写真:2019年大会の丹羽孝希(スヴェンソン)/撮影:西村尚己/アフロスポーツ
大会報道 全日本見どころ・丹羽孝希編 最初の難関は元パートナーとの“天才対決”<全日本卓球2020>
2020.01.12
文:P.N 家
丹羽孝希(スヴェンソン)は、前年度の全日本の男子シングルス準々決勝で水谷隼(木下グループ)に敗れた。その水谷との選考レースを勝ち抜き、五輪シングルス代表となった丹羽の今年の全日本選手権はどうなるのか。優勝候補である丹羽のシングルスの山場を見ていきたい。
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最初の難関:vs松平健太 天才同士の戦い
写真:松平健太(写真はTリーグ)/撮影:ラリーズ編集部
丹羽の初戦となるベスト32決定戦ではかつて天才ペアと称された、元ダブルスパートナー松平健太(T.T彩たま)と対戦することが予想される。
松平は丹羽の青森山田時代の先輩でもあり、国際大会ではペアを組み2015年世界卓球蘇州大会では銅メダルを獲得している。2011年全日本男子ダブルスでは当時4連覇中であった水谷・岸川聖也ペアを下し優勝した経験もある名ダブルスとして有名である。
写真:世界卓球2015では銅メダルを獲得。松平/丹羽ペア/撮影:アフロスポーツ
昨年12月に自身のInstagramで国際大会からの引退を発表した松平。その最後の国際大会は2019年10月のドイツオープンでの丹羽との対戦だった。最後の国際大会を戦ったダブルスパートナーと全日本の舞台であいまみえることになるとは、ドラマチックな組み合わせと言えるだろう。
そのドイツオープンの試合では丹羽が4-1で勝利しているが、松平は2019年9月のTリーグでは、丹羽をフルゲームの末下している。ともに天才の名を欲しいままにし、トリッキーなプレーで会場を沸かせる2人の対戦となればファンも目が離せないだろう。
丹羽が勝ち上がった場合も強者が待ち構えている。大学生王者の及川瑞基(専修大学)や、2020年世界卓球代表権を獲得した森薗政崇(BOBSON)を始め、インターハイチャンピオンの戸上隼輔(野田学園高)、前年度男子ダブルスチャンピオン木造勇人(愛知工業大)など侮れない実力者が揃っている。
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最大の難関・準決勝:五輪代表同士の対決
写真:張本智和(木下グループ・写真はTOP12時)/撮影:ラリーズ編集部
やはりこの対戦が今大会最注目のカードと言ってよいだろう。張本智和(木下グループ)との東京五輪シングルス代表同士の対決だ。両者は勝ち上がれば準決勝でこの対決が実現する。
水谷と3名で五輪シングルス代表選考レースを争った2人だが、直近では昨年12月末のTOP12決勝では0-4、11月の男子ワールドカップ準々決勝では3-4と丹羽が敗れている。だが4月のアジアカップでは丹羽が4-2で勝利しており、2人の対戦に期待が高まる。
注目すべきポイントの1つは両者のカウンタードライブだ。両者ともにカウンターを武器としており、その精度が勝負を分けることが予想される。
これまでの試合を振り返ると、丹羽は張本のフォアサイドに台から少し出るハーフロングのサービスを出し、張本が持ち上げてきたところをカウンターで狙う展開が多い。逆に張本は丹羽に短いサーブをチキータさせてカウンターする展開に持ち込む場面が見られる。そのためには、互いにいかにフルスイングさせずにカウンターするかを考えるだろう。
丹羽が張本にチキータを狙い打たれないようにするには、レシーブの際に精度の高いストップやツッツキが必要となる。張本の強力な両ハンドの速攻をはね返すには、大きいラリーになる前の台上における緻密な仕掛けが鍵を握ることになるのではないだろうか。
写真:丹羽孝希(写真はTOP12時)/撮影:ラリーズ編集部
もう1つ丹羽の技術で注目したいポイントは、ロングサーブのタイミングである。丹羽のショートサーブをチキータで待つ張本にとって、バック深くへのロングサーブは逆を突かれる形になる。昨年4月のアジアカップで丹羽が張本に勝利した際は絶妙ともいえるタイミングでバックへのロングサーブを出している。両ハンドともに強力な張本に対してロングサーブを出すことはリスキーだが、その読み合いにこそ勝機があるとも言えるだろう。
今シーズンからTリーグ・木下マイスター東京のチームメイトとしてもチームを牽引する2人。五輪シングルス代表としてどこまで高いレベルの試合となるのだろうか。