卓球技術・コツ サーブのトスが16cm以上になったのはいつから?
2017.08.03
文:座間辰弘(ラリーズ編集部)
文:座間辰弘(ラリーズ編集部)
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卓球のサーブはトスから始まる。
卓球のルールブックを見ると、『サーブのトスは16cm以上にしなければならない』と書いてある。
卓球のネットの高さが15.25cmであるためネットより高くトスを上げれば16cmをクリアできる。
このルールを守りさえすれば、天井ギリギリまで頭上高くトスを上げてサーブを出してもよいし、逆に16cmギリギリの低いトスから早いタイミングでサーブを出してもよい。
このトスの高さは、相手の読みを外す意図もあり、卓球の戦術を組み立てる1つの大事な要素になっている。
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いつからトスは16cm以上になったのか?
「卓球-知識の泉―百二十年の歩みをエピソードでつづる世界卓球文化史-」(藤井基男著 卓球王国BOOKS)によれば、1987年にトスを16cm以上にするようになったと書いてある。
このサーブのルール改正は、世界卓球がインドのニューデリーで行われた開催された1987年に施行された。
卓球愛好家の中でも特に人気のある「Tabletennis Beyond Imagination」内の映像を見ていくと、確かにルール改正前の1985年世界卓球スウェーデン・イエテボリ大会の団体戦では、本当にトスが16cm上がっているのか疑わしいサーブも多く映っていた。
※「Tabletennis Beyond Imagination」とは、約30年前からの世界卓球やオリンピックの名場面を集めた映像集のこと。
その後の1987年インド・ニューデリー大会、1989年ドイツ・ドルトムント大会を見ると、確実に16cmトスを上げてサーブをするようになっている。この2年間の間に『トスは16cm上げる』というルールが国際的に浸透していったと言えるだろう。
日本国内での浸透時期は?
一方、日本国内ではいつからトスが16cm以上上がるようになっていったのだろうか?
このルール改正があった1980年代で最も強かった選手と言えば、斎藤清選手だ。
全日本選手権で水谷隼選手に次ぐ歴代2位の8度優勝や通算勝利数最多101勝の輝かしい記録を持っている。
そんな斎藤清選手の1984年の全日本選手権決勝の動画を見てみよう。当時日本代表として活躍していた糠塚重造選手との貴重な決勝戦の映像である。
見てみると、トスが低い時は16cmも上がっていないことが分かる。
かつての選手はトスを上げないことでインパクトの瞬間を分かり辛くする、という工夫が許されていた。
では、1987年にトスのルールが改正されてからはどうだったのだろう?トスを高くするように修正してきたのだろうか?
1992年の全日本選手権を見てみる。当時若手の筆頭株で後に全日本チャンピオンとなる岩崎清信選手との試合があがっている。
以前よりトスが高くなっているが、時折16cmまで上がっているかかなり怪しい時がある。
2008年に伝説の全日本選手権通算100勝を挙げた試合ではどうだろう。
ここでも16cm上がっているかかなり怪しい(笑)
ここで注目したいのは、相手選手が16cmよりも遥かに高いトスをあげて、ルールに則ったサーブを出しているが、その高さとタイミングが一定である一方で、斎藤清選手はトスの高さが16cmギリギリの時と、高めにトスを上げる時があり、サーブを出すタイミングが直前まで分からない点である。
この老獪な戦術・技術があれば20歳以上も年下の選手を倒せてしまうところに卓球の面白さがある。
>>卓球の見方は5分で変わる「3つのレシーブ」がメダルの色を決する
トスを16cm以上上げるようになったのはなぜ?
そもそもなぜ、トスを16cm以上上げるというルール改正が行われたのだろうか?
ルール改正前に使われていたトスをほとんど上げないサーブはインパクトの瞬間が見分けにくく、どうレシーブするか判断する時間が少なくなる。
更に通称「ぶっつけサーブ」と呼ばれるトスを全く上げないサーブは、ボールに強烈なスピンがかかるため相手がほとんどレシーブできない。
そのため、サーブだけでポイントが決まってしまう試合が横行し、「このままでは卓球がつまらないスポーツになり廃れてしまう」という危機感から、トスを高く上げようというルールになったのだ。
このようにトスを16cm以上上げるというルール改正は、トスが低過ぎることでサーブを出す側が有利になり過ぎるのを是正し、卓球をフェアでラリーの続く面白いスポーツにするために取り決められたのである。
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サーブのトス16cmに卓球の歴史が詰まっている
今でも地域のオープン戦に出場すると、トスを全く上げずにサーブを出している50代以上の愛好家も少なからずいる。
恐らくルール改正のあった1987年以前に卓球部に入っていた人だと予想されるが、逆算すると30年以上も趣味で卓球を続けていることになる。
サーブのトス16cmに卓球の歴史が詰まっていると言っても過言ではない。