スポーツ界注目の"副業×テレワーク" 60代がSlackデビュー,オンライン飲み会も… | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

卓球トピック スポーツ界注目の“副業×テレワーク” 60代がSlackデビュー,オンライン飲み会も…

2020.04.28 取材・文:川嶋弘文(ラリーズ編集部)

2019年秋にスタートした日本卓球協会(JTTA)の新プロジェクトに、スポーツ界から注目が集まっている。

全国の卓球経験者から、ITに強い副業人材を募集。集まった人材を各都道府県の卓球協会とマッチングさせることで、若手人材の確保とIT導入を進める計画「ふるさと支援プロジェクト」を発表したのだ。

人材募集を開始したその日から事務局には問い合わせが殺到。約180名を超える応募が集まった。厳しい選考プロセスを経て、最終的には外資系IT企業で活躍するシステムエンジニアや広告代理店勤務のマーケティングプランナーや、子育て中の専業主婦ら、多様な経歴を持つ5名の採用が決定した。

全ての業務をオンラインで行う所謂「フルリモートワーク」で行われたプロジェクトは、「働き方改革」や「女性の社会進出」といった観点でも、今後のスポーツ組織のあり方に影響を及ぼす先端事例となり得る。

こうしてスポーツ業界では異例とも言える、中央競技団体(NF)が民間企業を活用しての「副業リモート人材」マッチングプロジェクトが動き出した。

ボランティアの限界。持続可能な組織への転換が急務

これまで日本では、地域スポーツを熱心な愛好家が支えてきた長い歴史がある。全国各地で行われるスポーツ大会やイベントは、その競技を愛する人々がボランティアで運営を担当し続けてきた。そんなスポーツの現場を支え続けてきた人々も各地で高齢化が進んできている現状がある。


提供:福井県卓球協会

卓球も例外ではない。全国各地で毎月行われる卓球大会の運営を担うのが、各都道府県に位置する地方協会・連盟だ。多くの都道府県協会にとって、年間数万人単位での加盟者の管理や、大会エントリー受付から大会プログラムの作成、会場確保、大会当日の運営に至るまで、ボランティアやお小遣い程度の日当で行うには酷なほどその業務量は膨大だ。またITに強い若手人材が不足していることもあり、未だFAXや郵送での手続きが多いなどの事情もある。永続的な卓球の普及のためにも、地方協会の運営継続のための人材確保は喫緊の課題となっている。

そんな現状を打破しようと立ち上がったのが日本卓球協会だ。スポーツ庁が公募する2019年度スポーツ産業の成長促進事業「スポーツ団体経営力強化推進事業」にエントリー。事務局には、卓球業界を知り尽くし、ITにも明るい民間企業の株式会社スヴェンソンスポーツマーケティングを選定した。

こうして地方の卓球協会の抱える課題をサポートする人材を全国から募集したのだ。


星野一朗氏(日本卓球協会専務理事・Tリーグ理事)。写真:森田直樹/アフロスポーツ

プロジェクト責任者は星野一朗氏(日本卓球協会専務理事・Tリーグ理事)が担当した。「これまで全国各地の都道府県協会と一緒になって大規模な大会を主催させて頂いてきました。そんな全国の卓球関係の功労者の皆さんも割と高齢化していっているということを実感しています。また、卓球を取り巻く環境も変わり、協会の業務量も増えてきているのでITを活用した効率化を急ぐ必要性については前から声が挙がっていたんですね。そんな背景からスポーツ庁の事業へ応募しました。昨年6月の理事会で意向を確認をし、初年度は5つの地方協会に対する支援を行うことになりました」。

地元じゃなくても大丈夫 卓球愛に出身地は関係無かった

支援対象となったのは自ら手を挙げた宮城、福島、栃木、福井、京都の5府県だった。当初構想では、この5府県またはその隣接府県の出身者が地元に貢献する形を計画していたが、応募人材のあまりの熱量の高さから、方針転換を決めたという。

「元々は地元愛が強い人が集まるだろうと思っていました。ところが応募頂いた方は“地元愛”以上に“卓球愛”が強いことがすぐにわかりました。しかもリモートでの実施となることもあり、出身地とは関係なく、チーム制で担当を割り振ることになりました」。(星野氏)

エンジニア、コンサル営業から元卓球全国3位の専業主婦まで

リモートワークのみ、しかも副業という制約の中で成果を挙げられる人は一握りだ。コミュニケーション能力の高さ、IT技術力などのスキルセットに加え、卓球の普及に貢献したいという熱量の高い人材がプロジェクトメンバーに採用された。


システムエンジニアの渡辺和貴さん

都内のIT企業でWEBサービスの開発を担当する渡辺和貴さん(34)は「同じ卓球チームの友人から今回の人材募集についてLINEで教えてもらった次の瞬間には、脊髄反射で応募していましたね」と当時のことを振り返る。埼玉県の中学高校で卓球部に所属していた渡辺さんは、社会人になった現在でも卓球を趣味で続けている。エンジニアやデザイナーを集めた卓球チームを結成し、時折試合にも出場するという。「IT系企業で副業も出来る環境だったし、好きな卓球の仕事に携われるというのは夢みたいな話。ホームページを作ったりと、スキルを活かして貢献できるだろうなと思った」

実際、今年に入ってから短期間で3つのウェブサイトを立ち上げるなど、本業で培ったITスキルを発揮し、地方協会のニーズに応えていった。

兵庫県在住で外資系IT企業に営業職として勤務する村岡雅裕さん(26)も「募集記事を見てすぐに応募しましたね。具体的に何をやるのかまではイメージがつかなかったですが、卓球に貢献できるならと思って」と即座にエントリーを決めた。


外資系IT企業でコンサルテイング営業を担当する村岡雅裕さん。無類の卓球好きだ。

プロジェクトでは京都府卓球協会との窓口を担当することとなった。本業で法人向けのITインフラ導入を行う際に当たり前に行っている「クライアントの課題を分析して、ソリューションを導入してサポートする」という業務フローをここでも実践した。「ホームページのリニューアルをする時の要件調整や、今まで手打ちで行っていた会員名簿からのデータ抽出を、エクセル関数をいじってファイルを作り、使っていただけるようにしました」

福原愛さんに敗れて全国3位 専業主婦も挑戦

5名の採用者のうち唯一IT業界での勤務経験が無かったのが滋賀県在住の専業主婦、西田彩子さん(33)だ。幼稚園の年長から社会人まで全国トップレベルでプレーをしていた西田さんは、中学時代にはあの福原愛さんに敗れて全国大会で3位になった実績も持つ。


専業主婦の西田彩子さんは、現役時代に全国大会でも活躍していた

「今は専業主婦として1歳の息子の子育てを楽しんでいるんですが、子育てをしながら社会復帰をする方法を模索していました。SNSで募集を発見し、ITの知識は正直乏しいのですが、長年の卓球経験を活かすには『これしかない!』と思って応募しました」と明かす。プロジェクト内では「私だけITが分からないので、逆に地方協会の担当者に近い立場でいられたと思います。IT業界の人は説明につい横文字を使いがちなのですが、『それじゃあ地方協会の人には伝わらないよ』と言ったりもしました」とITに強いチームの中で自らのポジションを確立すると、データ入力などの事務作業を積極的に巻き取っていき、プロジェクトに欠かせない存在となった。


事務局として戦略立案をした駒井亮さん(株式会社スヴェンソンスポーツマーケティング)

JTTAから再委託を受け、事務局のトップとしてプロジェクト全体を計画した駒井亮さん(株式会社スヴェンソンスポーツマーケティング取締役、株式会社タクティブ代表取締役CEO。肩書は5/1付)は、プロジェクト発足当初から副業人材の熱量の高さを感じていたという。

「出身スポーツへの愛情なのでしょうか。本業もある中で時間をやりくりし、地方協会のニーズに寄り添うことを徹底して実施いただけました」。

懸念していたオンラインでのコミュニケーションについても、プロジェクト開始から1ヶ月ほどでスムーズに進むようになっていった。

60代からのSlack導入 オンライン飲み会も

事務局のマネージャーとしてプロジェクトを統括した榎本知史さん(株式会社スヴェンソンスポーツマーケティング)が、コミュニケーション手段として選択したのはチャットツールのSlackとテレビ会議の併用だ。

「JTTAも地方協会の皆さんも60代以上の方がほとんど。一方の副業メンバーは30歳前後。協会の皆さんが操作に慣れるのに1ヶ月ぐらいはかかりましたが、小さい成功体験を積み重ねるうちに自信がついていったように見えました。新型コロナでオンライン飲み会が流行っていますが、既に昨年12月にはオンライン飲み会で親睦を深めていましたね。ITのリテラシーもメンバー間の結束も高まっていきました」。


マネージャーとしてプロジェクトを統括した榎本知史さん(株式会社スヴェンソンスポーツマーケティング)

今回副業メンバーから直接サポートを受けた今村邦昭氏(福井県卓球協会理事長)は「Slackもテレビ会議も初めは不安がありました。でもメンバーの方から『LINEと同じですよ』と言われて一気にハードルが下がりましたね。普段からLINEは使っていますからね」。


今村邦昭氏(福井県卓球協会理事長)

オンライン会議の導入も積極的に行った。

「世代なんでしょうか。やっぱり顔が見える方が安心なんですよね。それから画面共有をよくして頂いたおかげで、隣で教えてもらっているような感覚でしたよ」。(福井県協会・今村氏)

はじめは疑心暗鬼だったツール導入も「LINEと同じようにSlackが使えた」「5分間のテレビ会議が無事にできた」とコツコツ積み上げていった小さな成功体験の連続が、地方協会のIT活用を徐々に進めていった。

一般企業の当たり前が卓球業界の当たり前に

また「ドキュメント化」もプロジェクト推進のキーワードとなった。

「毎回、Slack上で打ち合わせが終わるたびにすぐに議事録が共有されました。次のアクションがそこから始まるので言いっぱなしにならない。一般企業の当たり前が卓球業界の当たり前になった瞬間だった」と話すのは松尾史朗氏(日本卓球協会常務理事、医師)だ。


松尾史朗氏(日本卓球協会常務理事、医師)

地方協会にとってもこの体験は新鮮だった。「企業人のベースになっているのが、いかに効率よく業務を回すか、収益をどう上げるかという視点でしたね。非常に勉強になりました。」(福井県協会・今村氏)

一方で、これまで地域の卓球シーンをプライドと愛着をもって支えてきた身からすると、JTTAから顔なじみではない新しい人材が送り込まれてくるという点に関し、抵抗感は無かったのだろうか。

「はじめは警戒している協会スタッフもいたと思いますよ。でも何度もコミュニケーションを取るうちに、卓球に貢献したいという熱意は伝わってきますよね。本業がありながらあそこまで責任を持ってやっていただけるのですから。ホームページは今まで個人に委託していたのですが、個人への負担の軽減に加え、客観性や新しいノウハウを取り入れるという観点からも外部人材を入れるのはやるべきだと思っていました。スマートフォンでも見やすくなったし、手を挙げて本当によかった」(福井県協会・今村氏)

スポーツ庁も先端事例として横展開を検討

スポーツ庁の担当者としてプロジェクトを見守った忰田康征氏(スポーツ庁 参事官(民間スポーツ担当)付 参事官補佐)は「出身スポーツへのパッションがある副業人材を活用するというテーマがよかった。可能な限り他の競技への横展開もできたら」と今後を見据える。


忰田康征氏(スポーツ庁 参事官(民間スポーツ担当)付 参事官補佐)

さらに「NFは全体のビジョンを書く、それを地方協会で実行する。実行のサポートをNFがするという理想の役割分担ができているように見えた。このまま進めていき、いずれは卓球協会でIT人材を採用できるようになると理想的」と総括した。

プロジェクトは始まったばかり

3月末で初年度の区切りを迎えたプロジェクト関係者は次々と将来への明確な課題を口にする。

福井県協会の今村氏が「これまではボランティアに甘え、本来必要な経費や日当もカバーできていない部分もあった。ホームページで協賛を募るなど収益化にも挑戦したい。また色んな事業の可能性を探るうえで他の都道府県協会とも積極的に情報交換をしたい。またコロナが落ち着いたら、福井国体の際に出来た新体育館の有効利用や、オープン大会の新設にもチャレンジしたい」と話せば、初年度にホームページ制作を担当した渡辺さんは「引き続きプロジェクトには残るつもり。他の都道府県協会でも運用頂けるようにマニュアル化を進めたい」と意気込む。

JTTAの星野専務理事は「今回先行してスタートした5協会については引き続き支援を継続し、新年度ではできるだけ多くの協会に横展開したい」とコメントした。

また、今回の地方協会での取り組みはNFにも影響を与えたという。

「JTTAも事業規模が拡大しています。強化の方では年間70を超える海外遠征を行うなど、随時業務が発生するのでその都度対応するので精一杯の状態。今回、民間企業の働き方を体験し、業務プロセスの効率化のヒントを得ることが出来たので今後活かしていきたい」(JTTA、星野専務理事)

早速今年3月に実施されたJTTAの理事会は、オンライン併用とし、約30人の参加者のうち大半の27人がテレビ会議で遠隔から参加したという。

法人化による自立へ

各都道府県の卓球協会・連盟には「加盟登録費」「大会参加料収入」「スポンサー収入」「補助金助成金収入」と大きく4つの収入源がある。特に4つ目の自治体から助成金を受け取るには、法人化が必須だが、現在は東京や大阪など限られた地方協会のみが法人化(一般社団法人、NPO法人)をしており、多くは任意団体として活動しているのが現状だ。

これまで全国各地で受け継がれてきた卓球普及の文化を次世代に引き継ぎ、永続させるためにはまだまだ課題は山積みだ。

それでもスポーツ愛、卓球愛にあふれた人たちによってはじまったばかりの「ふるさと支援プロジェクト」が大きな一歩を踏み出したことは間違いない。

スヴェンソンスポーツマーケティングへのお問合せ

卓球の普及・マーケティングを目的に、インターネットやテクノロジーを活用した卓球愛好家向けのシステム構築、商業施設内の卓球場、卓球をコンセプトにした飲食店など、多角的にスポーツ関連事業を展開している。自社事業で培ったノウハウを活かし、中央競技団体やスポーツ関連事業者に対してデジタル化のコンサルティングもおこなう。

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2020年度のプロジェクトメンバー募集のご案内

2020年度も若干名、プロジェクトメンバーを募集しております。参加希望の方は下記フォームよりエントリーください。

【募集組織】
・公益財団法人 日本卓球協会 ふるさと支援プロジェクト

※募集主体は委託先の株式会社スヴェンソンスポーツマーケティングになります。

【募集職種】
・エンジニア
・デザイナー
・ディレクター
・マーケティング/広報

【契約形態】
・業務委託契約(副業歓迎)

【応募資格】
・一般企業、団体での勤務経験のある方
・テレワークが可能なITリテラシーを有する方
・自ら積極的にコミュニケーションを取って、能動的にプロジェクトを推進出来る方

【勤務地・勤務形態】
・原則としてテレワーク
・週1〜2回程度が目安

【給与・待遇】
・経験、能力により決定

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