卓球連盟、大手IT企業・シスコシステムズとパートナーシップ締結
グローバルIT企業として知られるシスコがなぜ卓球を応援するのか。同社でアスリートアンバサダープログラム(石川佳純、張本智和選手)を含む、東京2020オリンピック・パラリンピックのマーケティング業務を担当する生田大朗氏(マーケティング本部 東京2020オリンピック・パラリンピック部長)にお話を伺った。
このページの目次
IT企業がスポーツスポンサーシップに乗り出す理由
写真:シスコアスリートアンバサダーが東京2020ムードを盛り上げる(六本木ヒルズ)/提供:シスコシステムズ合同会社
ーーシスコの本社のあるアメリカではスポーツとエンタメの融合が進んでいますね。
生田:欧米では、単なるスポーツ観戦にとどまらず、スタジアム全体がエンターテインメントの場になっています。日本では昔からスポーツの現場でビジネスの匂いをさせちゃいけないという風土がありますが、そこを変えていきたいですね。
弊社ではアメリカを中心に弊社のテクノロジーをスタジアムで活用している事例が豊富にありますので、それらをうまく活用しながら、日本のスポーツエンターテインメントを盛り上げていければと思っています。
写真提供:シスコシステムズ合同会社
ーースポーツスポンサーシップについてはどのようなポリシーをお持ちなのでしょうか。
生田:企業の「働き方改革」に対比して、選手の「戦い方改革」と言っています。
すなわち単に選手をスポンサードするだけでなく、シスコが持つテクノロジーを活用して、選手強化に貢献することを目指そうというコンセプトです。
この考えに基づいて、2017年12月に石川佳純、張本智和両選手とのアスリートアンバサダープログラムをスタートしています。
シスコが卓球に注目する3つの理由
写真:課外授業での張本智和選手/提供:シスコシステムズ合同会社
ーー多くのスポーツがある中、なぜアスリートアンバサダーに卓球選手が選ばれたのでしょうか?
生田:実はいろんな競技を検討したんですね。野球とかサッカーとかゴルフとか、その他諸々。でそれぞれ一長一短あるんですけれども、最終的に卓球にした理由は、やっぱり世界的に強い選手がたくさんいる。オリンピックに出る可能性、出てメダルを取る可能性がというのがまず第一です。
それからファン層が幅広い。小さいお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで幅広い年代で人気のあるスポーツです。これが二つ目ですね。
それから、三つ目は、競技のコンパクトさとテクノロジーとの親和性です。サッカーや野球は会場が広くかつ屋外ですね。弊社製品はもちろん屋外用もあるんですけれども、屋外で大規模にやろうとすると施設側とかなり調整しなければならない。それに比べて卓球は室内でコンパクトにでき、弊社の製品が使いやすい。それから卓球はテクノロジーとの親和性がある。データ分析を含めてまだまだ卓球にはテクノロジーを取り入れる余地があると思います。
2年に渡るテクノロジー支援
ーー実際に約2年間でどのような取り組みをされてきたのでしょうか?
生田:時系列で説明しますと、まずはコミュニケーションのサポート。卓球のトップアスリートはとにかく海外遠征が多い。世界中を飛び回って試合をやるということで、行った先々でいかにスムーズかつ安全にコミュニケーションできるかが重要です。そこで弊社のCisco Webex Teamsというビジネス向けのチャットアプリを使っていただくことからスタートしました。
写真:石川佳純選手/提供:シスコシステムズ合同会社
続いて練習場のIT環境を改善する、ということをやらせて頂きました。そもそも卓球の練習場にWi-Fiがないということになりまして(笑)そこからスタートしました。都心から遠いところにある練習場の様子を、コーチが遠隔で見てアドバイスできる環境を整えました。具体的にはCisco Webex Boardというビデオ会議とかデジタルホワイトボードなどが使える端末を持ち込んで、ビデオ会議で繋ぎ、アノテーションという機能を使って、画面に映した試合や練習の映像をキャプチャーして、そこに線を引くなどして改善点をアドバイスするといったことができるようにしました。
ーー現在はどのようなサポートを?
生田:実際に石川佳純選手から聞くと、やっぱり相手選手のデータがもっと欲しいというニーズがありました。そこをもっとサポートできないか、ということで最近ではデータ分析に力を入れてやってます。いろんな画像データからボールの落下点やコースなどのあらゆる情報を全部インプットしています。
写真提供:シスコシステムズ合同会社
データは入力ツールを使って弊社のサーバーに蓄積し、タブレット端末にインストールした専用のアプリを使って見る形になります。APIを使って弊社のアプリと連携させるという仕組みも取り入れる予定です。点数、試合の様子、ラリーの軌跡に加えて試合の流れ、つまりポイントの推移が見られます。それを振り返ったり、あと自分が得点を取ったところだけを再生するとか。そういうことも簡単にできるツールになってます。しかもセキュリティも担保されている。戦略上の秘密が沢山あるわけですから、外部から見られないっていうのはすごく重要ですよね。
写真:石川佳純選手/提供:シスコシステムズ合同会社
今は石川選手やコーチの方にフィードバックをもらいながら試行錯誤をしている段階ですね。もうちょっとデータが貯まってくれば、ゆくゆくはAIを使って傾向分析などもできるんじゃないかな、と思っています。
ーー張本選手との取り組みについてもお聞かせください。
生田:張本選手は、選手でありながら学生であり、勉強もしなければいけない。ここをどうサポートできるか。また同世代や少し年下のこどもたちに対する、刺激になるような、向上意欲を高める取り組みという観点から、教育活動への貢献に重きを置いて、一緒に活動させていただきました。
写真:課外授業での張本智和選手/提供:シスコシステムズ合同会社
例えば課外授業ということで、小学校に行って、卓球のトラッキングシステムを用いて、ゲーム的にスピードとか、コースとかを見れるようにする。子どもたちに最新のテクノロジーに触れる機械を与える。あとは、シスコとしてはインターネットってそもそもどういう仕組みで繋がっているのかを、子どもたちに伝える活動をしました。張本選手が学校に来てくれるんですからものすごい大好評。大喜びしてもらってます。
チームワールドカップでエンタメ提供へ
ーー11月6日開幕のチームワールドカップ(東京体育館)も迫っています。
生田:ここではシスコのテクノロジーを使って、一般の方がアスリートとふれ合うことができる。そんな新しいファン体験をご提供したいと思っています。
実はエンタメの方では、アイドルグループのライブの時に、ファンの方がデジタルホワイトボードにメッセージを書くという取り組みをやって盛り上がっています。アイドルのライブを卓球に応用します、ということですね。
まさに今ITTF(国際卓球連盟)と具体的にどんなことやりましょうか?という話をしているのですが、日本の選手だけじゃなくて、海外の選手もファンとのコミュニケーションや交流ができるといいなぁ、と思っています。
写真:生田大朗氏(シスコシステムズ合同会社)/撮影:ラリーズ編集部
一つのアイデアとしては、先程ご紹介したデジタルホワイトボードを使って、ファンが選手に応援メッセージを書くみたいなことも、すごくわかりやすいし、簡単にできる。そのホワイトボードと同じものがビデオ会議でも繋げるので、選手の控え室とコンコースとかを繋いで、サプライズで選手がいきなりファンの前にバッと出てきて、コミュニケーションするみたいな。そういうのも楽しいんじゃないかと。
それから試合後の解説をスナップショットを撮って、ここがポイントになったよ、とかここもうちょっとこっちに打ってたらよかったんじゃないかなど新しい演出もできる。当日、東京体育館に来た方に楽しんで頂けるエンタメを今検討してる最中です。
ーーチームワールドカップの現地、東京体育館でどのようなエンタメが披露されるか楽しみです。ありがとうございました。
シスコシステムズ:卓球応援実績一覧
2012年ロンドン五輪、2016年リオ五輪、2020年東京五輪オフィシャルパートナー
2017年12月石川佳純、張本智和とアスリートアンバサダー契約
2019年11月チームワールドカップ東京大会へ協賛
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※取材日:2019年9月27日