卓球ニュース 【シリーズ/徹底分析】水谷隼vs李尚洙〜不調を乗り越えた水谷の強さに迫る〜【世界卓球2018】
2018.05.12
文:ラリーズ編集部
<世界卓球選手権(団体)2018年4月29日〜5月6日・ハルムスタッド>
世界卓球の熱戦をラリーズ独自の視点で振り返る、シリーズ・徹底分析。
今回は男子団体準々決勝、因縁の相手、韓国との対戦の第2試合を解説していく。
この第2試合、1試合目で張本智和(5月度世界ランク10位・JOCエリートアカデミー)がフルゲームの末、鄭栄植(同55位)に敗れ、韓国に流れが行きかねない状況だった。
2番を任されたのは日本のエース水谷隼(5月度世界ランク13位・木下グループ)。対するは韓国のエース・李尚洙(同8位・韓国)しかし今大会は大会前の練習で右腰あたりを痛めてしまい、なかなか思うようにいかない試合が続いていた。
その中で水谷はどう不調を跳ね除け、激戦を制したのか、その秘訣に迫る。
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世界卓球2018男子団体準々決勝第2試合:水谷隼 3-2 李尚洙
<スコア>
11-9 / 11-13 / 11-3 / 12-14 / 11-7
腰に痛みを抱える水谷を支えたのは進化を続けるバックハンド
フォアハンドは普通、腰のひねりと下半身の体重移動でボールに威力を出すため、腰に負担がかかるため、大会前に右脇腹を痛めた水谷は思い切ってフォアハンドを使うことはなかなかできていなかったように思える。
だが、水谷の持ち味であるフォアハンドを補ったのは進化を続けるバックハンドだった。
水谷のバックハンドはコンパクトな振り、かつライジング(ボールがバウンドしてすぐを打球すること、相手に余裕を与えない代わりに少しリスキー)で打球するので、相手にとって脅威だ。
数年前までの水谷は軽快なフットワークを活かして、フォアハンドを中心に戦うスタイルだったので、全面をフォアで打てるように、台の右端あたりをニュートラルポジションとして試合に臨むことが多かった。
しかし水谷はやや台の真ん中あたりに構え、ラリー中も、決め球以外はあまり回り込まず、台の真ん中あたりで勝負しているのが伺えた。
これがバックハンドが積極的に使用するようになった水谷の大きな変化だ。
第2試合1ゲーム目、持ち前のラリー力を発揮し11-9で先制した。序盤からよく声も出ており、気合は十分。しかし韓国のパワーヒッター李尚洙も全く譲らない。第2ゲーム、6-10と李尚洙にゲームポイントを握られたところから追いつくことができたものの、水谷はその強打を止め切ることができず11-13でゲームを失った。
李尚洙は水谷のフォア側にサーブを繰り出し、水谷にループドライブなど、ゆるくレシーブさせて、それをバックでカウンターするパターンで水谷の攻撃の手を封じていく戦術が功を奏した。
ゲームカウント1-1となって迎えた次のゲーム、水谷は前陣でのカウンターを見せるなど進化したプレーをいかんなく発揮。ミドルをうまく使った巧みなプレーと合わせて、3ゲーム目を11-3で圧倒した。
水谷の戦術:李尚洙のバックハンドを封じる水谷のフォアサイド前(フォア前)ストップ
続く第4ゲームでも水谷はさらに勢いづいていき、相手に攻める隙をまったく与えないままに8-0とリード。しかし、水谷も勝ちを意識してしまったか、積極的な攻撃が息を潜め、代わって李尚洙がここから思い切ってプレーで6連続得点と執念を見せた。そこから振り切ることができずにデュースまでもつれ込み、12-14で奪われた。
勝負の最終ゲーム、水谷は最後まで取っておいたかのように、李尚洙のフォア側を徹底して攻め始めた。バック側への打球は全て待たれており、李尚洙のいいようにされていたからだ。
相手のスーパープレーも飛び出したが、水谷は高い集中力を維持して攻守ともに好プレーを披露。大事なこのゲームを11-7で取得し、団体戦のスコアを1-1のイーブンに戻した。
前述の通り、水谷は、決して今大会、万全の状態ではなかったはずだ。
しかし、日本のエースとして、ピンチでギアを上げ、体を投げ打ってボールに食いつくその姿に、今まで日本を牽引してきた大黒柱としてのプライドと執念が感じられた。
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写真:千葉格/アフロ*写真は水谷隼(木下グループ)