卓球で健康寿命は伸ばせるか!?卓球療法の取り組みとは?


文:座間辰弘(ラリーズ編集部)

要するに、
・健康寿命を伸ばす為に卓球が一役買っているという。
・主に医療、介護施設で行われる「卓球療法」は、高齢者や心身に障害を持つ方を対象とする。
・「卓球療法」は通常のリハビリよりも効果が出た事例があり、全国で有資格者も184名(2017年8月現在)いる。

健康寿命を伸ばすのに卓球?

いかに健康的な老後を過ごすかに注目が集まっている。キーワードは「健康寿命」だ。

健康寿命とは、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間を意味する。

いわゆる「死期を迎える」という意味での「平均寿命」と「健康寿命」の間には、男女ともに10年前後の開きがある。つまり、多くの人は「何らかの病気を抱えたり、身体が思うように動けない状態が約10年続く」ということなのだ。

いかに健康寿命を伸ばすかは高齢者全体の問題と言えるが、実はその健康寿命の延長にスポーツ、中でも卓球が一役買っているという。確かに他のスポーツに比べ、卓球は高齢者の競技人口も多い。

一体卓球がどう肉体・精神に影響を与えるのか?

今回は、高齢者や障害者など何らかの原因で心身に疾患を持つ方が、運動機能などを回復させ、健康寿命を伸ばすために行う「卓球療法」について、日本卓球療法協会理事長の長渕晃二氏に話を伺った。

卓球療法はいつ生まれたのか?

卓球療法を行っている介護施設「ピンポンデイハッピー渋谷」(神奈川県大和市)。奥の青いシャツが長渕氏

Q:卓球療法の起源は?

A:1990年代に大分のアルメイダ病院というところで始まりました。その後、2000年代に岐阜の特定医療法人フェニックスで広まり、介護施設では最も盛んに取り入れています。私自身もちょうどその頃に卓球療法について知り、だんだんと関わるようになりました。岐阜のフェニックスは、卓球療法の聖地と言っても良いと思います。興味関心のある方は是非現地でご覧いただきたく思います。


Q:卓球療法は具体的にどんなことをやるのでしょうか?

A:卓球療法は、卓球の用具を活用して心身機能を改善しようという取り組みです。

いわゆる普通の卓球でなくてもいい。例えば、ピンポン球でバッティングをやってもいいわけです。また、球出し用のマシンを使ったり、卓球のネットを持ち上げてネットの下にボールを転がす卓球バレーを行うこともあります。心身状況に合わせて、様々な取り組みを行います。

ただし、「療法」という名前がつくように、卓球療法による評価・支援計画・記録が必要になってきます。

こちらの動画は卓球バレーの様子。


Q:卓球と他の競技の違いは?

A:例えば、高齢者の競技として以前はゲートボールが盛んでした。しかし、ゲートボールは必ずチーム編成が必要なこと、ルール上相手のボールを邪魔する競技なので人間関係の問題が出てくることも。卓球であればスペースもいらないし、マシンを使えば1人でも出来ることもあり、手軽に導入しやすいというメリットがあります。。

Q:卓球療法で特に効果が出た事例は?

A:脳梗塞の後遺症でマヒがある方が卓球療法を通して、通常のリハビリをよりも運動機能が回復した事例があります。これは、NHKでも特集されました。

Q卓球療法を行ううえで苦労しているポイントは?
A:
各自の心身状況を把握し、それぞれに応じたやり方を考える必要がある点です。例えば、卓球の専門家でも、高齢者の身体の特性を知らないと、怪我をさせてしまう恐れもあります。ラリーでは、スタッフと相手がお互い負担のかからないショート打法で、相手が動かなくても返球できるようなコースに送球する必要があるケースがあります。

Q「卓球療法士」という資格とは?
A:
卓球療法の知識と技能を習得していることを証明する資格です。現在実施している講習は初級講習のみ。講習は、卓球台が置いてある会場をお借りして、8名から20名で開催しています。この講習に1日参加すれば、卓球療法士の認定証が授与されます。今後は中級等、より実務的な資格も設けようと考えています。

Q有資格者の数は?
A:
2017年8月現在で184名います。

Q今後の取り組みについては?

A:将来的には世界にこの卓球療法を広めていきたいと考えています。レクリエーションの延長で卓球を取り入れようという医療機関や介護施設が自然に増えてきました。ただ、卓球療法という形で、しっかり取り組んでいる施設はまだ多くはないので、普及の活動をしていく必要があります。

まとめ

卓球療法は、介護の現場で長く活躍されている長渕氏が「卓球を何か活かせないか?」という発想で活動をスタートし、ここ数年で徐々に知名度が上がってきた取り組みだ。

活動は卓球療法を導入済みの医療介護施設のある大分・岐阜・神奈川が中心だが、全国各地にも会員がおり、初級講習、出前学会に加え、11月12日〜13日には福岡県朝倉市の原鶴温泉で九州北部豪雨災害復興支援のイベントも開催していくという。今後の日本卓球療法協会の取り組みに注目したい。

用語解説:「卓球療法」と「健康卓球」

最近では卓球療法に似た健康卓球という概念も出てきているのだが、ここで注意しておきたいのは、卓球療法と健康卓球では意味が異なるという点だ。

いずれも健康寿命を伸ばすために卓球を活用するという目的は同じなのだが、「卓球療法」は、高齢者や何らかの原因で心身に障害を持つ方が運動機能回復や社会参加のために行うものとなっており、「健康卓球」との違いを分かりやすく言うと、「(傷病の)回復のための卓球療法、予防のための健康卓球」といった対比が出来る。

整理すると以下のようになる。

卓球療法は、
・リハビリのために卓球の用具を活用
・医療機関・福祉施設で実施
・医療・福祉職等が支援(計画・記録・評価がある)
・財源は診療報酬・介護報酬・その他
・対象は要介護・要支援・二次予防・精神疾患など
・卓球バレーやマシン練習を意図的に活用
・回復後は一般の卓球へ

健康卓球は、
・健康の維持・増進のため
・公共施設や卓球場などで実施
・中高年齢者が多く参加
・普通の卓球を行う

このように健康・ヘルスケアという領域でも卓球は活用されはじめており、私たちの生活の一部となりつつあるのだ。

今後もラリーズでは卓球×健康・ヘルスケア領域について継続的にウォッチしていく。

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