【はじめて卓球部顧問になったあなたに】初心者セットを買っていいですか? | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:質問「初心者セットを買っていいですか?」/作成:ラリーズ編集部

卓球プレーヤー向け 【はじめて卓球部顧問になったあなたに】初心者セットを買っていいですか?

2022.04.13

いよいよ新入部員が入ってくる春です。

石川県金沢市で、卓球専門店の腕利きスタッフとして働く西東輝(さいとうあきら)さんの元には、日々、北信越一帯の卓球部顧問の先生からの相談が舞い込んできます。
西東さん自身、大学時代に全日本学生選手権ダブルス3位に入るほどのプレーヤーでしたが、それ以上に、実に幅広い層への技術指導が深いことが特徴の指導者です。

今日もお願いします。(編集:槌谷昭人)


写真:金沢市の卓球専門店で接客する西東輝さん/提供:本人

質問


質問「初心者セットを買っていいですか」/作成:ラリーズ編集部

中学部活動生が最初に購入する用具として、初心者セットを買っていいですか。

回答


写真:西東さんの回答「おすすめしません」/作成:ラリーズ編集部

私の経験上、おすすめしません。
ここでは仮に、“初心者セット”の定義として、ラケット、ラバー2枚合わせて、8,000〜10,000円程度のものとします。

私が中学校卓球部の新入生におすすめしているのは、同じセットで12,000〜20,000円程度の、言わば“中級者セット”です。

上級者セット(22,000円〜30,000円程度)、トップレベルセット(それ以上)も私としてはラインナップがありますが、今回は省きます。

中級者セットをすすめるのには理由があります。


写真:西東さんの務める清水スポーツの売り場/提供:本人

大切なのはコストパフォーマンスとトータルコスト

部活動初心者の用具にとって大切なことは、コストパフォーマンスとトータルコストです。

初心者セットのラインナップを否定しているわけではありません。
ただ、強調しておきたいのは、1,2年後にレベルアップしたときには初心者セットのラケットでは物足りなくなり、結果もう1本買うことになると、トータルコストが高くなってしまうということです。

また、初心者セットのラケットも折れるわけではないので、本人のレベルが上がってもそのまま使ってしまうことが、技術力アップを妨げてしまう面もあります。

安いラケットと高いラケットの違いとは

そもそも、安いラケットと高いラケットの違いは、大きく分けて3つです。
弾み、打球感、表面のコーティングです。

「弾み」はボールの威力に直結します。
「打球感」は、スイートスポットと呼ばれるエリアが広く、自分のコントロール力向上に繋がります。
「表面のコーティング」は、ラバーを貼り替えるたびに、ラケット表面のコーティングは劣化していきますが、高いラケットは何度も貼り直しが可能であるのに対し、安いラケットはラバーを剝がすときに木目がはがれやすく、ラケットの寿命が短くなりがちです。

また、ラケットは使えても、ラバーは摩耗するので貼り替える必要があります。
ラバーを替える際に、ラケットの価格を1枚のラバーの価格が超えてしまうケースが見られますが、“軽自動車に高級車のカーナビをつけるようなものだよ”と、そのアンバランスさを伝えています。

最も売れた価格帯は

専門ショップに入社してまもなく、私はラバーとラケットの相性を調べるため、年間100本以上の組み合わせで試打を行い、10,000円〜18,000円の初心者セットのラインナップを作ってお店で販売しました。

結果、15,000円のセットが最も売れました。
初年度は100セットでメーカー在庫切れ、翌年は200セット、今ではメーカーから“何本でも準備します”と言って頂きます。

8,000円セットを買った後、友だちが使用している15,000円のセットを使ってみて、結果的にすぐ購入し直すケースもあったので、今では中級者セットをおすすめするようにしています。


写真:西東さんの務める清水スポーツの売り場/提供:本人

高ければ高いほど良いのか

では、高ければ高いほど良いのか、というと、NOです。

自分のレベルに不釣り合いな用具を使うと「オーバースペック」といって、使いこなせない状況が生まれます。
特に、弾みの要素で悪影響が出ます。
皆さんはブレーキが壊れている自転車に乗るでしょうか。
「止めることができる」という安心感が「攻撃する際の心の安定」に繋がります。

子どもたち同士を見ていても、“あまりに用具をコロコロ変える”ことで顰蹙を買っているケースも少なくありません。

中学校部活動では1枚上限6,000円まで

私も、ショップ店員の立場としては、高いラバーの購入や、たくさん用具を変えてくださるお客様はありがたいのですが、一方で指導者の立場もあります。

中学校部活動レベルでは、私は販売するラバーの価格の上限を1枚6000円までと定めています。それ以上のものを求められた場合は「一度親御さんと話さないと売れない」と回答します。

多くの場合、親御さんが卓球未経験で「これでなきゃならない」「これでないと勝てない」と子どもに説得されて、よくわからず購入されているからです。
「一般の人がF1の車は運転できないですよね?」というような表現で、親御さんにご説明します。

それでも押し通した子も、高校生になりバイトやお小遣いという自分の財布から出すようになると、現実的になって2,000円~1,000円くらい価格の下がったラバーを購入することも多いのです。

少なくとも、中学校部活動クラスでは、6,000円のラバーで十分だと思います。

蛇足ですが、私は6,000円のラバーを7年間使用し、大学日本3位になりました。
その頃よりラバーの性能はさらに進化しています。
大丈夫です。

連載記事一覧