卓球界のレジェンドが語る "2019年の卓球はこうなる"<宮崎義仁氏・特別インタビュー 後編> | 卓球専門WEBメディア「Rallys(ラリーズ)」
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2019.01.27

卓球界のレジェンドが語る “2019年の卓球はこうなる”<宮崎義仁氏・特別インタビュー 後編>

写真:宮崎義仁氏(日本卓球協会 常務理事・強化本部長、T2 Diamond技術顧問)/撮影:ラリーズ編集部

2019年から始まる卓球新トーナメントT2 Diamondの技術顧問に就任した宮崎義仁氏(日本卓球協会 強化本部長)へのインタビュー企画第2弾。後編となる今回は気になる日本卓球協会強化本部長の仕事内容と、東京五輪代表争いが激化する2019年の卓球界の展望について、熱戦が繰り広げられる全日本選手権の会場でお話を伺った。

宮崎義仁氏・特別インタビュー前編「2019年 新トーナメントが五輪代表争いに与える影響とは?」はこちら

ーーお茶の間では名物解説者としても有名な宮崎さんですが、普段はどのような生活をされていますか?
宮崎:
トレセン(味の素ナショナルトレーニングセンター)に毎日通っていますね。忙しい時は月に31日。つまり毎日朝から晩まで日本の卓球が強くなるために全てを捧げています。完全な休みは月に1、2日取るくらいですかね。

ーーお仕事の内容についてもお聞かせ下さい。
宮崎:
各年代のナショナルチームが強くなるよう、環境を整備するために何でもやりますね。予算取りから管理まで多岐にわたります。仕事量は非常に多いですが、全て手を抜けない仕事ばかりです。

ーートレセン、エリートアカデミーが出来てから10年が経ちました。この10年を強化本部長としてどう評価されますか?

宮崎:トレセンが出来たおかげでナショナルチームは安定しましたよね。トップ選手たちが集まって刺激を受け合うナショナルチーム合宿が、団体戦でのメダル獲得に一役買っています。

エリートアカデミーからは、平野美宇、張本智和らが世界のトップで活躍していますが、実は2013年に私が総監督になったタイミングで大きく方針を変えました。五輪でメダルを獲るであろう選手のみを強化するアカデミーシステムに変えています。

小学生以下の全日本チャンピオン、東アジアホープスでベスト4以上など、メダルが期待できる将来有望な若い選手に声をかけ、少数精鋭の選手に予算もスタッフも手厚くつける方針です。20人以上いるコーチ、情報担当、体のケア、トレーニングなどマンツーマンで最高の環境を用意する。その代わりそれを受けられるのは狭き門となっています。

ーー(目の前で開催されている)全日本選手権はどのような視点でご覧になっているのでしょうか?
宮崎:
やはりこの中から世界選手権の代表を選ぼうと思っていますので、世界で通用する技術なのか、世界で戦うだけのメンタルの強さを試合で出せるかを見ています。特にメンタル。世界選手権のような手が震える舞台では技なんて10%ぐらいしか意味を持たない。勝負を分ける要素の6割ぐらいはメンタルですね。

ーーミックスダブルスで優勝した伊藤美誠選手は「全然緊張しなかった。楽しんでプレーした」とコメントしていましたし、張本選手や水谷選手らチャンピオンになる選手は大舞台に強い印象があります。メンタルは天性の生まれ持ったものが大きいのでしょうか?それとも後から鍛えられるのでしょうか?

宮崎:それは後からですよ。誰だってはじめは震えます。張本は声でかき消して乗り越えています。美誠も子供の頃は泣いていたわけですから。それをみんな色んな工夫と努力で乗り越えてきているわけです。

あとはメンタルに次いで勝負を分けるのは戦術転換の早さですね。戦術がコロコロ変わる中、その切替えが早く出来ているかを見ています。

例えば、ミックスダブルス決勝では、張本は森薗の質の高いサーブをうまくチキータできていなかった。それに気づいてやっとストップに切り替えた。まずそのタイミングも遅かったんですよね。

そしてストップに切り替えた1本目は得点になる。その次のボール、張本はもう1本ストップしてしまった。伊藤美誠がストップを待っているにも関わらず。なので待ち構えていた伊藤に強打され失点してしまった。この場面ではもう一回チキータか長いツッツキレシーブをミドルかバックに送る方がよかった。

張本はこの選択ミスに気づき、別の場面で1本ストップして得点した後、次はチキータを狙った。結果的にチキータをミスしたけどいいミスだった。

こういった戦術転換の早さ、頭の良さ、世界で通用する学習能力。という所を見ています。

ーーだから先を読んだ実況解説ができるんですね。恐れ入りました。ちなみに今みたいなお話は選手たちに直接アドバイスされるのでしょうか?

宮崎:伝えないですよ。全て選手が自分で考えて、感じてやるもの。選手は自分でやります。人に教えられてやるなんてありえないですし、それだと遅いんですよね。

「選手をどうやって指導するんですか?」と良く聞かれますが、教えない。教えたこともないし教えようようとも思わない。

選手がルールを守らなかったり、真面目にやらない時、コーチがふんぞり返って指導していたら叱ることはあります。でも、手取り足取り教えることはないです。

ーー選手が自分で考えて自分で決めることが大切ということでしょうか。

宮崎:はい。練習メニューや練習時間、いつ休むかも含めて選手が自主的に決めています。強くなるには色んな方法があると思いますが、確実に言えるのは中国や韓国のマネをしても勝てない。だから自分の発想に基づいて独自性を出し、自分で考えて強くなる。これしかないと思っています。

ーー卓球以外にも通ずるものの考え方ですね。ビジネスマンや学生の読者の方にも参考になる貴重なコメントをありがとうございます。
話は変わりますが2019年の卓球界はどんな1年になると思いますか?

宮崎:選手にとってはオリンピックがかかっていますから、胃がキリキリ痛むような神経質な1年になります。

選手間や所属する母体同士もナーバスになるし、他国同士も牽制しあい、協力できないということが増えることが予想されます。協会もそれを出来る限り予知、察知して未然に防いだり、ケアしていくことが求められますね。

ーー新しくスタートするT2 Diamondは世界と日本の選手に大きな影響を与えますか?
宮崎:
オリンピック代表争い、特に日本選手には大きな影響を与えるでしょうね。

特にランキングが下の選手は、ワールドツアーで頑張って、T2 Diamondの出場権を得る。そこで上位に入ればボーナスポイントで一気に上位を抜くチャンスも出てくる。

逆にトップにいる選手は下に負けないように、これまで出なかったワールドツアーにも出るようになってきていますね。こうして切磋琢磨して勝ち抜いて選ばれた強い代表選手が金メダルを目指すという状況になると思います。

ーーTリーグも3月で1シーズン目が終了します。2年目はどのようになると思いますか?
宮崎:
1シーズン目の反省を活かし、選手、ファン双方にとってより良いリーグになると思います。選手にとっては過密日程が解消され、ファンにとっては土日開催が増えて応援しやすくなる方向で協議中と聞いています。

海外勢の参戦については、五輪直前ということが懸念されます。中国選手が来てくれたらベストですが、中国協会の劉国梁会長でも意思決定が難しく、スポーツ局(日本のスポーツ庁にあたる省庁)としての判断が卓球に限らず全競技に影響すると聞いています。今参戦中の海外選手も2シーズン目も参戦してくれることを期待したいですね。

ーー最後に強化本部長としての意気込みをお願いします。
宮崎:
東京オリンピックでは是が非でも中国から2~3タイトル獲りたい。

そのためには日本国内の選手がもっと熾烈な代表争いをして実力を上げて行かないといけないと思っています。仲良しこよしの日本チームではだめ。ライバル心むき出しの日本チームにならないといけませんよね。女子はだんだんそうなってきている。男子は内には秘めているのですが、もっと表にでてこないとダメかなと思っています。読者の皆さんには是非日本チームを応援頂きたいです。

ーー貴重なお話をありがとうございました。日本卓球の強化と普及の両方を楽しみに、読者の皆様と応援させていただきます。

宮﨑義仁(みやざき・よしひと)氏プロフィール

1959年4月8日生まれ、長崎県出身。鎮西学院高校~近畿大学~和歌山銀行。現役時代に卓球日本代表として世界選手権や1988年ソウル五輪などで活躍後、ナショナルチームの男女監督、JOCエリートアカデミー総監督を歴任。ジュニア世代からの一貫指導・育成に力を注いでいる。試合のテレビ解説も行っており、分かりやすい解説が好評。公益財団法人日本卓球協会常務理事、強化本部長。卓球国際新トーナメントT2 Diamondの技術顧問も務める。

文:川嶋弘文(ラリーズ編集部)

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