【森薗美咲#3】「全ての女性アスリートのために」森薗家のアネゴが、自ら向き合う社会課題 | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:森薗美咲/撮影:ラリーズ編集部

卓球×インタビュー 【森薗美咲#3】「全ての女性アスリートのために」森薗家のアネゴが、自ら向き合う社会課題

2019.04.20

文:川嶋弘文(ラリーズ編集長)

TリーグTOP名古屋のキャプテンとして日本の卓球シーンをリードする森薗美咲(26歳)。森薗がここ数年悩んでいるのが「女性アスリートのキャリア」の問題だ。

「正直、セカンドキャリアの問題はずっと考えています。引退した後に何を仕事にしようということではなくて、いつ結婚しよう、いつ出産しようというのは常に考えていて難しい問題。卓球界でも男子は割と若い段階で結婚して子供もいる選手が多い。幸せな家庭を築きながら、卓球でも活躍しているんですよね。でも女子選手はそれが難しい」。

事実、男女ともメダルを獲得したリオ五輪の卓球日本代表メンバーを見ても、男子は水谷隼、吉村真晴が20代で結婚をして子供もいる。そして家族からエネルギーを貰いながらアスリート生活を送っていることをオープンにしている。

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一方、女子は福原愛さんがリオ五輪の直後に台湾の卓球選手、江宏傑と入籍。翌年には第一子を授かった。ファンからはTリーグへの参戦など現役復帰も期待される中、2018年10月に惜しまれつつも引退を表明した。今月に入って第二子の誕生もニュースとなったが、結婚出産を経ての競技復帰は簡単ではなかったという見方もできる。

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「アスリートとして活躍できる年齢って限られていますよね。日本だとまだまだ世間体というか、結婚したり、子供を産んだりという選択を優先するとアスリートとしては第一線でやる気が無くなったのかなと思われてしまう。

それになかなか保育園に入れないなどの問題があって、やっぱり子供を産んだ後に選手を続けるのは難しい現状があると思うんです」。

森薗が抱える悩みは、卓球選手に限ったものではない。他競技の女性アスリートに加え、一般のキャリアウーマンにもあてはまる日本社会の大きな課題だ。

一方、Tリーグで海外選手との交流を通じて見えたヒントもあった。

写真:森薗美咲/撮影:ラリーズ編集部

「海外は進んでいますよ。(TOP名古屋で)チームメイトのハン・インさんは、Tリーグに来る時は子供を預けて来日してきてます。向こうでは子供を預けるのが当たり前だし、結婚後でも卓球で海外に出稼ぎに行く感覚が当たり前なんですよね。いろんな選択肢があるのがいい。今の日本女子の卓球は本当にレベルが高い。結婚して出産した後に戻ってきて活躍できるのかという不安があって、そういういわゆる女性としての幸せの部分はどうしても引退後にと考えてしまう。今、日本のスポーツはどの競技も強いので、女性アスリートはみんなそうなのかなと。プロだけでなくアマチュア選手も含めると相当多くの人が同じ悩みを抱えていると思いますよ」。

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トップアスリートならではの支援構想

森薗は、今は競技に集中しつつも、将来この問題を自ら解決したいと考えているという。

「純粋に女性アスリートの選択肢を増やしたい。今は結婚や出産をしたら引退するのが当たり前ですが、その後もプレーしたいけど出来ないという人も沢山いると思うんです。現実的にスポーツ選手でなくても保育園には入りにくいし、入れたとしても遠征や週末の試合も多いスポーツ選手に理解がある施設は少ない。

なので、アスリートが子供を預けられるような施設を将来作りたいという思いがあります。これまで卓球しかしてこなかったからこそ、困っているスポーツ選手のために何かスタートできるといいと思っています」。

森薗が抱える問題意識は、卓球という競技の枠や、プロかアマかという垣根を超えた普遍性を持つ。森薗は、「もう一度日の丸を」という選手としての目標に加え、女性アスリートを代表する存在として、新たな大きな目標に立ち向かっていく。

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