【Tリーグ】「これはしんどい仕事だぞ…」負けたらクレーム殺到の監督業(坂本竜介#3) | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:坂本竜介監督(T.T彩たま)/撮影:保田敬介

卓球×インタビュー 【Tリーグ】「これはしんどい仕事だぞ…」負けたらクレーム殺到の監督業(坂本竜介#3)

2019.07.10

文:武田鼎(ラリーズ編集部)

3月にチームの続投を発表し、坂本竜介監督は大胆なメンバー入れ替え、チーム改革に着手している。間もなく訪れる次のシーズンに向けてどのようなチーム像を描いているのだろうか。T.T彩たまの練習場に姿を現した坂本監督、心なしかちょっと引き締まっているように見えた。

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――ファーストシーズン終わっていかがですか?ちょっと痩せて絞った印象もありますが。

坂本:多少意識的に絞ったところもありますが、やっぱりシーズン中のストレスはすごかった。毎試合終わったら、ツイッターとインスタにDMで20~30通のクレームが来る。特にオーダーのこととかね…。去年一番あったのは、「アポロニアを使わないから、来年からヨーロッパ選手誰も来なくなるぞ」みたいな。でも内心“ピッチフォードもうサインしてるぞ”みたいな(笑)。

誰でも物申せる時代で、言う方からすれば1通かもしれないけど、受け取る側は大量に届くわけだからストレスしかないよね。“これはしんどい仕事だぞ…”と思いました。まあでも自分の性格上、すぐに慣れましたね。

――さすが強心臓ですね。嬉しいメッセージはないんですか?

坂本:勝った時はたくさん来ますよ。でも負けたときはクレーム覚悟ですね。

――もしかしたらいい意味でも悪い意味でもT.T彩たまはファンとの距離近いですよね。

坂本:今回の合宿もファンが来てて、出待ちに撮影もOKですからね。昨日と一昨日も20人以上ファンがいたんじゃないかな。ありがたいことに熱狂的な人が多いんですよね。

僕はチームの監督である以上、選手を応援してもらうというよりはチームを応援してもらうというのがスタイル。プロ選手には移籍がつきもの。その選手が移籍した瞬間に、その選手のファンが全員いなくなってしまうと、チームの応援団じゃなくなってしまう。

卓球というスポーツが個のスポーツなので、どうしても個から入るのはしょうがない。けど、どう個からチームに流していくかを考えていた。

――具体的にはどのように個からチームへとファンの輪を広げていくのでしょうか?

坂本:例えば講習会とかイベントとか毎回選手を変えながらやったりね。とにかくうちのチームのメンバーと触れ合う機会を増やしていく。チームを応援してもらうスタイルじゃないと長くプロチームってできないと思っていて。例えばJリーグで槙野選手が浦和レッズにいるけど、槙野選手が移籍したからといって、レッズファンはやめないと思うんですよ。

――なるほど。今年はそのチームのメンバーも大胆に入れ替えてきましたね。

坂本:逆にこれくらいメンバーが大胆に入れ替わる可能性があるんだというのは、選手たちにも刺激になる。僕たちはプロ集団なので。選手としてそこに証を残していかないとだめ。言い方悪いかもしれないけど“商品”としても考えないといけないので。そこにはちゃんとした価値があるのかを僕らは判断していかないといけないので。

――プロとしての価値が必要だ、と。

坂本:それは勝ち負けだけじゃない。もしかしたらキャラクターだって必要かもしれない。例えばジンタク(神巧也)みたいなプロの形もあるわけです。それっていろいろなところで市場価値を生むわけですよ。そういう意味ではチームの中で、ちゃんとした位置を自分で確保していってほしいし、していかなければ平気でチェンジもあるよと。

――チームをまとめながら、競わせるのは卓球という個のスポーツだとかなり難しいのでは?

坂本:正解が何かわからないんですけど、ただ練習風景を見てもらってもわかるように、チームの雰囲気はいい。

モーレゴードという若い新顔が来てもコミュニケーションを取りながら迎え入れている。チームの団結力は高い。ただ、シングルスの椅子は3つしかない。その3つの取り合いになる。いくら普段仲良くても、でもそれがプロの世界では当たりまえのことなので。

――それはオーダーにも現れていますか?

坂本:1stシーズンでもオーダーはシビアに組んだつもり。勝った選手を使って、勝てない選手を使ってない。いい例が平野(友樹)でしょう。たぶん前評判で平野があんなに使われるとは誰も思ってない。合計シングルスダブルスで18試合、彼を使っている。

選手たちには、自分で居場所を掴んでほしい。選手たちはシビアにオーダーがこれだけ変わっている、勝った選手が使われて、勝てない選手が使われないというのを自分たちの肌で感じているはずなので。

――今回の合宿も埼玉県内です。埼玉県でやっているのは地域に根ざす、という意識があってのことですか?

坂本:そうそう。あと、実はもう練習場も作り始めるんですよ。自分が企画させてもらって。浦和美園にできる予定です。1月末完成予定なので、2月のシーズンのときから選手はずっとそこでみんな一緒に練習する予定です。

――おお、専用練習場ですね。それは楽しみです。次シーズンの目標は?

坂本:まあ優勝ですよね。でも1年やってきて、外部の反響がガラっと変わっているのは感じています。僕自身も知られるようになったので、スポンサー営業もしやすくて。

もちろん強いチームと人気があるチームは違う。強い選手と人気がある選手も違うように。でも僕らが目指すのは、強くて人気があるチームであり選手。そういう意味では、すべてをやっていかなければならないので。やることは山積みです。とは言え、まだシーズン2ですから。とりあえず、期待しててください。

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