ドイツで根付く卓球文化 ブンデスリーガ観戦記


取材・文:赤羽ひな(ラリーズ編集部 欧州特派員)

数多くの日本人卓球選手が武者修業へと向かうドイツのプロリーグ、「ブンデスリーガ」。

今年も男子1部には森薗政崇、村松雄斗、及川瑞基の3人が、男子2部にも5人の日本人がエントリーしている。ニュースでその活躍を知るファンは多いが、実際に足を運んだことのある卓球ファンは少ないだろう。

今回は実際にドイツでどんな試合が行われているのか。「生のブンデスリーガ」を取材した。

山奥に隠れた会場

今回足を運んだのは、10月15日に行われたブンデスリーガ1部第4節、グレンツァオ対グリューンヴェッターズバッハの試合だ。
現在、グリューンヴェッターズバッハには森薗政崇が所属している。

訪れた会場はグレンツァオの試合拠点である「ZUGBRÜCKEN-HALLE」。

グレンツァオは、松平賢二や昨シーズンまでは吉田雅己が活躍していたブンデスリーガ1部の名門リーグだ。
世界的の卓球ファンには有名なブンデスリーガだが、その試合は意外にも山奥で行われていた。今回の会場はフランクフルトから車で45分の距離だ。旅行者には公共交通機関だけで訪れるのは難しいかもしれない。フランクフルトから電車とバスを乗り継いでも、最寄りのバス停から山道を2km歩かなくてはならない。

目当てとなるアリーナは目立つ標識も歩道のない細い山道の途中に、自然の景観を邪魔しないような落ち着いた色合いでひっそりと佇む。ここが本当にプロリーグの会場なのかと思わず地図を見返してしまう。まるで隠れ家のような外観だ。

地域密着型のチーム

TTBLの発表によると、当日の観客数は115人とちらほら空席が目立つ。少人数の会場のため、選手のすぐ近くで観戦ができる。常連の観客に話を聞くと「会場の規模は場所によって異なるが、どの試合も間近で観戦できる」とのこと。

観客のほとんどはドイツ人が占める。車で数時間かけて来たという人々を数多く見かけた。ファンの多くが「最も近くにあるチームだから」と理由で応援していることが多いという。

地元のファンが多いのには理由がある。現在、多くのリーグが一般人向けの卓球教室を開催しているのだ。当日見に来ていた観客の中にも実際に教室で練習している人が何人もおり、「2カ月前にこの場所で自分も練習したんだ」と嬉しそうに語る。グレンツァオの卓球教室の生徒が購入できるというTシャツを着ている人も何組かいた。プロの選手が熱戦を繰り広げる場で自分も卓球したという誇りが、リーグに対する思い入れを着実に育んでいるようだ。

そんな彼らが試合中に発する声援は温かく、熱い。ホームチームが得点を決める度に拍手が鳴り、試合終盤には手拍子で盛り上がり、劣勢のタイミングではチームを応援する声が聴こえる。こぢんまりとしたスタジアムの中で聞こえる試合中の歓声の一つ一つが、地元で支える人々の熱気を纏っていた。

試合後には、隣に座っていた観客から「あの選手はこういう素晴らしい人だから話しておいで」と言われた。選手と観客との距離の近さがブンデスリーガが盛んな要因の一つであることは間違いない。

試合の盛り上がりに欠かせないのが試合会場での飲食だ。ロビーには飲食店があり、瓶ビールを片手にポテトを食べる人の姿も。ドイツ名物のブルスト(ソーセージ)も購入可能だ。観客の中には家族連れも多く、ある子どもたちは試合を観ながら炭酸ジュースとポテトを食べて、次の試合ではハンバーガーを買って食べて、とスタジアムでの体験自体を満喫する。

アリーナの上の階は卓球メーカーのバタフライのショップになっており、チームのユニフォームなどのグッズが購入となっている。観客席を見渡すとユニフォームを着ている人はほとんどおらず、サッカーや野球のように応援チームのユニフォームを積極的に着るという習慣はないようだ。

チケットの安さも魅力のひとつ

今回のチケットは約1200円(9ユーロ)。気軽に買える価格設定で、収入源はチケット収入でなく広告収入の割合が高いという。

ホームチームのWebサイトからオンラインチケットを購入可能で、購入時に郵送(ドイツ国内限定)かプリントアウトかを選択できる。基本的にドイツ語のみなので、自動翻訳に頼るほかはない。
予約時に自ら席を選ぶ形式だが、直前でも好きな席が選べる場合が多い。

周辺施設

アリーナの目の前はホテルになっており、ホテルの名前もチーム名と同一である。
グレンツァオ創設直後はリーグとホテルの経営が一体となっていたが、昨年からはホテルはスポンサーとしてのみ協力している。

アリーナから40歩ほどの距離で、地域の中では高級ホテルとして位置付けられている。
ジムをはじめ、プールやサウナ、卓球台などスポーツ施設が充実しているのが特徴だ。朝食バイキングは種類豊富なソーセージが楽しめるほか、蜂蜜を巣のまま食べられる。

奥まった場所にあるアリーナだからこそ宿泊施設とも相性が良く、選手の宿泊施設としての活用だけでなく、卓球観戦を小旅行として楽しみたいという需要にも応えられるのだろう。

まとめ

ブンデスリーガは、ドイツの山奥に佇むアリーナでひっそりと行われていた。
いざ会場に入ると、地元の人々が「自分自身もチームの一員だ」という感覚で、選手の間近で声援を送っていた。ドイツの卓球ファンは試合がない時期にも卓球教室やイベントを通してリーグに親しんでおり、ブンデスリーガは地元の人から愛されて成り立つプロリーグだった。

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