多くの有力選手を輩出するJOCエリートアカデミーとは? <宮﨑義仁のワンランク上の卓球の裏側#3> | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:宮崎義仁(左)/撮影:アフロスポーツ

連載 多くの有力選手を輩出するJOCエリートアカデミーとは? <宮﨑義仁のワンランク上の卓球の裏側#3>

2019.03.23

以前にRallys特別インタビューにも登場いただいた「卓球界のレジェンド」宮崎義仁氏(日本卓球協会・強化本部長)の特別連載。

『世界卓球解説者が教える卓球観戦の極意』(ポプラ社)も上梓した宮﨑氏が語る、知られざる卓球の裏側。

第三回では、多くの有力選手を輩出するJOCエリートアカデミーについて語って頂いた。

エリートアカデミーについて

2001年12月に小学生のナショナルチームを結成し、多くの一流選手を輩出してきた。丹羽選手、松平選手など、今活躍している選手はほぼ全員といっていいほど、この小学生ナショナルチームで修行を積んできた。

その後、「JOCエリートアカデミー」という団体ができたのは2008年のことだ。

JOCエリートアカデミーは日本オリンピック委員会が管轄する団体だ。以前から私は、現在の味の素ナショナルトレーニングセンターのような強化育成機関の建設の検討を協会に要望していた。それがかなって、2008年にようやく施設ができ上がった。

その設立の際にJOCが3つの事業を打ち出したのだが、それがコーチアカデミー、キャリアアカデミー、そしてエリートアカデミーだ。

このエリートアカデミー事業に参加したい競技団体を募集したときに私はどこよりも先に手を挙げた(卓球男子)。

そうして卓球男子の1種目のみでスタートするかに思われたのだが、開校3~4カ月前になってレスリング男女が加わった。

そして、開講ぎりぎり2週間前に、卓球女子が滑り込んで、レスリング男女、卓球男女の2競技で、2008年4月にスタートとなった。

そこへ現在は、フェンシング、飛込、ライフル射撃、ボート、アーチェリーが加入して、7競技となっている。

JOCエリートアカデミーの選考基準

当初はエリートアカデミーへの入校基準というのは特になく、最高で19名が在籍していた。しかし、その後2012年に選考基準を決めることとした。

まずひとつは、全日本選手権大会全(ホープスの部)の日本チャンピオンになること。もうひとつは、毎年7月ないし8月に行われる東アジアホープス大会にて、ベスト4に入ること(ホープス=12歳以下の部)。

ただし、このどちらかを満たせば自動的に入校できるというわけではない。

まず、日本チャンピオンになっていないが、東アジアホープス大会でベスト4に入るというケース。これは正直なところ、なかなか考えにくい。日本でトップになれずに、中国や韓国の猛者たちがひしめく東アジアホープスでベスト4になることは、番狂わせを何度もやってのけなければ難しいだろう。なので、まずは日本チャンピオンになることは最低条件といっていい。

そして、当たり前だが日本チャンピオンになったからといって、東アジアホープスでベスト4に入れる保証はない。だいたい2年か3年にひとりが入るという感じだ。現在は、在籍しているのは男女合わせて7名だ。そして2019年春には5名となる。

JOCエリートアカデミーに入るとどうなるか?

それだけ厳しい門をくぐって入校した選手がエリートアカデミーで何をやっているのかというと、国際舞台で活躍でき、なおかつ将来スポーツ界を引っ張っていけるような人材育成、そのすべてのプログラムを受けることができる。

具体的には、まず親元から離れて、ナショナルチームの拠点ともなっている味の素ナショナルトレーニングセンターでの寄宿舎生活となる。そして義務教育なので、中学校に毎日通って授業を受ける。

卓球競技も、野球などと同様に名門の私立実力校に入れば、中学生から全寮制となり、親元を離れるのが一般的だ。現在トップクラスで活躍する選手達のなかに、中学生時代に実家で両親と暮らしながら卓球をしていたという者はほとんどいないだろう。そして、これらの全寮制の中学校では、授業が終わったら夜寝るまで卓球練習を中心にやる。それが一般的な全寮制の中学校のカリキュラムだ。

しかしJOCエリートアカデミーでは、週2回の英会話レッスン、月2回の言語技術、週2回の学習会参加、年に3回の栄養実習、さらに各地の施設見学などの、十数種類を超えるプログラムがびっしりと組まれている。

いわゆる卓球の練習時間はというと、おそらく卓球を強化している中学校の半分くらいではないだろうか。練習時間の少なさに驚かれる方も多い。しかしここにいれば卓球はいつでもできる。

また、毎月1回木曜日に「覚悟」というプログラムが行われている。スポーツ界で偉大なる成績を収めてきた方々の講演が質疑応答を含め90分行われるが、今までにロサンゼルスオリンピックの山下泰裕さん、平昌オリンピックスピードスケート金メダリストの小平奈緒選手、平昌オリンピックで2大会連続の銀メダルを獲得したスキーノルディック複合の渡部暁斗選手などが登壇された。

これだけのレジェンドを毎月呼んで話をしてもらうのは他ではまず無理だろう。そういったプログラムが、JOCエリートアカデミーでは限りなく多く行われている。

宮崎義仁プロフィール

1959年4月8日生まれ、長崎県出身。鎮西学院高校~近畿大学~和歌山銀行。現役時代に卓球日本代表として世界選手権や1988年ソウル五輪などで活躍後、ナショナルチームの男女監督、JOCエリートアカデミー総監督を歴任。ジュニア世代からの一貫指導・育成に力を注いでいる。試合のテレビ解説も行っており、分かりやすい解説が好評。公益財団法人日本卓球協会常務理事、強化本部長。卓球国際新トーナメントT2 Diamondの技術顧問も務める。

※本コンテンツは宮崎義仁氏の著書『世界卓球解説者が教える卓球観戦の極意』(ポプラ社)の一部を引用、掲載しております。

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