写真:山本紋寧(SHIKISAI)/撮影:ラリーズ編集部
卓球インタビュー よく笑い よく泣いて “日本の縮図”と呼ばれる広島から<全農杯2023年全日本卓球選手権大会ホープス・カブ・バンビの部 広島県予選会>
2023.07.03
全農杯全日本ホカバ広島県予選に、広島県府中市に取材に行った。
折しも、広島市では物々しい警備体制の中でG7広島サミットが開催されていたが、府中市の会場TTCアリーナは、拍子抜けするほど穏やかな山間にあった。
広島には古くから名門と言われる卓球クラブがいくつかあり、何年かに一度、コンスタントに全国で活躍する選手を輩出してきた。
写真:全農杯全日本ホカバ広島予選会の会場/撮影:ラリーズ編集部
ところで、今回の広島予選会は、多くの子どもがよく笑い、よく泣いていた大会だった。
それだけ記憶に残る大会になっただろう。
奇しくもG7広島サミットでは、先進国首脳たちが、「記憶」を繋いでいくことを誓っていた。
写真:吠えたり/撮影:ラリーズ編集部
写真:泣いたり/撮影:ラリーズ編集部
写真:指導者も全力で子どもに向き合う/撮影:ラリーズ編集部
<全農杯2023年全日本卓球選手権大会ホープス・カブ・バンビの部 広島県予選 5月20日(土)府中市立総合体育館TTCアリーナ>
このページの目次
有力な実業団が3つもある広島県
広島県の卓球は、男子では瀬戸内スチール、女子では中国電力、広島日野自動車と、日本リーグに参加する名門実業団チームが3つもある。高校は名門・進徳女子高等学校もある。
「恵まれた環境で、子どもたちも良い刺激をもらっていますし、地元の指導者も学ばせてもらっています」広島県卓球協会専務理事の仁井田勇二氏は、その卓球環境に感謝する。
写真:広島県卓球協会専務理事 仁井田勇二氏/撮影:ラリーズ編集部
三宅兄弟が制したホープス男子とカブ男子
ホープス男子とカブ男子で優勝したのが、三宅脩斗、三宅直斗兄弟だった。
2023年度ナショナルチーム入りも果たしている弟の三宅直斗は、前陣での両ハンド攻撃が冴え、今回の予選会すべての試合で3-0で勝利する見事な戦いぶりだった。
写真:カブ男子の部で優勝 三宅直斗(ばらの町卓球場)/撮影:ラリーズ編集部
写真:ホープス男子の部で優勝 三宅脩斗(ばらの町卓球場)/撮影:ラリーズ編集部
泣いていた理由は
試合後、父にしがみついて泣いている女子選手がいた。
写真:呼びかけても振り向いてくれない/撮影:ラリーズ編集部
全国大会に一歩届かなかったのかと思っていたら、違った。その後、表彰式で見かけたその子は、女子バンビの部で優勝していた。
お父さんが、こっそり理由を教えてくれた。
「本人はどうしても全勝で優勝したかったので、決勝リーグで1試合負けたのが悔しかったと」
写真:女子バンビの部で1位だった大上紫乃(ピンポンカベ) /撮影:ラリーズ編集部
ふと気がつくと、その左手に無表情の顔文字が書いてあった。
“いつも冷静にってこと?”と聞くと、やっと笑ってくれた。
「違うよ、笑顔で試合しようっていうニコニコマークだよ、これ」
写真:手に書いていたニコニコ顔文字/撮影:ラリーズ編集部
「これで終わったら後悔するから」
激戦のホープス女子を制したのは、山本紋寧(SHIKISAI)だった。
決勝リーグ、同じ苗字の山本祐萊(可部町卓球スポ少)との対戦は、途中までリードされる展開だった。
タイムアウトのベンチでコーチの肖さんと「これで終わったら後悔するから出し切ろう」と話し合った後に逆転、試合後にはベンチで二人で涙を浮かべた。
写真:肖香津美コーチ(写真右)と山本紋寧(SHIKISAI)/撮影:ラリーズ編集部
小学6年生女子3人だけのSHIKISAIクラブを指導する肖香津美コーチは「まだ試合残ってるんですけどね」と泣き笑いの表情で“よく踏ん張ったね”と山本紋寧をねぎらった。
写真:山本紋寧(SHIKISAI)/撮影:ラリーズ編集部
“優勝の副賞のお肉を楽しみに戦ったんです”と、表彰式で嬉しそうな山本紋寧に、お肉をどうやって食べたいか聞いた。焼肉、すき焼き、ステーキ、カレー…。
「うん、全部食べましょう」
本当にお肉大好きなんです、と笑う笑顔は、小学6年生のあどけなさにあふれていた。
写真:山本紋寧(SHIKISAI)/撮影:ラリーズ編集部
広島血統和牛「元就(もとなり)」とは?
さて、今回、優勝者に贈られた副賞のお肉、広島血統和牛「元就(もとなり)」とはどんなお肉なのか、広島県三原市久井町の畜産農家・久井牧場に話を聞いた。
「元就は、広島県血統を重視しており、一生を広島で育ち、出荷したときの格付けが3等級以上のものが、元就と認められるんです」
写真:広島県三原市久井町の久井牧場/撮影:ラリーズ編集部
牛の分娩、育成、肥育を自前で行う一貫経営で飼育を行う久井牧場では、牛にとってストレスの少ない環境で育てることにこだわっている。
「餌やりの回数を細かく分けたり、牛が寝る床を常に乾いた状態に保っています。日々の観察がとても大切で、体調が悪いときは牛も顔に出るので」
写真:広島県三原市久井町の久井牧場/撮影:ラリーズ編集部
丁寧な飼育管理によって実現する肉の味は、まろやかで口溶けがよく、県内外から評価が高いと、JA全農ひろしまの狩谷課長は力を込める。
「今回、G7広島サミットの国際メディアセンターでのビュッフェにも元就をご提供させていただきました。みなさまに食べていただける場をより増やしていきたいと思っています」
写真:副賞の広島血統和牛「元就」/撮影:ラリーズ編集部
大粒のお米だけを選んだ『贅沢あきろまん』
2位に贈られた副賞が、広島県民米『贅沢あきろまん』だ。
広島県の奨励品種である『あきろまん』の中から、2mm以上の大きな粒だけを選んで精米したのが、この『贅沢あきろまん』だ。大粒米だけを厳選することで、『あきろまん』本来の特徴である”上品な味わい”となっているという。
写真:『贅沢あきろまん』を抱えるカブ女子2位の菅奈都美(可部町卓球スポ少)/撮影:ラリーズ編集部
不思議なネーミング”3-R(さんあーる)”に込められたJA全農ひろしまの想い
もう一つ、有意義な取り組みの中で生まれた副賞を紹介したい。
その名も『3-R せらにしあきさかり』。…3R?
お米の商品名には聞き慣れない冠の理由を、JA全農ひろしまの狩谷課長はこう説明する。
「キーワードである3つのRから取っています。1つ目のRはリソース(資源)、2つ目のRはリサイクル(再利用)、3つ目のRはリピート(繰り返す)、です」
写真:『3-R せらにしあきさかり』/提供:JA全農ひろしま
広島県内でできた鶏ふんなどの畜産たい肥を、地元のお米や野菜農家の方々に再利用してもらうことで、資源循環、そして“耕畜連携”を目指すブランドが“3-R”だ。
「本来、昔から農業には畜産たい肥が使われてきましたが、農業の発展に伴い、戦後は化学肥料が入ってきました。広島は卵の生産が盛んです。地元で生まれる鶏ふんを再利用し、野菜やお米にたい肥として使っていただくことで、できた農作物を価値に変えたいと」
写真:JA全農ひろしま 改革推進部改革推進課 課長 狩谷伸午氏/撮影:ラリーズ編集部
言葉に熱がこもる。
「近年、肥料の値段が上がっているだけでなく、肥料産出国であるロシアやベラルーシの国際情勢から、肥料そのものが日本に入りにくくなっています。地元の資源である畜産たい肥を使って野菜やお米を作り化学肥料や農薬の使用を減らし、環境に優しい資源循環のしくみを価値に変えて、手にとっていただける商品にしたい、という取り組みなんです」
写真:せらにし あきさかりを育てる田/提供:JA全農ひろしま
“日本の縮図”と呼ばれる広島で
県内で寒暖差が大きく、気候も異なる広島県。
有数の都市機能を持ちながら、多様で豊かな自然に恵まれることから、“日本の縮図”とも呼ばれる。
動画ライブ配信もテレビ放送もない、小学生のための広島大会が、喜怒哀楽にあふれていたこと。
日本の地方が誇る、かけがえのない一風景である。
写真:全農杯全日本ホカバ広島予選会の会場/撮影:ラリーズ編集部
広島県予選会 結果
ホープス男子
1位 三宅脩斗(ばらの町卓球場)
2位 有働葵(可部町卓球スポ少)
3位 菅原梨功(ピンポンカベ)
4位 川角岳(ピンポンカベ)
写真:ホープス男子の部入賞者/撮影:ラリーズ編集部
ホープス女子
1位 山本紋寧(SHIKISAI)
2位 二神咲来(SK)
3位 山本祐萊(可部町卓球スポ少)
4位 小村知優(ヒロタクスポーツ)
写真:ホープス女子の部入賞者/撮影:ラリーズ編集部
カブ男子
1位 三宅直斗(ばらの町卓球場)
2位 垣原政仁(南蔵王スポーツ)
3位 田中遥翔(ヒロタクスポーツ)
4位 山田修輝(SK)
写真:カブ男子の部入賞者/撮影:ラリーズ編集部
カブ女子
1位 村上里花(可部町卓球スポ少)
2位 菅奈都美(可部町卓球スポ少)
3位 原すみれ(広島フェニックス)
4位 石倉結羽(ばらの町卓球場)
写真:カブ女子の部入賞者/撮影:ラリーズ編集部
バンビ男子
1位 江崎海(ティーエスクラブ)
2位 上西湊大(東広島スカイジュニア)
3位 原 昇太(広島フェニックス)
4位 松本康希(ばらの町卓球場)
写真:バンビ男子の部入賞者/撮影:ラリーズ編集部
バンビ女子
1位 大上紫乃(ピンポンカベ)
2位 田中柚希(ばらの町卓球場)
3位 槙野恵麻(ヒロタクスポーツ)
4位 松井結亜(広島フェニックス)
写真:バンビ女子の部入賞者/撮影:ラリーズ編集部
動画はこちら
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