水谷が語るTリーグ「両国国技館は期待以上」 本場の卓球との違いとは【水谷隼#1】 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:水谷隼/撮影:伊藤圭

卓球×インタビュー 水谷が語るTリーグ「両国国技館は期待以上」 本場の卓球との違いとは【水谷隼#1】

2019.03.15

文:武田鼎(ラリーズ編集部)

10月に産声をあげたTリーグ、そのプレーオフファイナルが近づいてきた。レギュラーシーズンでチームを首位に導いた日本卓球界の至宝・水谷隼は何を思うのか。30歳を目前に控え、中堅からベテランの域に達しつつある水谷に話を聞いた。

始まるまでは不安でしたね。Tリーグ側からの情報がなかったし、本当にこのまま開幕して大丈夫かな、と思わされました」。だが水谷の不安はいい意味で裏切られた。両国国技館での開幕戦には平日にも関わらず2日間で1万人以上が詰めかけた。相撲の聖地の真ん中に鎮座する1台の卓球台に全員の視線が注がれるという稀有な体験を経た水谷は「あれは驚きましたね。こんなに盛り上がるのか、と。シーズン中の通常の試合もあれくらい盛り上がったらいいですよね」と展望を語る。

だが、両国以降の通常シーズンが詳細に報じられることは少なかった。大々的に開幕した10.24以降、変化が産まれたのは「客席から」だった。中でも木下マイスター東京の応援は他を圧倒するほど熱い。特にホーム戦ともなればJリーグのチャントばりに声を上げ、会場を盛り上げる。試合前とハーフタイムのカレッジコスモスたちのダンスと応援も見ものだ。「ちょっと海外の卓球の試合みたいになってきた。木下(グループ)の社員の方が先頭に立って応援してくれるので、初めてのお客さんも声が出しやすいですよね。ちなみに、あの社員さんって結構偉い人もいるらしいんですよ(笑)。それくらい会社が一丸となって応援してくれるのはありがたい。木下の試合には本当にたくさんのお客さんが入ってくれています」。

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本場ドイツ、ロシアとTリーグとの違いとは


写真:水谷隼/撮影:伊藤圭

だがドイツ・ブンデスリーガやロシアリーグと「本場」を知る水谷はまだTリーグに求めるレベルは高い。「入場は外国の方が良い。照明が真っ暗になって音楽に合わせて一人一人スポットライトを浴びながら入場する。音楽はチームのテーマみたいなものがある。その点Tリーグのシーズン中は次に登場する選手が見えちゃってるのはなんかちょっとね…(笑)」。

さらに、水谷の主張はTリーグ全体にも及んでいる。ここ最近は「8チーム構想」がしばしば語られる。「中国にしてもドイツにしても8〜10くらいが基本。8チームにするなら中国みたいに各チーム一人しかナショナルチームの選手を入れられないようにするとか。4チームでやるなら昔のブンデスリーグみたいにもう少し長くしてもいい。昔、ブンデスリーグは2試合ダブルスがあって8試合シングルスがあった。理想は8チーム。まずは6チームで最終的には8チームに増えていけばいい」。海外での試合の経験も持つ水谷だからこそ説得力が違う。

チーム数が足りない


写真:水谷隼/撮影:伊藤圭

8チーム構想の狙いについて「やっぱり4チームだとどうしてもマンネリ化してしまう。例えば(チームメイトの)松平健太も他のチームだったら出られるのに木下(マイスター東京)にいるから出られないという問題もある。マンネリ化しちゃうと注目度も下がる。テレビ放送されないとなかなか認知はされない。プロ野球みたいに毎日放送されるようになっていかないと」と危機感を露わにする。さらに日本の卓球人気を高めるためには何が必要か。「まだわからないけど、やれることはなんだってやったほうがいい。僕で言えばSNSだって必要な取り組みかもしれない」。

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水谷隼の「使命感」とは

水谷はツイッターで頻繁にコメントを発信する。「俺に不可能はない」として凄ワザ動画の投稿を募ることもあれば、試合直前の何気ない写真を投稿することも。「水谷隼個人というより、卓球選手としての自分を発信している感じ。グレーなことは書けない。アンチのコメントもしょっちゅうあるし、そりゃストレスもある」。ではなぜSNSで発信を続けるのか。手痛い敗北もファンからのコメントで癒やされるから?水谷は否定する。「卓球を盛り上げなきゃっていう使命感ですね」。


写真:水谷隼/撮影:伊藤圭

取材中、「使命感」という言葉が幾度も口をついた。その背景にあるのは卓球界と自身に対する強烈な危機感だ。2020年、東京五輪を見据えているのだろうか。日本のメダルは、そして気になるメンバーは。

だが、水谷から返ってきたのはショッキングな言葉だった。「実は僕が東京五輪に選ばれるのも五分五分だと思っています」。謙遜を…。そう返したくなるような発言だった。だがその表情は真剣そのものだ。少し間を置いて水谷は静かに苦悩を語り始める。

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