石川県金沢市の卓球専門店「清水スポーツ」代表取締役社長でもあり、石川県卓球連盟の最年少理事も務める。
遊学館高校、北陸大学卓球部出身で、元日本代表選手から卓球始めたばかりの中学生まで、幅広い層への指導力に定評のある金沢市在住プロコーチ。
現役時代には、2009年春の高校選抜で当時最強の青森山田高から2勝を挙げて注目を浴びる。北陸大学時代には全日本学生選手権ダブルス3位の実績を持つ、北信越が誇る卓球人の一人。
いよいよ新入部員が入ってくる春です。
石川県金沢市で、卓球専門店の腕利きスタッフとして働く西東輝(さいとうあきら)さんの元には、日々、北信越一帯の卓球部顧問の先生からの相談が舞い込んできます。
西東さん自身、大学時代に全日本学生選手権ダブルス3位に入るほどのプレーヤーでしたが、それ以上に、実に幅広い層への技術指導が深いことが特徴の指導者です。
今日もお願いします。(編集:槌谷昭人)
写真:金沢市の卓球専門店で接客する西東輝さん/提供:本人
質問
写真:質問「戦型はどのように決めたら良いですか?」/作成:ラリーズ編集部
戦型はどのように決めたら良いですか。
回答
写真:西東さんの回答「生徒自身の意思を尊重するべきです」/作成:ラリーズ編集部
最終的には、生徒自身の意思を尊重するべきだと考えています。
中学校の部活動では、戦型(プレースタイル)を決める際に、大きく2つのパターンに分かれます。
顧問の先生がプレースタイルを決める場合
顧問の先生が卓球経験者で、明確なチームプランがある場合は、団体戦を戦う上で粒高は絶対に一人は欲しい、カットマンも一人、というように、皆が同じ戦型にならないよう、戦略的に戦型を決めるケースもあります。
チーム育成プランが立てやすいので、勝たせやすいというメリットがあります。
一方で、公立の顧問の先生は異動があります。
例えば、1年生で「粒高」になり、先生が異動された後に「もっと違う戦型がよかった、将来性のない戦型は嫌だ」と生徒が困っているという相談が、年に何度もあります。
粒高がダメなのではありません。
始めたばかりの選手に戦型の理解を落とし込むのは相当難しいことですが、意図は伝えるべきです。
粒高は劇薬であり、活躍もできるし極め方次第では強くもなれるけれど、現在、世界のトップ選手に粒高が圧倒的に少ないことは事実なので、生徒が後になって嫌気がさすことののないように。
様々な戦型のプレー動画をyoutubeなどから引っ張って、生徒に見せてから戦型を一緒に決める顧問の先生がいました。生徒にもイメージが湧いていて、良い取り組みだと思いました。
写真:粒高ラバー/提供:西東輝
生徒に任せる場合
ただ、顧問の先生が未経験者の場合、そこまで作戦を練ることは難しいので、まずはシェーク裏裏をお勧めしています。一年ほど経つとだいたい自分のしたいプレーが見えてくるので、そこで改めて決めても良いと思います。
どんなプレースタイルがあるのかは、以下の動画をご参照ください。
卓球の主な戦型一覧
シェーク裏/裏
シェーク裏/表
カットマン
シェーク裏/粒
中国式ペン裏/裏
ペン(片面のみ)
日本式ペン表(片面のみ)
「これで表ソフト使って良いですね!」
戦型をめぐっては、印象に残っている出来事があります。
中学校から卓球を始めた生徒が、小学校から卓球をしていたその世代の県チャンピオンに、わずか2年で勝利するという偉業を成し遂げたことがありました。
その子はシェーク裏裏で、中陣や後陣に下がるように特徴作りをしていた選手でした。
しかし、あるとき急に表ソフトにしたいと言い出したのです。
私は「セオリー上、それは絶対ない」と反対しました。表ソフトで下がるなんてもってのほかという私の認識だったからです。
それでも彼女の意思は固く、どうしても表ソフトにしたいと言うので「次の大会でベスト8に入ったら表ソフトで良いよ」と条件を出しました。
写真:表ソフトラバー/提供:西東輝
その大会で彼女は、県チャンピオンで圧倒的な優勝候補の選手にベスト8決定戦で勝利したのです。
大変驚きましたが、それ以上に驚いたのは、勝利の後の彼女の一言です。
「コーチ!これで表ソフト使って良いですね!」
県チャンピオンに勝ったという喜びよりも、表ソフトを使える喜びが勝っていたのです。
ちなみにその次の準々決勝では、その県チャンピオンよりも遙かに弱い選手に負けました。
子どもにとって何より大切なのは「目的」なのだということ、そして満足感というのは、ときに弊害もあることを学びました。
戦型は、最終的に生徒自身の意思を尊重するべきというのは、そのときの経験から私が実感したことです。