【金沢ポート】遊学館高・鈴⽊柊平獲得秘話 西東輝監督の心を動かしたインターハイでの一戦 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:鈴木柊平(遊学館高校)/撮影:ラリーズ編集部

卓球インタビュー 【金沢ポート】遊学館高・鈴⽊柊平獲得秘話 西東輝監督の心を動かしたインターハイでの一戦

2024.09.02

この記事を書いた人
1992年1月9日生まれ。金沢ポート株式会社の代表取締役兼金沢ポート監督。
石川県金沢市の卓球専門店「清水スポーツ」代表取締役社長でもあり、石川県卓球連盟の最年少理事も務める。
遊学館高校、北陸大学卓球部出身で、元日本代表選手から卓球始めたばかりの中学生まで、幅広い層への指導力に定評のある金沢市在住プロコーチ。
現役時代には、2009年春の高校選抜で当時最強の青森山田高から2勝を挙げて注目を浴びる。北陸大学時代には全日本学生選手権ダブルス3位の実績を持つ、北信越が誇る卓球人の一人。

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金沢ポート代表兼監督の西東輝です。

「石川県の卓球を盛り上げるにはどうすればいいのだろうか?」

これは、私がここ5年以上も考え続けてきた人生のテーマです。


写真:金沢ポート2023-2024シーズンホームマッチの様子/撮影:ラリーズ編集部

石川県で卓球を生業としているからこその問いかけかもしれませんが、それ以上に、卓球の魅力をもっと多くの人々に伝えたいという純粋な思いが根底にあります。


写真:固い握手を交わす松平健太キャプテンと西東輝監督/撮影:ラリーズ編集部

初期構想は「地域密着」 今季は遊学館高校主将・鈴木柊平と契約

金沢ポートの初期構想は、「地域密着」を掲げ、地元ゆかりの選手たちを中心にチームを構成し、地元の皆様に応援していただけるようなチームづくりを目指していました。


写真:石川県出身の松平健太(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部

石川県で卓球に励んでいれば「金沢ポートに入れる」という夢を県民に持ってもらうことが重要だと考え、初年度から石川県内の高校生や中学生とも契約を結んできました。


写真:平塚健友(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部

金沢ポート初年度は高校生の薜大斗選手(遊学館高校)、中学生の平塚健友選手(遊学館ジュニア)と契約。


写真:薜大斗/提供:金沢ポート

2年目の今季は新たにインターハイで活躍した高校生の鈴木柊平選手と契約しました。

現状では私の母校である遊学館関係の選手が多いですが、実力が伴えば他の学校の選手も獲得したいと常に考えています。


写真:鈴木柊平(遊学館高校)/撮影:ラリーズ編集部

また、子供たちが「金沢ポートに入りたい」と憧れるようなチームづくりが必要だとも考えています。ただ強いだけでなく、強くて正しいチームでなければ、誰も自分が入りたいとは思わないでしょう。

鈴木柊平を獲得して良いのか 監督としての葛藤

昨年の時点で、薜大斗と鈴木柊平の実力はほぼ互角でした。それならば、生まれも育ちも石川県である薜を選ぶべきだと初年度は決断し契約しました。


写真:試合にも出場した薜大斗/提供:金沢ポート

しかし、鈴木のプレースタイルにはプロ向きのポテンシャルがあり、彼の性格もファンサービスを積極的に行い、見られることを楽しむというプロにふさわしいものであることがわかっていました。


写真:ガッツポーズでチームを鼓舞する鈴木柊平(遊学館高校)/撮影:ラリーズ編集部

とはいえ、鈴木の高校卒業後の進路が一般企業への就職であることを聞いていたため、私はためらいました。

大学に進んで卓球に励むわけでも、日本リーグに加盟する企業に入るわけでもなく、仕事に専念しながら卓球を続けると決めた彼を、Tリーグという舞台に誘うことが正しいのかどうか。

3月ごろからこの問題を一人で悩み続けました。彼の人生に大きな影響を与えることになるのではないかと。

鈴木柊平のインターハイでのプレーは「西東輝が選ぶベストゲームTOP10」にランクイン

今季から選手枠が12枠に制限されている中、地元枠として枠を使うのはもったいないと考えたこともありました。

しかし、今年のインターハイでの鈴木のプレーを見ているうちに、彼の試合は「見ていて楽しい」「ファンタジスタ」「ワクワクする」といった感情が芽生え、純粋に試合を楽しんで観ることができるようになりました。


写真:インターハイ学校対抗単複で活躍した鈴木柊平(遊学館高校)/撮影:ラリーズ編集部

金沢ポートの監督を引き受けて以来、試合観戦は全て「研究材料」になってしまい、試合を楽しむという感覚を失っていましたが、鈴木のプレーは私を久々に楽しませてくれました。

彼の持つ不思議な力は、これまでに見た何千試合の中でも、特に印象深いものでした。


写真:鈴木柊平(遊学館高校)/撮影:ラリーズ編集部

例えば、世界卓球2017の丹羽孝希VSオフチャロフ戦は、私がこれまで見てきた中で最も面白かった試合の一つですが、今年の8月には新たに2つの試合が私のトップ10にランクインしました。(また別の機会に10試合全部をご紹介します)

パリ五輪女子団体決勝の1番のダブルス(日本:張本美和/早田ひなvs 中国:陳夢/王曼昱)、そして今年のインターハイでの鈴木柊平(遊学館高/金沢ポート)VS小野泰和(出雲北陵高/T.T彩たま)の試合です。


写真:インターハイ学校対抗シングルス全勝の鈴木柊平(遊学館高校)/撮影:ラリーズ編集部

鈴木柊平vs小野泰和の名勝負

インターハイ団体準決勝の遊学館高校vs出雲北陵高校。同大会のシングルス優勝の小野選手を鈴木選手が単複ともに破りました。


写真:インターハイで卓球ファンに鮮烈な印象を残した鈴木柊平(遊学館高校)/撮影:ラリーズ編集部

私が思う面白い試合は、一つの得点パターンが続くのではなく、戦術が目まぐるしく変わること。特に両選手の集中力が一瞬たりとも切れず、互いに逃げることなく次の戦術を仕掛け合っている試合展開であることが特徴です。

今夏の鈴木はそういう試合を見せてくれ、私の心を動かしました。


写真:西東輝(金沢ポート)/撮影:ラリーズ編集部

自分は何のために金沢ポートを立ち上げたのか?

ただ若者と契約するだけで終わりなのか?

契約してもハイレベルなTリーグでは試合に起用できるかどうかはわからないから何もしなくていいのか?

悶々と自問自答を繰り返した結果、最終的には彼に契約をオファーすることに決めました。

そして、金沢ポートへの入団を快諾してくれた本人とその関係者に心から感謝しています。


写真:鈴木柊平(遊学館)/撮影:ラリーズ編集部

今では、金沢ポートに入団することで鈴木の卓球に対する意識が変わり、高校卒業後の進路でも新たな可能性が生まれるかもしれないと思えるようになりました。今年一年、彼がどのように成長するかを楽しみにしています。

鈴木選手のダイナミックなプレーを皆さんにお見せできる日が来ることを願っています!

プロチームの監督から見た鈴木柊平

追伸:鈴木選手に関して、良く聞かれる質問についてお答えします。

Q1:鈴木選手がインターハイ団体戦で全勝できたのはなぜですか?

A1:準々決勝4番での逆転勝ちが彼をヒーローに押し上げました。

<高校総体2024 男子学校対抗準々決勝>
明豊(大分)2-3 遊学館(石川)
〇植木大陽 3-2 薜大斗
利光芳輝 1-3 北口愛斗〇
〇植木大陽/嶋田碧虎 3-0 鈴木柊平/坂田陽哉
嶋田碧虎 2-3 鈴木柊平〇
横田卓磨 1-3 坂田陽哉〇

卓球選手は大舞台、特に一発勝負のトーナメントでの死戦を乗り越えると一気に伸びる瞬間があります。

鈴木柊平選手において今年のインターハイ団体戦の準々決勝がその試合にあたります。

この試合では自らダブルスを落とし、鈴木選手が4番シングルスで負けたらチームも負けという崖っぷちの状況でした。


写真:坂田陽哉と組んだダブルスでもチームを牽引/撮影:ラリーズ編集部

この試合、ゲームカウント1-2と劣勢の場面で相手のスーパプレーを喰らった直後にサーブミスをしてしまい、追い込まれていました。

この完全に心が折れかけていたタイミングで植木監督が取ったタイムアウトは絶妙でした。(恩師を持ち上げるつもりは無いですが素直にこのベンチワークは大きかったです)

ここから鈴木選手は気持ちを切り替えて復活し、大逆転。彼のキャリアの転換点となったと思います。


写真:鈴木柊平(遊学館高校)/撮影:ラリーズ編集部

ここで負けていたら鈴木は平凡な選手で終わっていたかもしれませんが、この明豊戦の大逆転が鈴木を今大会のヒーローに押し上げる要因だったと思います。


写真:インターハイ決勝でも1番で勝利/撮影:ラリーズ編集部

Q2:高校生の鈴木選手はTリーグで勝てますか?勝つための条件は?

A2:彼の特長を活かせれば通用します。長所の豪快さを活かすための「仕掛け」が鍵です。

鈴木選手のプレーの特長を一言で言うと「豪快かつセンスフル」です。

トップ選手で言えば吉村真晴選手(琉球アスティーダ)と有延大夢選手(T.T彩たま)を足したようなプレーをします。

もう少し言語化すると、運動量の多さ(フットワークの良さ)とスイングの種類が沢山あるところが長所です。

ラリーになれば、フォアハンドもバックハンドも小さなフォーム、中くらいのフォーム、大きなフォームを自由自在に使いこなせます。これはトップ選手でもなかなかできることではありません。


写真:鈴木柊平/撮影:ラリーズ編集部

サーブは複数種類あり、今は馬龍のモノマネサーブを試合で使うなど、どんどん新しいサーブを柔軟に取り入れていきます。

レシーブもチキータが得意ですが、インターハイではチキータを打つと見せかけてストップやツッツキを効果的に混ぜていたことが、対戦相手からしても脅威で、尚且つ鈴木選手の安定感にもつながっていました。


写真:鈴木柊平(遊学館高校)/撮影:ラリーズ編集部

フォア前の台上が今後もっと伸びていくと、プレースタイルに幅が広がり展開が増えていくと思っています。

彼の伸びとキレのあるドライブを万全の体制で打てれば、Tリーガーたちにも通用します。ただし、それをさせてもらえないのがTリーグです。

昨年の五十嵐選手もシーズン前半にそこで苦戦をし、改善して勝てるようになってきました。

鈴木選手の課題は、ドライブを打つ前の準備打の攻めの早さと安定性です。Tリーグクラスでは、「絶好のレシーブをしないと一撃でやられてしまう」という恐怖が常につきまといます。

それが故に焦ってリスクあるレシーブをしようとすると、凡ミスに繋がります。一方で凡ミスを怖がって入れるだけのレシーブになると狙われて一撃でやられるという悪循環になります。

そこで大切なのは6割程度の威力でいいので、一撃を喰らわないレシーブの安定感を上げることです。早速練習の指示はしており、そこを重点的に指導・強化していきたいと考えています。

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