コロナに苦しめられた卓球人生 それでも目指し続けた夢「4年間の努力が報われました」<全日本卓球2025> | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:山本将輝(上北条クラブ)/撮影:ラリーズ編集部

大会報道 コロナに苦しめられた卓球人生 それでも目指し続けた夢「4年間の努力が報われました」<全日本卓球2025>

2025.01.22

この記事を書いた人
インタビューから報道記事、選手・用具紹介記事まで幅広く担当。2019年の全日本で見た出澤杏佳選手のプレーに衝撃を受けて以降、粒高バックハンドドライブの習得に心血を注いでいる。
戦型:右シェーク裏粒

<天皇杯・皇后杯 2025年全日本卓球選手権大会(一般・ジュニアの部) 日程:2024年1月21~26日 場所:東京体育館(東京)>

各都道府県の予選を勝ち抜いてはじめて出場できる全日本選手権は、卓球人にとって特別な舞台であり、その特別な舞台で勝星を掴むことには大きな意味がある。

しかし、当然ながら全日本で勝利をあげることは簡単ではない。

鳥取県代表として自身3度目のシングルス出場を果たした山本将輝(上北条クラブ)も、過去2大会ではいずれも初戦負け。

「今度こそ、初勝利を」

そんな山本の初戦の相手は、2014年全日本社会人選手権男子シングルス準優勝、2017年全日本選手権混合ダブルス3位の実績を持つ時吉佑一(La VIES)だった。


写真:時吉佑一(La VIES)/撮影:ラリーズ編集部

苦しみ続けた4年間

県立倉吉東高校から鳥取大学に進学し、大学卒業後も鳥取県内の一般企業に勤務。学生時代から現在まで鳥取県で腕を磨いている山本は、“鳥取の星”とも呼べる存在だ。

「今回はクラブチームの名前を借りているんですけど、普段はクラブチームには所属せず、いろいろな人にお願いして練習をしてもらっています」

平日は仕事があるため、週によっては練習頻度が少なくなることもザラ。特に、新型コロナウイルスが蔓延していた時期は練習にかなり苦しんだ。


写真:山本将輝(上北条クラブ)/撮影:ラリーズ編集部

「大学4年にコロナが流行りはじめて、最後の大会も出られないまま大学生活を終えてしまいました。社会人になってからもしばらく練習できなくて、苦しかったですね」

山本が最後に全日本に出場したのが2021年。それ以降も毎年予選会には出ていたが、あと一歩のところで涙を呑んできた。

しかし、そんな山本のモチベーションとなっていたのが、明治大学で活躍する弟・山本歩の存在だった。

「弟が全国レベルで戦っている姿を見ると、『自分ももっと頑張らないと』って思えるんです」


写真:明治大学でプレーする弟の山本歩/撮影:ラリーズ編集部

そして、2024年の全日本鳥取県予選で山本は見事、予選を通過。4年ぶり3度目の全日本シングルス出場を決めた。

「4年間の努力が報われたような気がしました。ここまでいろいろな人に助けてもらってきたので、恩返しじゃないですけど、『絶対に一勝したい』と思って東京に来ました」

長年の夢である“全日本一勝”をなんとしてでも達成したい。

しかし、抽選の結果、山本の初戦の相手は時吉佑一となった。

自分の夢と恩返し


写真:時吉佑一(La VIES)/撮影:ラリーズ編集部

時吉は全日本社会人準優勝、全日本混合ダブルス3位、さらには元世界ジュニア日本代表という卓球エリート。現在はコーチ業がメインとなっているものの、その実力に疑いの余地はない。

試合でも、第1ゲームは山本が先にゲームポイントを握るも時吉に追いつかれ、激しいデュースの末に時吉が奪取。続く第2ゲームも時吉は冷静なプレーでポイントを重ねて11-8で奪取し、早々に勝利に王手をかけた。


写真:山本将輝(上北条クラブ)/撮影:ラリーズ編集部

「1ゲーム目にリードしていて逆転されたときに、かなり精神的に苦しくなりました。2ゲーム目もリードしている状況から追いつかれて取られたので、『もうダメかも』とは思っていました」

しかし、第3ゲームから山本の巻き込みサービスが効き始め、徐々にサービスからの展開で流れを引き寄せ始めた。すると、1ゲーム目、2ゲーム目で入らなかった回り込みドライブやカウンターも決まり始め、第3、第4ゲームを連取。

そして、運命の最終第5ゲーム。リードしている状況から時吉に追いつかれる苦しい展開になるも、最後は山本が11-9で取り切って、ゲームカウント3-2で勝利。3度目の挑戦で初めての“全日本一勝”を掴み取った。


写真:山本将輝(上北条クラブ)/撮影:ラリーズ編集部

「勝ったときには本当に嬉しくて、しかも全国トップレベルの選手に勝ったのは生まれて初めてで。たくさんの人に恩返しができた気がしました」

結果だけを見れば、たかが一勝である。しかし、山本にとってこの勝利は、生涯忘れられない思い出になったに違いない。


写真:松田歩真(明治大)/撮影:ラリーズ編集部

続く2回戦では、2022年の全日学で3位入賞を果たした松田歩真(明治大)と対戦。山本は1回戦の勢いそのままに得意のフォアドライブで果敢に攻めるも、松田の攻撃に上回られてストレートで敗れた。

「相手のボールの回転量がすごくて、ラリーになったときにずっと押されていました。3ゲーム目は少しずつ相手のドライブをカウンターできるようになってきたんですけど、対応するまでが遅すぎましたね」

松田は奇しくも弟の山本歩と同級生。その実力を目の当たりにして、弟が身を置いている環境がいかにすさまじいものであるかを改めて感じさせられた。

しかし、山本の全日本はまだ終わらない。

「今年は初めて男子ダブルスも予選通過できたので、来週の試合も出ます。ダブルスでもまずは1回勝てるように頑張りたいですし、これからも1回でも多く全日本の舞台で勝ちたいです」

新たな夢を見つけた“鳥取の星”は、これからも輝き続けるだろう。


写真:山本将輝(上北条クラブ)/撮影:ラリーズ編集部

全日本卓球選手権 男子シングルス1回戦

〇山本将輝(上北条クラブ)3-2 時吉佑一(La VIES)
14-16/8-11/11-9/11-7/11-9

全日本卓球選手権 男子シングルス2回戦

山本将輝(上北条クラブ)0-3 松田歩真(明治大)〇
6-11/6-11/8-11

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