「試合のない今、大切な二つのこと」【私のホカバ時代・平野早矢香】(第3話/全5話) | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:平野早矢香氏/撮影:田口沙織

卓球インタビュー 「試合のない今、大切な二つのこと」【私のホカバ時代・平野早矢香】(第3話/全5話)

2020.08.15

この記事を書いた人
1979年生まれ。2020年からRallys/2024年7月から執行役員メディア事業本部長
2023年-金沢ポート取締役兼任/軽い小咄から深堀りインタビューまで、劇場体験のようなコンテンツを。
戦型:右シェーク裏裏

「先の試合の見えない現在、選手にとって大切なことは」
そう質問すると、平野早矢香氏は今、そのことを考え続けているのだろう、その答えは熱を帯びていた。

平野早矢香氏に聞く全5回連載の第3回目は、自身の現役時代の経験から導いた、平野氏らしい誠実なアドバイスをお届けする。

>>「ホカバのライバルは今日の友」【私のホカバ時代・平野早矢香】(第2話/全5話)

「今だったら一回戦負けです(笑)」

――今のホカバ世代の卓球については、どう見ていますか
平野
:まず、単純に私の頃とはレベルが違います。当時はどちらかというと、ミスをしない小学生の卓球っていう感じでしたけど、今の小学生の大会を見ていると、ドライブをしっかりかけることができる。

私たちの頃はドライブをかけること自体があまりなくて、ツッツキとスマッシュ中心の時代だったので、やっぱり卓球が大きく変わったなと。

今はみんな、小学生のときからトップ選手の試合を観ているので、こう、台を拭くような仕草だったり、プレーも大人顔負けのものもあったり。

――レベルが高いですよね
平野
:小学生の意識も変わってきたっていう感じがしますね。注目度が高まっていることもありますし、それこそ県の代表が決まった段階でお米頂いたりとかするので、羨ましいなと(笑)


写真:全農杯 2019年全日本卓球選手権大会(ホープス・カブ・バンビの部)表彰式の様子/提供:全農

注目度が上がり、競争率も激しくなってレベルも上がって、すごいなあっていう部分と、やっぱり当時よりも環境が良くて羨ましいなあっていう部分がありますね。

――もし小学生当時の平野さんが、今の全日本ホカバに出たら
平野
:いや、一回戦負けですよ(笑)。予選勝ち上がれるかなあっていうくらい。卓球の技術は、時代と共に進化していくので比較が難しいんですけど、当時と比べて明らかに注目度が違うので、本人の意識が全く違いますよね。


写真:平野早矢香氏/撮影:田口沙織

かつてはチーム単位だった

――他に、当時と今の違いを感じる部分はありますか
平野
:うーん、私たちの頃は、チーム単位で動くことが多かったんですよね。学校やクラブでも、チームでっていう意識だった。

今は、個人が意識を高く持って練習できる環境がある。今の子たちは小学生から、インタビューでも自分はオリンピックで金メダルとか、日本一になります、何々世界選手権に出ますっていうふうに堂々と話していて、個人としても高い意識を持ってますよね。

私なんかは、もともと日本一を獲れる選手ではなかったので、学生時代からずっとチームという場所で自然と勉強させてもらって、強くなれた。

あのチームに勝つためにこのチームとしてこれをやる、そこに自分一人じゃ出てこないパワーが出てくるっていうところがありました。だからこそ、世界卓球にしても、個人戦よりもチーム戦のほうがいい結果が残せたんだなって自分でも思います。

大切なことは二つ


写真:平野早矢香氏/撮影:田口沙織

――今、先の試合の見えない状況で、練習を続けていくために必要なことは何だと思いますか
平野
:小学生に限らずですが、大切なことは二つあると思っています。

一つは、結果が出るから楽しくなって、自分がもっと強くなりたい、もっと練習したいって思う気持ち。これが本来一番重要です。

私が、なんで卓球が好きだったのかって思ったときに、もちろん友達がたくさんできてっていう部分もあるんですけど、身長もパワーも普通で、普通の家庭に生まれて普通のクラブでやってきた私が、すごい環境で練習している子とか、体力的にもすごくいい条件の子にも勝てた。

そこには、卓球が頭脳スポーツっていう面がある。だから、そういう人にも勝つことができた。そこに面白さがあったっていうのが一つ。

できないことができるようになる嬉しさ


写真:平野早矢香氏/撮影:田口沙織

もう一つは、単純に、自分ができないことができるようになるっていうことが、私はすごく楽しかったんです。

練習の中で、いままでチキータができなかった、これだけ練習してもできないできないって言ってたけど、パッとひらめいたかのようにできる瞬間があって、それはすごく嬉しかった。

それが現役の時は卓球だったんですけど、今の生活にも繋がっていて、できないことができるようになる、前よりも何かしらうまくなる、それはすごく楽しくて

ここがある選手は、いま試合が見えなくても、練習のなかで、楽しみを見出したり目標設定ができたりして、難しい今の状況でも前向きに取り組めるのかなって思います。


写真:平野早矢香氏/撮影:田口沙織

周りのサポートも大事です。前できないことができたってことは褒めてあげるべきだと思うし、そういう日頃の練習でのモチベーション、目指すところを作ってあげることは大事かなと思います。

――今までは目指すところが試合だった
平野
:この試合までにこれをやるっていうのは、言ってみれば、単純作業なんです。

次、一か月後のこの試合までにバックハンドこういうふうに打てるようになる。この選手に勝てるようにやりました。できたできない。じゃあ次。ってなるんですけど、この試合自体が今ないので、じゃあどうするか。

例えば、一週間後までにこの技術を何本入るようにする、こういうコースに打てるようになるとか、試合じゃない設定をしていくこと。

やっぱり人って誰でも、できないことができるようになるって嬉しいはずだし、やりがいって感じるはずなので、それが今、大事なんだと思います。

比較すると、みじめになった


写真:平野早矢香氏/撮影:田口沙織

――平野さん自身も幼い頃からそういう思いでやってきた
平野
:もちろんライバルに勝ちたいっていう思いもありました。でも、私の場合はライバルがみんなすごすぎた

愛ちゃん、佳純ちゃんもそうですけど、さなえ(杉田早苗)ちゃんにしたって、もう、才能あふれてセンスがバリバリあって、私がいくら頑張って練習しても敵わないんじゃないかって思うような子たちだったので。

だからこの子に勝ちたいっていう意識は常に持っているんですけど、でも、この子と比較するっていうのは、苦しくなっちゃう。みじめになるんですよ。何で私こんなにできないのって。

だからやっぱり、昨日よりも少しでも成長すること。昨日の自分はできなかったけど今日はできるようになったよねっていう、ここを考えることで、前向きになれる。

自分の置かれた状況や環境がそうだったからっていうのはありますよね。むしろそう思わないとやっていけなかった。


写真:ロンドン五輪卓球女子団体銀メダルの石川佳純、福原愛、平野早矢香/提供:YUTAKA/アフロスポーツ

<「選手は五輪に命懸け。今の私はコメントが毎回勝負」【平野早矢香に聞く】(第4話/全5話) に続く>

「卓球ジャパン!」放送概要


写真:武井壮(写真左)と平野早矢香(写真中央)とゲストの松平賢二(写真右)/提供:BSテレ東

放送局

BSテレ東

日時

毎週土曜夜10時
8月15日(土) は松平賢二が登場!

出演者

武井壮
平野早矢香
竹崎由佳(テレビ東京アナウンサー)
<8月15日(土) ゲスト>
松平賢二

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