卓球インタビュー 【後編】「迫力のラリーシーンに卓球の小ネタ」 卓球ファンが注目すべき『ミックス。』の見どころ
2017.10.25
取材・文:武田鼎(ラリーズ編集部)
男性と女性のペアで戦う卓球種目の一つ「混合ダブルス」を映画化したロマンチック・コメディ『ミックス。』が10月21日に公開された。本作の見どころの一つが主演を務める新垣結衣さんと瑛太さんによる迫力のあるラリーシーンだ。
天才卓球少女として名を馳せた主人公多満子(新垣結衣)と彼女を取り巻くユニークなキャラクターもストーリーを彩る。
だが、本作では「卓球ファン」ならではの魅力もある。卓球ファンなら思わずクスリと笑ってしまう小ネタや、思わず身を乗り出して見てしまうような意外な人物が本作でも登場する。卓球ファンはどのように本作を楽しめばいいのか。監督を務めた石川淳一さんに話を聞いた。
>>【前編】「もはや卓球はマイナースポーツではない」映画『ミックス。』石川淳一監督の想い
——最初、卓球を扱うと聞いた時にどう思いまいたか?
石川:最初、耳にした時は率直に「難しいな」と思いました。まずは球が小さいこと。どうやって迫力を出すか。まずは勉強からでしたね。頼もしかったのはカメラマンに映画『ピンポン』の佐光朗さんが入ってくれたこと。「迫力を出したい」というとそれにあったカメラワークをしてくれました。独特なのが「ボール目線」のシーン。小型カメラのGoProを使って撮影したのですが、ボールが弾んで選手の胸元めがけて襲いかかるような映像になっています。
他にも実際に卓球のコーチングをしている川口陽陽さんに技術指導に入ってもらったのも非常に助かりました。僕からは「ここは2回ラリーがあって、主人公2人が不利になるシーンなんです」って相談すると、レシーブの仕方や選手たちの動きを考えてくれる。それに合わせて佐光さんがガーっとカメラを突っ込んできてくれて迫力あるシーンが出来上がっていく。技術面はプロに任せて僕は流れを考えて提案する感じでした。
——どういうところが具体的に難しかったですか?
石川:一番は卓球のラリーが早すぎること。1回のラリーでどうしてもワンカット3,4秒は持たせたいけどその間に2往復くらいしちゃってる。1打1秒もない間に終わっちゃうんですよ。
あと、よく卓球では「回転」って言いますよね。あれが最初はわからなかったんです。でも実際に台上で変化する打球を見ているうちにその大切さに気づきました。こんなにボールの回転で打球が変わるのか、と。
——なるほど、映画化にあたっての苦労は?
石川:難しいのはボールがCGという点。1台を男女4人で向き合って「見えない球」を打つ。どういう球がどういう速さで飛んできて、どういう打ち方をしてどこに返して次はどう動くのか。それを想像しながらやってもらうのは難しかったですね。
——「卓球を知らない」という監督ならではの視点はどういうところに盛り込まれていますか?
石川:実際の試合を見ているとサーブとレシーブであっさり点が決まることが多い。でも僕はラリー戦を見せたいと思ったんです。やっぱり卓球の見どころはラリー戦だと思ったんです。「打ち合って打ち勝つ」というところがカッコイイな、と。だから見どころは迫力のあるラリーですね。もちろん、サーブで決まる場面もありますよ。
——確かに。吉村真晴選手の「アップダウンサーブ」も登場しますね。
石川:吉村選手にとどまらず、映画には現役有名選手が登場しているのも見どころの一つですね。後は「チョレイ!」も入っています。撮影は2月だったので、世界卓球で張本選手の「チョレイ!」有名になる前だったのですが、中国人選手は「チョレイ」を言うみたいで。それも盛り込んでいます。まさか撮影後にあそこまで「チョレイ」が流行るとは…(笑)。実際に中国語監修の人に聞いても「チョレイは意味がない」っていうのも面白かったですね。
あとは多満子の幼少期のお母さん(真木よう子)とのシーンはこだわりました。あれは愛ちゃん(福原愛)とお母さんの様子をイメージしています。
——確かに。髪型もヘアバンドも同じでしたね!
石川:それだけじゃありません。卓球ファンなら幼少期の多満子のウエアにも注目してほしいですね。資料を研究して、当時流行っていた独特なカラーリングや模様などを再現しているんです。リアリティはなるべく追求しましたね。
——最後に「卓球ファン」に向けて、「『ミックス。』の楽しみ方」を教えてください
石川:最初は普通にストーリーを見てほしい。でも2回めは「アラ探し」するくらいの気持ちで見てほしいですね。「ここは撮影難しかっただろうな〜」とか、そんな風に見てもらってもいいかもしれません。
>>「ミックス。」の技術指導で活躍 陽陽さんの“熱い”卓球への思い
写真:伊藤圭