文:川嶋弘文(ラリーズ編集長)
8月29日にTリーグのセカンドシーズンが開幕した。Tリーグで唯一、男女計2チームを有する木下グループを率いるのは邱建新(キュウ・ジェンシン)総監督だ。
昨季は男女ともレギュラーシーズンを1位で終え、初代王者を決めるプレーオフファイナルでも男子(木下マイスター東京)は岡山リベッツを破って優勝。女子(木下アビエル神奈川)は日本生命レッドエルフに2-3で敗れるも、優勝まであと1ゲームと肉薄した。
男女ともに厚い選手層を誇る「最強・木下軍」を今期はどう率いるのか?名将に今期の展望を聞いた。
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ファーストシーズン「男子の優勝は当たり前」
写真:邱建新(木下グループ総監督)/撮影:伊藤圭
ーーいよいよTリーグのセカンドシーズンが始まります。昨シーズンの振り返りと今期のプランをお聞かせください。まずは男子からお願いします。
邱建新監督(以下、邱):1年目のTリーグ、男子の優勝は当たり前と思っていました。
でもTリーグの特別ルールに苦しめられた。
ダブルスは2ゲーム先取。シングルスも(ゲームカウント)2-2になったら6-6からスタート。そして5番は1ゲームだけ。
岡山(リベッツ)のダブルスは、最初から強いのでいつも0-1スタートだった。
ーー確かに岡山の森薗・上田ペアはシーズン序盤からプレーオフまで本当に強かった。
邱:ダブルスを落としても実力通りシングルスで3人が勝てば良いけど、いつも3人とも勝つのは難しい。
だからダブルスを落として、シングルスも1つ落とすと(1ゲーム先取の)ビクトリーマッチになって苦戦した。
ーー女子もレギュラーシーズン18勝3敗の勝ち点60。2位の日本生命が勝ち点43ですから圧倒的な強さだったと言えます。
邱:女子がプレーオフで負けたのは本当に残念。勝負所でチャンスボールでのミスが3回あって、あと一歩。でももし(男女)両方勝ってたら、Tリーグにとっては良くなかったかも(笑)
ーー確かに木下が初年度からアベック優勝だとリーグ全体が盛り上がらないというのはあったかもしれませんね。
邱:でも来年は絶対に男女ともタイトルが欲しい(笑)男子はとにかくもう一回優勝して連覇。女子はまずプレーオフまで行く。そしたら優勝のチャンスがある。これが今シーズンの目標です。
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鍵を握る中国選手の出場
写真:邱建新(木下グループ総監督)/撮影:伊藤圭
ーー女子は昨年中国の袁(エン)選手が石川佳純選手に次ぐ勝ち星を挙げるなど、活躍が目立ちました。今年は出ないのでしょうか?
邱:袁は今年出られない、でも石川と杜凱琹(ドゥホイカン)がリーグトップクラスに強いから戦力の面で不安は無い。
それから若手の木原、長﨑も伸びている。木原は全日本2位だし、長﨑は(6月のジャパンオープンで元世界ランク1位の)朱雨玲に勝った。2人はダブルスでワールドツアーで優勝している。
それに浜本も森薗もいる。だからメンバーは悪くない。
中国選手と言えば、日本生命はダブルスが2人とも中国人だったから今年は戦力ダウン。こっちの方が大きい。
ーー男子は昨シーズン勝負所で活躍した候英超(ホウエイチョウ)選手は中国籍ですが試合に出られるのでしょうか?
邱:候は出ます。国籍は中国ですが2年前の香港オープンから所属協会をカナダに移しているから出られる。袁は中国の卓球協会に登録しているから出られないということです。
五輪前の選手強化プラン
写真:邱建新(木下グループ総監督)/撮影:伊藤圭
ーー木下グループの練習場が、母体として日本で一番レベルの高い練習場だと言われています。この地でどのようにチームを強化しているのでしょうか。
邱:Tリーグも大事だけど、今年はオリンピック前でとても大事な時期です。今は水谷と石川を中心に見ています。
それから(張本)智和は学校が終わって練習に来るのが全体練習が終わる17時半頃。木下で練習する時はお父さんと、ナショナルチーム合宿の時は倉嶋さん(男子ナショナルチーム監督)とコミュニケーションを取って、みんなで強くしている。
ーー東京五輪を控えた選手たちはTリーグにどのくらい出場する予定なのでしょうか?その出場予定次第では他のチームにチャンスが生まれますし、観客動員にも影響が出ると思います。
邱:木下は男女ともいい選手がいっぱいいるから、戦力については心配していない。例えば張本が出る時は水谷が休み。水谷が出る時は張本が休み。という感じで、毎回メンバーが違うようになると思う。
ーーつまり毎回ローテーションするけど、どの組み合わせでも強いよと(笑)しかもファンも色んな組み合わせが見られるから楽しいわけですね。
邱:昨年はシーズン前半から大量リードして、プレーオフ進出を決めに行った。でも Tリーグのルールでは結局プレーオフが重要でそこで負けたら意味が無い。
だから今年は東京五輪の代表が決まる前のシーズン前半は、若い選手を一杯使うと思う。もちろんそれでチームが負けて優勝できなかったら意味が無いので、水谷や石川や智和にも開幕前には21試合のうち何試合出たいか、いつ出たいかを聞いたうえで、モチベーションを高めたうえで使いたい。
ーーセカンドシーズンも楽しみにしています。ありがとうございました。
※取材日:6月19日