写真:講演後、囲み取材を受ける亀澤理穂(住友電設)/撮影:ラリーズ編集部
卓球ニュース デフリンピック4大会連続出場“レジェンド“亀澤理穂が講演 東京2025デフリンピックへの思い「デフ選手にとっては人生を懸けた戦い」
2024.05.29
29日、卓球デフリンピック4大会連続出場、8個のメダルを持つ亀澤理穂(住友電設)が東京都議会議事堂の都民ホールで講演を行い、約340人の聴衆を前に、東京2025デフリンピックへの思いを語った。
東京2025デフリンピックは、2025年11月15日から26日までの12日間開催予定である。
写真:手話で講演を行う亀澤理穂/撮影:ラリーズ編集部
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花火の音が聞こえないことで発覚
「生後10ヶ月の頃、名前を呼んでも花火の大きい音にも反応がないことを心配した両親が病院に連れていって、耳が聞こえないことが発覚しました」
自身の生い立ちから丁寧に手話で説明する亀澤さんのストーリーに、お客さんも食い入るように聞いていた。
デフの中にもいろんなレベルがあり、電話ができる人と比べられて苦しいときもあった、でもメールで対応できますと説明して理解を得られた経験、卓球を辞めたら体重が10キロ増えて再開したこと、出産を経てママアスリートに挑戦してみると時間もお金も足りなくなったことなど、笑顔を交えながら自身のこれまでを語った。
聞こえない人は、ほとんどの情報を目から得ている。「元々2.0の視力だったんですが、子どもの言っていることを読み取ろうとして唇を凝視し続けたせいか、いまは0.4まで落ちました」と、苦しい現状も笑顔で明かした。
写真:2023年2月取材時の亀澤理穂(住友電設)/撮影:ラリーズ編集部
デフ卓球と通常の卓球の違い
亀澤は、健聴者とデフ卓球の違いについても、自身の頭にカメラを付けて撮影した動画と共に説明した。
ボールの回転や打球音で次の動作準備ができる健聴者に対して、デフは「目」と「リズム」で判断するしかなく、打球する際に首がブレる、という。結果、ボールのスピード、判断力、対応力が変わってくる、と自身の実感を語った。
写真:2023年2月取材時の亀澤理穂(住友電設)/撮影:ラリーズ編集部
デフリンピックとは
デフリンピックとは、聞こえないひとのためのオリンピックのことで、オリンピックやパラリンピック同様、夏季と冬季があり、それぞれ4年に一度開催される。
デフリンピックには3つの参加資格がある。
全日本ろうあ連盟の会員であること、聴力55db以上(裸耳状態での聴力損失が55デシベル以上)、各競技日本代表の選考基準を満たしていること。
亀澤自身の聴力は105db、飛行機やトラックの大きな音がかすかに聞こえる程度だという。
写真:当日スライドで説明した「亀澤の聞こえ方のイメージ」/撮影:ラリーズ編集部
亀澤にとってのデフリンピック
デフリンピック初出場は2009年の台北大会。団体戦で2位、個人戦で3位となった。日本代表候補から日本代表になり、初めて出場した台北デフリンピックでメダルを獲得したことで「夢は叶えられる」ことを実感したという。
そこから4年に一度、デフリンピックで多くの経験をしてきた。
2013年ブルガリアデフリンピック、女子ダブルス決勝戦で足を捻挫してしまったこと。
2021年ブラジルデフリンピックでは、戦争の始まっていたウクライナから選手が出場できたとき、ライバルだけれど嬉しくて涙したこと。
デフリンピック4大会連続出場、そのメダル獲得8個。卓球選手としての集大成が、東京2025デフリンピックだと亀澤は思っている。
写真:亀澤理穂が獲得してきたメダルの数々/撮影:ラリーズ編集部
4回出場もいまだ金メダルは獲れず
過去の海外でのデフリンピックの会場には、補聴器をつけている選手、つけていない選手がいて、本来は補聴器はつけないルールなのでそれは公平にしてほしい、と要望した。
また、リアルタイムでも試合結果を伝えてほしい、ライブ放送や生配信もあるともっと盛り上がるはずと、デフスポーツに注目してもらうための具体的な施策も提言した。
もちろん亀澤自身の悲願は、4回出場するもいまだに獲れていない金メダルだ。どの種目でもいい、金を獲りたいと強く決意している。
「デフリンピックは人生を懸けた戦い」
「デフにとっては人生を懸けた戦い。各国から参加する選手も、他の国際大会とは気持ちが違う」と、亀澤はデフリンピックの特別さを語る。
「感謝の気持ちをもって、たくさんの方々に感動を与えられるように。手話の大切さと、障害があるないにかかわらず、共に生きる共生社会の実現を目指したい」と、講演を力強い手話で締めくくり、会場は万雷の手話の拍手で応えていた。
写真:講演終了時に手話の拍手を亀澤理穂に送る参加者/撮影:ラリーズ編集部