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公開日 2019.09.28

「地域密着のTリーグへ」 名将が見据える未来と課題<日本生命・村上総監督#2>

村上恭和総監督(日本生命レッドエルフ)

写真:村上恭和総監督(日本生命レッドエルフ)/撮影:ラリーズ編集部

今年3月のTリーグプレーオフファイナルで勝利し、初代優勝監督となった村上恭和氏(日本生命レッドエルフ)。

オリンピックでは女子代表監督として2012年のロンドン、2016年のリオデジャネイロと2大会連続で日本チームを団体戦メダル獲得に導いた。そんな名将の目に、第2シーズンを迎えたTリーグはどのように映っているのだろうか。今の胸の内を聞いた。

リオ五輪で女子チームを率いた村上監督
写真:リオ五輪で女子チームを率いた村上監督(写真左)/撮影:ロイター/アフロ

>>“3000人のTリーグ開幕戦”で思うコト<日本生命・村上総監督#1>

Tリーグの未来と課題

――2期目を迎えたTリーグの発展、定着への課題は?
村上:
Tリーグの立ち上げは、急ピッチで進めたので課題が多い。これから色々と整備されるだろうけど。

今感じるのは各チームのメンバーが試合会場にだけ集まってきている。これは理想とは全然違うと思いますね。興行にはなるけど強化にはならない。

うち(日本生命レッドエルフ)は雇用契約してるコーチ陣が6〜7人いて、いつも一緒に過ごしている。

他のチームは試合のときだけ来る。つまり助っ人コーチ、助っ人監督でしょ?僕らは1年を通してのコーチ、1年を通しての監督だから。環境から違いますよね。

日本生命ベンチ
写真:一緒に過ごす時間も長く雰囲気も良い日本生命ベンチ/撮影:ラリーズ編集部

――女子開幕戦は日本生命と木下グループの社員・関係者が多く、企業スポーツ、実業団に近い雰囲気で盛り上がっていました。日本のスポーツシーンには欧州のクラブチーム文化よりも企業文化、実業団文化の方が合うという見方もあります。
村上:
Tリーグはまだ創成期ですから、この立ち上げ方しかない。

でもそのうち、プロ野球やバスケのように「あの選手が好き」「あのチームが好き」と地域のファンが応援するようになる。もっと報道がされ認知が広がれば、地元のファン、チームのファンが増えてくる。

集客面でも企業による全面バックアップから、これから徐々に一般ファンが付いてくるようになると思います。でもどうしても時間がかかります。

――徐々に企業スポーツからプロスポーツ、地域密着型にシフトしていくということですね。Tリーグの理念の1つとして下部組織を作ってジュニア育成をすることも義務付けられています。
村上:
教員の負担もあり、今後スポーツは中学校の部活中心ではなくなると思うんですね。特に卓球は今でもそうなんですけど、ますますそうなってくる。それもあって日本生命は先駆けてジュニアもやってるんです。

でも、日本生命が直接お金出しているわけではなくて、地域みんなでやってます。そういう意味では、誰かが町で音頭をとってスポーツ少年団のような組織を作れば、強くしていけるんじゃないでしょうかね。

僕の調べたところ、卓球場は日本全国に約2,000ヵ所あるんですね。ほとんどの選手はそこで育っている。ホカバ(小学生以下。ホープス、カブ、バンビの略)で言うと、90%以上はそういった卓球場から選手が育っている。

これからTリーグが地域に根差していって、うまくタイアップしていけば、地域一体となったTリーグができるのではと思ってます。

村上恭和総監督(日本生命レッドエルフ)
写真:村上恭和総監督(日本生命レッドエルフ)/撮影:ラリーズ編集部

――そこで子供たちがプロの選手に時々指導してもらえたりもする?
村上:
うちは既に貝塚の体育館で一緒にやってます。

今朝もTリーグに出る選手が練習している横で、中学生も小学生も一緒になって、ズラーっと練習してました。すごいですよ(笑)。

>>早田ひな Tリーグ初のMVP 卓球三昧の18歳は「楽しさを忘れない」

Tリーグの中長期構想「企業からの投資が鍵」

――村上監督はチームを率いながらもTリーグ全体、日本の卓球全体の発展を見据えていらっしゃいます。今後の構想についてお聞かせ下さい。
村上:
Tリーグは2年目ですから、他のチームが真似できないところもまだたくさんある。でも、ちゃんと練習場を持ってコーチも置いて、選手を練習させながら強化するTリーグのチームが増えてほしい。このままだと興業の延長になってしまい、なかなか強化に結びつかない。

やっぱりチームのオーナーがもう少し投資する必要がある。

例えば、サッカーのように数十億規模の金額がチームに投資されると、チームは選手の育成や練習環境の整備に投資をまわすことができる。そうすることで、試合観戦の興業だけじゃない、選手の育成や地域貢献が出来るチームが出来てくる。その結果、お客さんも価値の高い選手を見ようと試合会場に集まってくると思いますよ。

――企業が卓球に関心を持ち、投資が行われる時代になっているのでしょうか?
村上:
今でも卓球の女子チームをやりたいっていうところはあるんです。男子よりも多い印象です。

僕は来年女子は2チーム増えるだろうと思ってます。今のTリーグだと、チームが少なくて日本人の出る機会が少ない。だから強化につながっていない部分がある。1試合に1回でいいから出られるようにしてもよいかなと。

――チームが増えた場合の課題は?
村上:
選手層の薄さですね。そして集客面で興業として成り立つかというと難しいチームも出てくる。やっぱりスター選手の人数も増えていかないと。

だから急激にチームは増やさないほうがいい。女子はまだ参戦していない選手も多いので、6チームになってもなんとか耐えられると思ってます。

徐々に増やすのが理想ですね。4チームでスタートして2年続けて、また6チームを2年続けてという風に。外国からも日本からもそこに強い選手が結集するようになって、また増やせば良いのではないかと思います。

※取材日:8月31日

>>早田ひな「楽しい卓球」から「楽しめる自分」へ たどり着いた新たな強さ

文:川嶋弘文(ラリーズ編集部)

卓球専門WEBメディア「Rallys(ラリーズ)」