今、平野早矢香に、東京五輪について聞きたい。
ロンドン五輪で日本女子卓球界初の五輪銀メダルを獲得、日本中に卓球フィーバーを巻き起こした。
そして自身はリオ五輪代表に入れなかったことを契機に、現役引退を決めた。
五輪への思いは人一倍強いはずの平野氏は今、延期された東京五輪、そして代表選手たちにどんな思いを馳せているのだろう。
>>「試合のない今、大切な二つのこと」【私のホカバ時代・平野早矢香】(第3話/全5話)
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大会はオリンピックだけではない、でも。
――東京五輪が延期になり、今の代表選手には声をかけるとすれば。
平野:私には同じシチュエーションがなかったので、軽々しく声をかけられないなとは思います。
ただ、選手が今できることって、やっぱり目の前にある練習環境で自分を高めていくことしかない。
今回の延期は誰にもコントロールできないこと。選手が何かコントロールできることがあれば、やったらいいと思うんです。
でも、今回はそうではない。今は、自分ができる目の前の練習だったり、試合が決まればその試合に向けて強化していくしかないと思います。
写真:平野早矢香氏/撮影:田口沙織
この時間で選手は大きな差がつく
――自分がコントロールできることに集中していくということですか
平野:試合から逆算して強化や調整がしにくいので本当に大変だと思います。試合があるかないか分からない。或いは予定されていた試合がなくなってしまうということが続いていますからね。
ただ、すごく難しいんですけど、私は、弟(平野友樹選手)にも言ってることは、この時間で選手は大きな差がつく。メンタル的にも、技術的にも。
もちろん練習できない環境の人もいると思いますが、でも、その中でもできることはある。だから、この時間が、何もなかったかのように次スタートじゃなくて、この時間でできることに、どんな気持ちでどういう風に取り組んだかって、私はすごい重要だと思っています。
写真:平野早矢香氏/撮影:田口沙織
苦しくて不安な時期に人は成長する
――現役時代、近い状況はありましたか
平野:こういう形ではないです。ただ、私は15歳まで一回も、個人で日本一のタイトルを獲れませんでした。
振り返って、もっと早く優勝できたらよかったなとは思いますけど、でも、苦しいな、うまくいかないな、自分ではできないかも、って思う時期にこそ、人って大きく成長したり、学ぶことが多いと思うんです。
だから、いま引退してからも、仕事も含めて何かに取り組むときって、そんな簡単にうまくいかない。でもそれが普通、当たり前。
日本一になるまで10年かかったんだから
写真:平野早矢香氏/撮影:田口沙織
私、5歳で卓球始めたので10年、日本一になるまで10年かかってるから。でも、一つのことを成し遂げるときって、もちろんパッとできる人もいるかもしれないけど、時間がかかることもあるよねって思ってます。
選手にとってすごく苦しい、思いをどこにぶつけていいかわからないこの状況で、でも、ここで自分が感じたこと、学んだことって、例えば次の試合の結果に繋がるかもしれない。もしも現役の時の結果に繋がらなくても、引退後に繋がるかもしれない。
自分でなんとか奮い立たせて、できることと向き合うっていうことしかないのかなって思います。
しんどいでしょうけどね。
写真:平野早矢香氏/撮影:田口沙織
選手は五輪に命を懸けている
私も、五輪に人生を懸けていた人なので。それが延期になりましたとか、なくなるかもしれないとか、軽々しく言ってもらいたくはないですね。
とはいえ今の現状は世界中が緊急事態ですからね。そんな中でも今回の代表の6人は、その辺りをしっかり受け止めて自分の中で消化して、できているように思います。やっぱり一流選手だと思いますね。
写真:ロンドン五輪卓球女子団体銀メダルの石川佳純、福原愛、平野早矢香/提供:YUTAKA/アフロスポーツ
――現在の平野さん自身にとっては、東京五輪はどういう存在ですか。
平野:仕事としては、オリンピックに何らかの形で携わりたいっていう気持ちがあります。ただそれは、引退してすぐ出た目標ではなくて、やっていくなかで五輪に関しても、伝える側の役割が大事だと感じたんです。
五輪って、ただ単にみんなが注目する大きなイベントっていう感覚ではなくて、私たちはそこに命を懸けてるんだと。そういう選手たちの思いを、伝える側が汲み取って、しっかり伝えた上でその試合を見てもらえば、見る人の心はもっと動くと思います。
世界卓球だって
写真:世界卓球2019表彰式での早田ひな(写真左)、伊藤美誠(写真右)/撮影:なかしまだいすけ/アフロ
――人生を懸けている選手たちの思いを汲み取る
平野:それは五輪だけでなく、世界卓球にしてもそうなんです。
世界卓球って卓球界では世界一決定戦だけど、五輪に比べたらちっちゃいじゃないって思う人もいるかもしれない。
でも卓球界のなかでは、もしかしたら五輪よりもレベル高いかもしれないし、今、そこでも金メダル取る可能性がすごく高まってるんだよっていうことを、選手たちの思いと共に伝えたいっていう思いがあります。
写真:平野早矢香氏/撮影:田口沙織
だから、今の私で言えば、大きな目標でいうと五輪に関わる仕事ですけど、でも一つ一つの「卓球ジャパン!」の収録もそうだし、コメントを求められたときも毎回が勝負だと思ってるんで、だから一回でも間違ってはいけないっていうか、その緊張感と、自分にできる限りの準備はしておこう、そう思っています。
<「世界卓球は8:2、卓球ジャパン!は3:7」とは?【平野早矢香に聞く】(第5話/全5話) に続く>
「卓球ジャパン!」放送概要
写真:「卓球ジャパン!」写真右端はゲストの松平志穂/提供:BSテレ東
放送局
BSテレ東
日時
毎週土曜夜10時
8月22日(土) は松平志穂が登場!
出演者
武井壮
平野早矢香
福田典子(テレビ東京アナウンサー)
竹﨑由佳(テレビ東京アナウンサー)
<8/22(土)ゲスト>
松平志穂
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