文:川嶋弘文(ラリーズ編集部)
新型コロナウィルス感染拡大の影響で世界選手権やTリーグファイナルなどの国内外のビッグゲームが軒並み中止、延期となったのが今年3月。
そこから約8ヶ月の時を経て、遂に選手たちの真剣勝負を、画面越しとはいえ目の当たりに出来る日常が戻ってきた。
そんな「卓球再開」の現場はどうなっているのか?
本特集の最終回としてお送りする。
ITTF主催大会がRESTART
写真:8ヶ月ぶりの国際大会で進化を見せた伊藤美誠(スターツ)/提供:ittfworld
2020年11月8日、国際卓球連盟(ITTF)は「RESTART」と銘打って、久しぶりの国際大会となる女子ワールドカップを開幕した。
日本勢では伊藤美誠が自身初となる銅メダルを獲得すると、続く13日開幕の男子ワールドカップでも張本智和が銅メダルを獲得。
3月のカタールオープン以来、約8ヶ月ぶりとなった国際大会で日本に明るいニュースをもたらした。
また久しぶりに姿を現した世界のトップアスリートたちのパフォーマンスのレベルは高く、プレースタイルの進化が見られる選手も多かった。コロナ禍で急遽活躍の場を奪われた卓球アスリートたちは、先が見えない厳しい環境下でも前を向き、腕を磨き続けていたことが分かる。
国内は実業団を皮切りに、Tリーグと再開が続く
写真:日本リーグ通算100勝の吉田海偉(東京アート)は無観客でも熱かった/撮影:ラリーズ編集部
時を同じくして国内では、11月11日に日本卓球リーグ実業団連盟が後期熊本大会を開幕。参加する全選手・スタッフ429人にPCR検査を実施した上での開催判断だった。約1時間毎の換気などを徹底した大会は、5日間の大会期間中に発熱者を一人も出さずに閉幕した。
>>「やめる勇気、開催する勇気」2020年度後期日本卓球リーグ、戦いを終えて
また、11月17日にはTリーグが開幕。年内は無観客での開催ながら、日本卓球界の第一人者、水谷隼が貫禄のプレーを見せ、「水谷が東京五輪に向け再始動」とテレビニュースを席巻した。
写真:久しぶりのTリーグに照準を合わせてきた水谷隼(木下マイスター東京)/撮影:ラリーズ編集部
Tリーグの星野一朗理事長は開幕後の会見で「まずはほっとしている。試合ができるというのは選手にとって本当に幸せなことだなと思いました」と選手たちにとっての活躍の場が戻ってきた感想を述べた。
今後は学生大会、全日本選手権と再開が続く
今年は各年代の学生卓球アスリートも大会中止に苦しめられたが、ようやく再開の目処が立ってきた。11月28日、29日には大学生アスリートの頂点を決める全日本学生選抜強化大会(於:横浜武道館)が控えている。
また、2021年1月の全日本選手権はダブルス種目の中止に加え、無観客での開催が決まっているが、高2以下に出場権のあるジュニアの部は開催予定のため、各都道府県では方針にばらつきはあるものの予選会が開催されている。
写真:17歳になった張本智和(木下グループ)は1月の全日本で王座奪還なるか/撮影:ラリーズ編集部
上述の通り、新型コロナウィルスの感染拡大を受け、特に屋内競技である卓球は活動において一定の制限を強いられるようになった。
コロナ禍以前と全く同じ環境に戻ることは無いのかもしれない。一方で一定の制限を設け、徹底した対策をすることで、安全性を担保しながら、卓球が再開できることも分かってきた。
卓球を安全に続けるうえで、どこまでのコロナ対策が必要なのか?
この問いには唯一の正解は存在しない。それであれば、なんとなく怖いからという曖昧な理由でプレーや大会を中断、中止するのではなく「どのような対策をしたら、安心して卓球が出来るか」という視点をチームや各個人が持ち、納得をしてプレーを再開・継続していくことが大切ではなかろうか。
一般に気温が低く空気が乾燥した冬の季節になると、新型コロナに限らず、ウィルスにかかるリスクは上がると言われている。現に11月からは全国的に新型コロナウィルスの感染者数が増加傾向にある。それでも「安心して卓球が出来る」ように対策を立て、卓球仲間の健康と生命を守りながら、ラリーを続ければ良いのではないか。
卓球プレーヤーやファンにとって卓球は、不要不急の外出ではない。必要不可欠なライフワークなのだから。
「特集:卓球の再開を考える」(了)