写真:4連覇を果たした日本生命レッドエルフ/撮影:ラリーズ編集部
卓球インタビュー 【なぜ日本生命レッドエルフだけ勝てるのか/前編】村上恭和の監督論「チーム一丸の実際の作りかた」
2022.04.07
なぜ、日本生命レッドエルフだけが勝てるのか。
4thシーズンを終えた卓球・Tリーグにおいて、男女合わせて唯一の4連覇を果たした。
昨季の3連覇さえ、既に男女唯一だった。
選手層の厚さ、恵まれた環境と指導体制の充実、とは昨年のインタビューで聞いたことだが、でもやはり、総監督・村上恭和の「監督論」にも秘密があるのではないか。
その一端が垣間見えるインタビューとなった。
全員使いたい、レギュラーシーズンも優勝したい
はっきり言うと、名前だけ書いて“お前Tリーガーだぞ”っていうのは僕は嫌だったんです。
日本生命レッドエルフの中にジュニア部門も作って、同じ体育館で時々は一緒に練習をしているわけですから。
全員使おうと思ってましたが、レギュラーシーズンも絶対優勝したい。本当に悩みましたけど、できる限り使えるときに使ったという感じです。
親の顔が浮かぶわけですよ。中学生から高校3年生まで残って、その後レッドエルフを目指せるのか、違う道を進むのか。
普段の練習も、レッドエルフにエントリーしていないジュニア選手も協力している。
使って強くするのは当然だと思います。
写真:ジュニアアシストアカデミーの練習風景/撮影:ハヤシマコ
レギュラーではない麻生、笹尾、赤江、上澤らも、常にTリーグに出るんだという準備をして半年間ずっと練習していました。練習場が同じところにある利点ですよね。
だから、戦力が整っていないように見えても、前半戦もダブルスは勝ち越している。そこが持ちこたえた理由でしょう。
他のチームもいろんなダブルスを組んでいますけど、やっぱり行き当たりばったりで、試合当日、会場に着いてから練習をしている。半年前から練習をしているペアってないよね。だから、名前よりもみんな弱い。
写真:長﨑美柚・森さくらペア(日本生命レッドエルフ)/撮影:ラリーズ編集部
森さくらの執念
写真:シングルス、ダブルス共に11勝を挙げてチームを牽引した森さくら/撮影:ラリーズ編集部
でも森はカット打ちができないなかでも、最後の最後、執念で完璧に佐藤を打ち崩した。私の予想をはるかに超えた勝利でした。さすがです。あれで負けていたら、レギュラーシーズン1位は挫けていたかもしれない。
長﨑美柚の成長
翌日は、木下さんは石川佳純がエントリーしてきたけど、好調を維持した長﨑が石川に勝利した。ここを繋いだから2月後半、レギュラーシーズン優勝の望みを繋げられた。
写真:長﨑美柚(日本生命レッドエルフ)/撮影:ラリーズ編集部
“チーム一丸”の作りかた
契約や仕組みに、まとまりが良いチームを作れるような色んな工夫は散りばめてますね。
写真:4連覇を果たした日本生命レッドエルフ/撮影:ラリーズ編集部
チームの目的によって、監督に必要なことは違う
会社の福利厚生費で運営しているチーム、スポンサーメリットを追求する新しいチーム、地域密着でそのファン目線を重要視するチーム、それぞれで求める監督は違うなと思います。
普通は2、3年契約で監督させて、ファイナル行かなかったらごめんなさい、だとわかりやすいですよね。でも実際そうはなっていない、ファイナルに行った2チームの監督が交代するわけだから。やっぱりチームの目的に合う合わない、で判断している。
写真:村上恭和総監督(日本生命レッドエルフ)/撮影:ラリーズ編集部
監督の葛藤とは
うちの場合は、担当コーチ制にしているから、担当コーチと選手がうまくいかないときだってある。僕は複数のコーチとミーティングで調整しながらやっていますけど、なかなかそのときの利害に合わないこともあるから、難しいときもありますよね。
みんな雇われた監督。全体は会社や球団オーナーが見ているわけやから、監督は自分の上の、球団社長や会社オーナーが何を求めているのか、先に理解してスタートしないと、目的とずれてくるよね。
とにかく勝てばいいんだと思って、それが間違っていることさえあるからね。
写真:日本生命レッドエルフは選手毎に担当コーチ制をとる/撮影:ラリーズ編集部
Tリーグは、ほとんどの選手が最後の卓球人生に命を懸けているわけですよ。ここで終わらせたいという。結果的に移籍する人もいるけど、最初の気持ちは、ここで卓球人生終わるんだと思っている。だからこそ、自分がやりたいようにやりたいわけです。
チームのやりたいように従うわけじゃないんですわ。
監督は選手のその思いを汲んでやって、本人がやりたいようにやってるんだと思ってくれるように、チーム運営をやるということですね。各々、接し方は変わってくると思います。
(後編につづく)