文:石丸眼鏡
「クラウドファンディング」という言葉を耳にすることも珍しくなくなりつつある。クラウドファンディングとは、ある目的を達成するために不特定多数の人から資金を集めることを指す。
出資者に対して商品やサービスを見返り(リターン)として提供する「購入型」、出資者へのリターンが設定されていない「寄付型」などその手法は様々だが、つまりは資金を集める手段の1つである。今回はクラウドファンディングと卓球の可能性を考える。
卓球×クラウドファンディングの事例に迫る
卓球に関わるクラウドファンディングは既にいくつか実施され、成果を残している。
これまで実施された「卓球×クラウドファンディング」の事例では、以下の2つが大きな成果を挙げている。1つは東京都の「個卓-Link」、もう1つは札幌の「Ping T Studio」。いずれも卓球場のオープンを主な目的としたプロジェクトである。
個卓-Linkには目標金額1,550,000円に対し1,678,800円が集まった。Ping T Studioも目標金額600,000円に対し763,000円を集めた。
両プロジェクトともに目標を上回る金額を集めることに成功し、個卓-Linkは今夏のオープンを目指し準備中、Ping T Studioは既に営業を開始している。
価格や利用環境の面で独自の方針を掲げたことが卓球人の心に響き、支援を集めたのかもしれない。1プレーヤーとして卓球場を求めて支援した人もいれば、卓球界の更なる発展に協力しようと支援した人もいたことだろう。
スポーツ×クラウドファンディングは既に実績多数
「スポーツ×クラウドファンディング」は卓球以外でもこれまで数多く企画されている。
国内クラウドファンディングサイト最大手「CAMPFIRE」では「スポーツ」に関してこれまで200件近くのプロジェクトが掲載されている。ジムの開業、イベントの開催、アスリートの活動支援などその内容は多岐に渡る。
筆者も過去にスポーツのクラウドファンディングに支援を行なった経験がある。2012年冬に実施されたF1レーサー小林可夢偉の活動支援プロジェクトである。彼が翌年以降もF1の舞台で活動するための資金を集めるこのプロジェクトに微力ながらも協力したく、10,000円を投じた。プロジェクトは最終的に1億8000万円を超える支援を集め、小林は2014年にF1の舞台に舞い戻った。
その後、彼のレースの観戦がより楽しみになったことは言うまでもない。世界の舞台で戦うアスリートに、僅かでも自分の支援が役立っている。その感覚は特別なものだった。後日、支援者に対してオリジナルのリストバンドとメッセージカードが届けられた。
支援はいわば、そのプロジェクトのサポーターになることである。自ら資金を投じたことで当事者意識が生まれ、そのプロジェクトの動向に一喜一憂することができるのだ。
世間的にも、クラウドファンディングに対する理解が進み、そこに資金を投入することへの不信感も薄れてきたように感じる。クラウドファンディングは今後、よりメジャーな資金調達手段になっていくだろう。
卓球プロジェクトの可能性
「卓球×クラウドファンディング」も例に漏れず様々な新しいプロジェクトが誕生することが予想される。
一般の卓球プレーヤーに関わるものであれば、個卓-LinkやPing T Studioのような卓球場オープンが最もわかりやすい事例だ。それ以外にも、有名選手を招いた講習会など、個人が開催するには費用面で難易度が高いものの一定の需要が見込まれるプロジェクトは成功の可能性があるだろう。
規模の大小は問題ではない。「オリジナルの卓球用具を製造したい」という大きな夢を掲げることもできれば、選手への応援として「特大横断幕を作りたい」というようなファン目線のプロジェクトもできるはずだ。
新しい試みに必ずついてまわる資金面の課題をカバーすることができるクラウドファンディング、その可能性は無限大だ。
「卓球×クラウドファンディング」の行く末を追い、魅力的なプロジェクトが企画された際には支援への参加を検討したい。