MITメディアラボ石井裕教授が語る「卓球と未来の形」


文:座間辰弘(ラリーズ編集部)

世界一有名な卓球好き研究者

「僕はいつでも前陣速攻・真剣勝負ですよ。」

MITメディアラボの石井裕(いしいひろし)教授は2016年電通報のインタビューをこう締めくくった。

そう、この方、前陣速攻をモットーとする無類の卓球好き研究者なのである。

MIT(マサチューセッツ工科大学、米ボストン)は、ご存知の通り、世界でトップクラスの研究者・学生が集まる有名大学だ。

そのMITで日本人で初めて「終身在職権」を得たのが石井裕教授である。

最近トレンドのウェアラブル(身に付けるコンピュータ)や、IoT(モノのインターネット化)の源流は、MITから始まったとも言われている。

石井教授はMITのメディアラボ(情報技術研究所)で、「tangible(タンジブル)」研究の第一人者をして名を馳せており、簡単に言うと、”visual(目で見えるだけのもの)”を”tangible(直接触れて感じられる実態のあるもの)”にいかに変えられるかを研究し続けている。

まさにテクノロジー研究の世界最先端を走る石井教授に関する記事、文献を読んでいて、とても興味深いのは、「出杭力」と「卓球」の話である。

「出杭力」(でるくいりょく)とは?

「出杭力」は、「出る杭は打たれるが出過ぎた杭は打たれない」という言葉から派生した誰にも負けない能力のこと。

石井教授自身もインタビューの中で「出杭力」についてこのように説明している。

まず「出杭力」というのは、出る杭は打たれるということ。日本に限ったことじゃない。出る杭が打たれるのは世界共通です。優秀で飛び抜けていればいるほど、前後左右、あらゆる角度から打たれる、打たれる。だから、生き延びるためには、誰にも打たれないところまで出過ぎちゃえばいい。強い信念を持って、誰も打つことができないくらい出てしまう。その力をつけることこそが重要なんです。(日経ビジネスオンラインより)

「出過ぎちゃえばいい」

この一言に世界を舞台に研究者として戦い続ける石井教授の逞しい生き方が垣間見える。

MIT発の最先端卓球台「Pingpong++」とは?

PHOTO: PBS NEWSHOUR

石井裕教授を一躍有名にした研究プロジェクトがある。

それが1999年に発表したPingPongPlusとその後続プロジェクトとして2010年に発表したPingPong++である。

卓球台にセンサーやマイク、スピーカーを設置し、先端テクノロジーを駆使することで、卓球台の表面に魚や波紋を映し出す。今流行りのプロジェクションマッピングの先駆けとも言える。

この卓球台を作ろうとしたところにはぼくなりのストーリーがあるんです。

MITに来たのが、16年前。1995年です。けっこう落ち込みましてね。なぜかというと、学生のほうが、頭がいい。

(中略)

ですからぼくはアトランタオリンピック仕様の卓球台を買ってですね、全員と真剣勝負して、打ちのめして、畏敬の念と尊敬を勝ち得て、強いチームを作ることに成功しました。

それはとてもよかったのですが、問題は研究費を使ってしまったことです。

(中略)

卓球台に研究費を使ったので、研究をでっち上げて、「なんらかのセンサーをつけてやろう」ということになりました。

その結果生まれたこのピンポンプラスは、パリのポンピドー・センターに呼んでもらったりロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムに呼んでもらいまして、コンテンポラリーアートとして、高い評価をいただきました。ほとんど怪我の功名みたいなもんですね。(ほぼ日刊イトイ新聞より)

卓球でプロジェクトを有利に進める

自分の得意な卓球で周囲からの尊敬を勝ち得て、組織の中で優位なポジションを築く。

この石井教授のやり方は全ての卓球プレーヤーが自分の所属する組織で活かせるメソッドでは無いだろうか。

今後も世界最高の卓球教授の活躍から目が離せない。

石井裕教授に関する参考リンク

Radical Atoms: Beyond Tangible Bits, Toward Transformable Materials(interactions:2012)

MITメディアラボ石井裕副所長インタビュー(クーリエジャポンの現場から)

独創、協創、競創が大事、屈辱感がエネルギーになる(東洋経済オンライン)

「出杭力」「道程力」「造山力」MITメディアラボ副所長・石井裕さん(4)(川島蓉子の「ダサい社長」が日本をつぶす!:日経ビジネス)

「未来へと記憶を伝えるために大切なのはビジョンを持つこと」——MIT メディアラボ副所長 石井裕 氏が語る記憶の未来(Evernote)

Ishi Hiroshi Profile(MIT Media Lab Tangible Media Group)

前陣速攻愛板会議:石井裕x古川享(UstreamTV) 

石井裕先生の研究室(ほぼ日刊イトイ新聞)

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