全日本王者・宇田幸矢、日本人キラー下した3つの勝因<ハンガリーOP> | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:宇田幸矢(JOCエリートアカデミー/大原学園)/提供:ittfworld

大会報道 全日本王者・宇田幸矢、日本人キラー下した3つの勝因<ハンガリーOP>

2020.02.28

文:ラリーズ編集部

白熱した試合をラリーズ独自の視点で振り返る、【シリーズ・徹底分析】。

今回はハンガリーオープン準決勝で宇田幸矢(世界ランキング50位・JOCエリートアカデミー/大原学園)が、世界ランク23位のリアム・ピッチフォード(イングランド)を下した試合を振りかえる。

全日本卓球選手権で優勝し今勢いに乗る宇田は、準決勝でイングランドのエース・ピッチフォードにゲームカウント4-2で勝利を収めた。自身初となるワールドツアーシングルス決勝戦へと駒を進めた勝利の背景に何があったのか。

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ハンガリーオープン男子シングルス準決勝 宇田幸矢vs リアム・ピッチフォード


写真:リアム・ピッチフォード(イングランド)/提供:ittfworld

詳細スコア

○宇田幸矢 4-2 リアム・ピッチフォード(イングランド)
11-13/11-8/11-5/5-11/11-6/11-7

ピッチフォードの戦術

ピッチフォードは1ゲーム目は優位に試合を進め、4ゲーム目の戦術転換後には競り合いに持ち込んだが惜しくも敗れた。

1.打点速いバックハンドの展開を作る

ピッチフォードは、得意の打点の速いバックハンドを打つために、積極的にレシーブからチキータで有利な展開を作り出した。また、サーブの回転量の変化も多く、宇田の甘くなったストップを台上バックドライブで狙い打った。長身で特にバックハンドの威力に定評のあるピッチフォードは、バックハンドの展開では宇田よりも一枚上手だった。

2.先に相手の体勢を崩すコース取り徹底(4ゲーム目以降)


図:ピッチフォードのコース取り/作成:ラリーズ編集部

4ゲーム目以降から終盤にかけてはコース取りを変え、ラリーを優位に持ち込み、競り合いに持ち込んだ。宇田のフォアサイドに厳しくレシーブし、宇田の体勢が崩れて空いたバックサイドに打ち込むというシンプルとも言える広角なコース取りを見せた。また、3球目もしくは4球目を宇田のミドルに打ち込み、甘くなったボールを狙う場面も見られた。

ピッチフォードのコース取りは、宇田を苦しめたが勢いを完全に止めることはできなかった。

宇田の勝因

1. 中陣でのラリー展開

宇田は1ゲーム目こそ苦しんだが、2ゲーム目以降はピッチフォードの展開に適応した。打点速い切れ味鋭いピッチフォードのバックドライブに対し、中陣から距離を取った大きなラリーにすることで対応した。全日本選手権決勝・張本戦でも見せたフットワークと豪快な両ハンドをこの試合でも遺憾なく発揮した。

2. ピッチフォードのフォアサイドを狙う

宇田は、ピッチフォードのバックハンドの回転量に苦しむ場面が見られた。

そこでレシーブのツッツキをフォアサイドに厳しく送ることや、バック対バックの展開を避けてフォアサイドを狙うなど、戦術の幅広さを見せた。台を広く使う宇田の戦術に対し、ピッチフォードも打点を落とさざるを得なくなり、宇田は得意のカウンタープレーなどを発揮することができた。

3. チキータ封じのサーブの配球


図:宇田幸矢のサーブの配球/作成:ラリーズ編集部

この試合、宇田の技術で最も効果的だったのはサーブだ。

ピッチフォードの威力あるチキータを封じるために、バックサイドへのロングサーブ、フォアサイドのハーフロング、フォア前に短い下回転を上手く散らした。狙いを絞れなくなったピッチフォードは、チキータの威力が落ち、甘くなったレシーブを宇田は両ハンドで狙い打った。自らのサーブからは、早い展開で主導権を握った。

まとめ


写真:宇田幸矢(JOCエリートアカデミー/大原学園)/提供:ittfworld

ピッチフォードは敗れはしたが、打点の速いバックハンドや回転量の多いサーブで実力を発揮した。技巧派タイプを目指す選手にとってはお手本のような選手だ。チームワールドカップで張本智和(木下グループ)を下すなど日本人キラーとしても有名なピッチフォード。今後、熟練していく中でどんな姿を見せるのか楽しみな選手の1人であることは間違いない。

宇田はこの試合で勢いだけではなく、戦術転換でゲームを支配するしたたかな強さも備えることを示した。全日本選手権優勝で得た自信を胸にワールドツアーでも初の決勝進出を遂げ、若き左腕は成長を続けている。日本卓球界の次世代を担う若武者の戦いに今後も注目だ。