文:武田鼎(ラリーズ編集部)
昨年3位に終わったT.T彩たま。今年も継続してチームを率いる坂本竜介監督は大胆な一手を打ってきた。チームのメンバーをガラリと入れ替えてきたのだ。
中でも注目の3選手が新顔として加わった。一人は馬龍や水谷、張本などを倒し「大物食い」として注目を集めるピッチフォード(7月世界ランキング15位・イングランド)、もう一人が古豪スウェーデンの17歳の新星トルルス・モーレゴード(同90位)、そして3人目が木下マイスター東京から移籍した松平健太(同55位)だ。
多様な顔ぶれが揃ったT.T彩たまは、どんな戦いぶりをするのか。まずは3選手獲得の裏側を聞いた。
>>「今年も張本、木造を倒す」 欧州の若武者は台風の目となるか<T.T彩たま・モーレゴード#1>
ピッチフォード獲得はTリーグ開幕前から動いていた
――ピッチフォードの加入は驚きました。いつ頃から交渉していたのですか?
坂本:9月ですね。去年の。Tリーグが開幕してないのに2シーズン目を見据えてました(笑)。
実は開幕の時に“欲しい!”って思った外国人選手は2人いて。それがピッチフォードとカルデラノ(同7位・ブラジル)。2選手行くのは予算的に厳しいなと(笑)。
で、ピッチフォードが開幕直前のブルガリアオープンで馬龍(同5位・中国)に勝ったんですよね。かたや対日本人になったときに、カルデラノはほとんど勝ってない。張本や水谷に競るけど勝てない。けどピッチフォードは、張本にも勝ち越しているし、(水谷)隼にも直前の世界選手権(団体)で勝ってるんですよ。これはピッチフォードを取らない手はないな、と。だけど面識がなかったので、スポンサーのタマスに一報いれて、すぐにインスタのDMですよ。
――インスタのDMで選手獲得するんですね笑
坂本:現代っ子に遅れたくないから(笑)。インスタのDMで全部やりとりをして、待ち合わせも住所のやりとりも全部インスタ。
で、会って話を聞いていくと、彼にはオファーが殺到していた。9月の時点で、10チームからオファーが来ていた。多分ロシアやドイツとかヨーロッパ系のチームなんだろうな、と。しかも一番縁がなさそうな日本までって。しかも初対面だしね…(笑)。
――どうやって口説き落としたんですか?
坂本:僕がガンガンいく図々しい性格っていうのは知られてたみたいで(笑)。今イングランドの監督がスウェーデン人なんですよ。で、僕はスウェーデンリーグに1シーズンいたんですけど、そのときの監督が今のイングランドの監督になってて。
さらに同じイングランドでピッチフォードと仲がいいドリンコールっているじゃないですか。彼がデュッセルドルフに練習しに来てた時に、毎日日本食を食べに連れて行ってたんで、ドリンコールからも「サカモトはいいやつだぞ」と言ってくれたみたいで。
――なるほど。いろいろやっておくもんですね…。卓球業界が狭いというより坂本さんの顔が広いんですかね(笑)。
坂本:どうでしょうね。すると、トントントンと話が一気に進んでいって、もう正直開幕直前の10月中にはほぼ決まってたんじゃないかな。
――それはやはりTリーグ自体の評判もあるのでしょうか?
坂本:そうですね。オリンピック前というところもあるし、Tリーグの開幕戦も映像で見てたみたいだし、選手のレベルの高さも知って、やっぱ本人もこのレベルの高いところでやってみたいと思っていたみたいです。
――ヨーロッパでのTリーグの受け止められ方は?
坂本:みんな知ってますよ。今年も1月に全日本が終わってからデンマークに行ったのですが、練習場にグロート(同26位・デンマーク)とかガチーナ(同67位・クロアチア)がいて。口々に「いつ俺をTリーグに呼んでくれんの」って。
ちょうどプリモラッツ(クロアチア出身の往年の名選手。現在50歳)もコーチでいて「俺は?」って。いやおまえはtoo oldだろ!ってやりとりしてたんだよね。
――なるほど…。モーレゴードとマツケン獲得の裏側も気になります。
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