アイスクリームという名前の甘味な卓球ラケットがある? | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:アイスクリームという名前のラケットがある?/撮影:ラリーズ編集部

卓球×インタビュー [PR] アイスクリームという名前の甘味な卓球ラケットがある?

2021.10.06

この記事を書いた人
1979年生まれ。テレビ/映画業界を離れ2020年からRallys編集長/2023年から金沢ポート取締役兼任。
軽い小咄から深堀りインタビューまで、劇場体験のようなコンテンツを。
戦型:右シェーク裏裏

先に結論を言うと、ある。

アイスクリーム。

しかも超本格派のラケットだと言う。
であれば、なおさら疑問がある。

なぜ、その名前に。

断っておくと「卓球のラケットは、なるべく親しみやすさを感じて頂くために、歴史的に甘味の名前をつけます」などという伝統は一切ない。
張本智和モデルとか、インナーフォースとか、ユーザーが想像しやすい商品名が一般的である。
食べ物の名を持つラケットは、聞いたことがない。


さらに謎が深まる、たぶん“アイスクリーム”ラケットのPRビジュアル

販売元に問い合わせると

Rallys編集部でも意見が割れた。
「性能が良すぎて相手が震える、という意味も込められてるのではないか」
「だったら、クリームをつけてわざわざ甘くする必要があるのか」
「形がアイスクリームに似ているのでは」「似てない。というか、基本的にシェークハンドのラケットの形はほぼ同じだ」
「そのシェークハンドの“シェイク”とアイスクリームがかかっているのではないか」「何のために」「そもそも何味なのか」

埒が明かない。
すぐに、製造・販売元のXIOM(エクシオン)に聞いてみることにした。
ちなみに、このエクシオンという社名さえ読みづらい。謎が深まる。ネーミングに独自のセンスがありすぎるのではないか。

「私が付けたわけではない」

すぐにXIOMの日本販売元、卓永(たくえい)代表取締役の鶴高寿(つる たかひさ)さんにオンラインで取材することができた。ネット時代の恩恵だ。


写真:XIOM日本販売元、卓永(たくえい)代表取締役の鶴高寿(つる たかひさ)さん/撮影:ラリーズ編集部

――なぜ、その名前を付けたのでしょうか
鶴:
「いや、私がつけたわけではないんです。XIOMは、2004年創業の韓国の卓球メーカーで、私たちはその日本販売元です」

――最初に聞いたとき、驚きませんでしたか
鶴:
「思い切ったなとは思いました。開発にも相当力を入れて、トップ層向けに開発したハイレベル製品なので」

――誰が名づけたんでしょうか
鶴:
「うーん、わからないんですよね。ただ、このアイスクリームを使って東京五輪で男子シングルスベスト8に入った弊社契約選手、韓国の鄭栄植(チョン・ヨンシク)選手がアイスクリーム好きだからという話もあって」


写真:鄭栄植(韓国)/提供:ITTF

なんと、このアイスクリームの名を持つラケット、東京五輪シングルスベスト8で、日本との団体3位決定戦で丹羽孝希を破った、あの鄭栄植(チョン・ヨンシク)選手も使っているのか。

鶴:「性能はもちろん、グリップの先鋭的なデザインも含め、国内外のトップ層の選手たちからも評価を頂いてます」

超本格派ラケットだった

先鋭的な超本格派なのに、名前が超ライトなアイスクリーム。
ますます、そのネーミングセンスが気になる。そして、本当に鄭栄植(チョン・ヨンシク)選手がアイス好きだからだとしたら、一体どれくらい好きなのかも気になる。あと、韓国で人気のアイスとは何なのかも。

鶴さんに、その理由を知る韓国本社筋に繋いでもらうよう、ダメ元でお願いをした。


写真:鄭栄植/提供:ittfworld

実は、鄭栄植選手は2018年シーズンに、日本の卓球Tリーグに参戦していたことがある。
所属していたチームT.T彩たまの坂本竜介監督にその特徴を聞いた。

「バックハンドが強く、そして人柄がいい選手で、日本にもとてもファンが多いです。僕も家族ぐるみの付き合いで、先日も僕の娘にチマ・チョゴリをプレゼントしてくれました」


写真:2018年、日本のTリーグ参戦時の鄭栄植(チョン・ヨンシク)/撮影:ラリーズ編集部

――本人からアイスクリーム好きだという話は?

「いや、それは聞いたことないですけど」

ますます謎は深まる。もはや我々が勝手に深めているだけかもしれない。

ヨンシク選手本人にたどり着いた

ほどなくして、XIOM韓国Aaron Kim氏、Henry Han氏、そしてなんと、東京五輪閉幕直後の鄭栄植(チョン・ヨンシク)選手本人とのオンライン取材が実現した。ネット時代の恩恵だ。

――ヨンシク選手、東京五輪お疲れさまでした。1回戦のジオニス選手の大逆転勝利や、ボル選手を破ってのシングルスベスト8はお見事でした。
鄭:
ありがとうございます。金メダルを目指していたので個人的に残念ですが、大変な状況の中で開催し、応援してくださった全ての皆さんに感謝しています。


写真:東京五輪での鄭栄植(韓国)/提供:ITTF

――さっそくですが、ご自身が使っているラケット「アイスクリーム」ですが、ヨンシク選手がアイス好きだから、その名前になったというのは本当ですか?
鄭:
面白いですがそれは違いますね(笑)。偶然と聞いています。


写真:アイスクリームについて掘り下げる我々に苦笑する鄭栄植選手/撮影:ラリーズ編集部

もちろん我々は食い下がった。
――偶然、ラケットがアイスクリームという名前にはならないと思うんです。

すると、隣の席の、当時商品開発担当だったHenry Han氏が、教えてくれた。
Henry Han:このアイスクリームは、両面の素材が違うハイブリッドラケットという新しい性能を持っています。両面の感触が違う、味が違うということから、食べ物で味が違うものは何があるかという視点から、最後にアイスクリームという名前にたどり着きました。他のブランドとは違う衝撃的なネーミングにという狙いもありました。

――では、アイスクリーム以外にも衝撃的な名前の候補があったんですか
Henry:
鋭い質問ですね(笑)。実はいま開発中の新製品につける予定なので、内緒です。

なんと、既に次の新製品にも衝撃的な名前を準備していた。

――ヨンシク選手は、ご自身の使うラケットがアイスクリームという名前になったと聞いて、どう思いましたか?
鄭:
実際アイスがとても好きなので、なんで僕の好きなものを知ってるんだろうと思いました(笑)。

――どんなアイスが好きなんですか?
鄭:
メロナですね。

――・・・メロナ?
鄭:
韓国で人気の、メロン味のアイスです。

甘味専門メディアかのようにアイスのことばかり聞く私たちにも、実に誠実で丁寧に答えてくれた。日本にもファンが多い理由がわかる。

結論。
アイスクリームというラケットはその衝撃的な性能を表現する意図で名付けられ、狙い通り私たちは、衝撃的にそのラケットについて興味を持ったのだった。


写真:画面越しに見ると、予想以上に真面目な表情の我々/提供:XIOM

甘味のほうのアイスクリームでも卓球できるのか

完全に蛇足かと思うが、鄭栄植選手が好きな甘味のほうのアイスクリーム「メロナ」で卓球をしてみなくてはと思った。

新大久保の韓国食材店を回ってみたが、意外なことにメロナが全く置いていない。


写真:JR新大久保駅/撮影:ラリーズ編集部

何店目かのお店の人に聞くと「韓国アイスはいま、コロナの影響でどこのお店も置いていないんじゃないかな」と申し訳無さそうに教えてくれた。
コロナはメロナにも影響した。
もはや何の取材か分からなくなってきたが、やむなく日本の夏を彩る(もう初秋だが)ガリガリ君を美味しく頂いた後、編集部で「アイスクリーム棒vsアイスクリームラケット」の対決を試みた。


写真:“アイスクリームの棒”卓球は思ったより難しかった/撮影:ラリーズ編集部

“アイスクリームの棒”は想像以上に細く、まったくラリーが続かなかったので、わりとすぐに編集部員同士で普通の練習になった。
なんだか、久しぶりに練習ができた。
これもアイスクリームという名前のラケットが存在したおかげかと思うと、ほんのりと甘い気持ちが胸に広がった気がしたが、それはいま食べたガリガリ君の余韻かもしれなかった。


写真:アイスクリームの名を持つ超本格派ラケット/提供:卓永

【日本初】劇場開催のTリーグの試合を観に行ってみた