戦型:右ペン表裏
卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」
このシリーズでは、初心者向けに卓球の基本的な技術についての説明やそのやり方、対処法などについてお話していく。実際のプレイヤーはもちろん、テレビなどで観戦される方にとっても、頻繁に出てくる用語が登場するので、知っているとより卓球の面白さが分かるだろう。ぜひ参考にしていただきたい。
今回は、引き続きロビング打ちの極意についての後編をお届けする。前編をまだお読みでない方は、そちらをぜひ先にチェックして頂きたいと思う。
大切な打球点の考え方
ロビング打ちではさらに非常に重要な要素がある。それは打球点だ。
ロビングは通常とは全く違う、かなり高い弧線を描いて飛んでくるので、「どのタイミングで打てばよいか分からない」という方も多いかもしれない。私が考える最もいい打球点は、頂点である。なぜならば、頂点つまり一番バウンドが高い位置で打球することで、こちらのスマッシュもより高い位置まで届くことになり、相手が取りづらいからだ。
もちろん上昇期、つまりライジングで打球出来れば、相手の意表を突き、時間を与えずに返球出来るので効果的であることは間違いない。ただ、それをやるのは非常に難しく、こちらのリスクが大きい。
また、ロビングのボールの頂点となると、あなたの身長を優に超えていることも多いだろう。そのため、普段通りの「後ろから前」へのスイングで頂点を捉えるのは難しいことから、全く違うスイングをしなければならない。
テニスのサーブやバドミントンのスマッシュのような、肩を回して「上から下へ」振り降ろすようなスイングだ。しっかりと打てれば、それなりの威力のボールが行くはずなので、なるべく力まず、リラックスして振り降ろすようにしてみよう。
またその際に右足を浮かせ、左足一本で伸び切るような姿勢をすることで、右肩の位置が上がりより高い地点から打ち下ろすことが出来るので挑戦してみるといい。このような動きは普段のプレーですることがないので、怪我をしないように注意しよう。
ただ、どうしても下降期で打球せざるを得ないときもある。強烈な前進回転がかかっていたり、どうしても身長が足りないときなどはやむを得ない。そのときはしっかりと自分が打てる、目線の高さくらいまでボールが落ちてくるのを待って、「後ろから前」へのスイングでスマッシュをしよう。
もちろんこのときも「打ち抜く」ということは絶対に考えてはいけない。なぜなら下降時での打球ということは、ネットまでの距離があるぶんこちらのミスをする確率が高まる上に、相手に届くまでも時間がある為、容易に対応されてしまうからだ。なので、そういう場面でも我慢比べと思って、ミスをせずしっかりと確実にバックへ返球することだけを考えよう。
ストップの狙い所
ストップをする際も、あまり考えず不用意に行うことにはリスクが伴う。せっかく相手が下がっていて、自分は台の近くにいるという絶好のチャンスなのだ。下手なストップをすることで相手を前陣まで引き戻して、反撃のチャンスを与えてしまうというのは、非常にもったいない。それにストップを対応されたときは、これまでとはまた違った球質のボールが来るので、またあなたも大変になるだろう。
ストップをしていい場面は、「相手のロビングが浅いとき」これだけだ。具体的には、自陣の卓球台の半分よりもネット側にボールが落ちたときだ。ここにバウンドしたボールに対しては、ストップをして、相手コードで2バウンドさせることも容易いだろう。
深いロビングに対してストップをしても、2バウンドさせるのは非常に難しく、逆に相手にチャンスを与えかねない。
なのでまず何よりも、相手ロビングの落下点をなるべく早く把握することが大事になる。そして浅いと判断出来たなら、ストップに切り替えて、バウンド直後をかる~く触れるのだ。高くなっても構わないので、とにかく2バウンドするようにコントロールする。
この際もなるべく力を抜いてリラックスした状態でやることを心がけよう。うまく2バウンドさせる短さでストップすることに成功すれば、まず間違いなく得点となるだろう。
まとめ
2回に渡って、ロビングに対する考え方や対処法について考えてみた。まとめると、
1.絶対にミスをしない
2.頂点を捉えてバック側へスマッシュ
3.浅いときはストップで2バウンド
という3つが大事ということだ。
ここでも繰り返し私がお伝えしたいのが、「絶対にミスをしない」ということだ。本来、あなたの優位な展開で攻めているところを、相手がなんとかしのいできた、それをミスしてしまったら、あなたのポイントだったはずが相手のポイントになる。
このたった1ポイントで、「8-8」になっていた場面が「7-9」になると、非常にショックが大きい。さらにロビングは派手なプレーだ。そういったプレーで得点を失うと、相手を勢いづけてしまい、試合の流れががらりと変わることも非常に多い。
もっと言えば、何本かミスをしてしまうと、「ああ、この選手はロビング打ちが苦手なのだな。困っても最後はロビングを上げておけばなんとかなるだろう」という考えを相手に与えてしまう。それでもし、競り合いの緊張した場面でロビングを連続で上げられたりすると、精神的にもつらく、ゲーム序盤よりもミスをすることが増えてしまうだろう。
なので、「どれだけロビングを上げられようがミスしませんよ」という姿勢を相手に植え付けておくことは、非常に大切なのだ。
そのような考え方から、私はロビングに対して、「頑張って打ち抜く」ということよりも、「ミスをせず確実に返球する」ということを重視しているのだ。
ただ、可能であれば日々の練習でロビング打ちを取り入れることは非常にオススメだ。打つ側にとってはもちろん、ロビングを上げる側も、しのぎの練習やボールタッチを鍛える為にも非常に有効であると言えるだろう。
今回のお話がロビング打ちに悩めるあなたの解決策のひとつとなれば幸いである。