17年連続出場の32歳"道産子駅員"、最後の全日本「何も後悔はありません」<全日本卓球2025> | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)
17年連続出場の32歳“道産子駅員”、最後の全日本「何も後悔はありません」<全日本卓球2025>

写真:宝利貴也/北川加純(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部

大会報道 17年連続出場の32歳“道産子駅員”、最後の全日本「何も後悔はありません」<全日本卓球2025>

2025.02.01

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インタビューから報道記事、選手・用具紹介記事まで幅広く担当。2019年の全日本で見た出澤杏佳選手のプレーに衝撃を受けて以降、粒高バックハンドドライブの習得に心血を注いでいる。
戦型:右シェーク裏粒

<全農杯 2025年全日本卓球選手権大会(ダブルスの部) 日程:2025年1月30~2月2日 場所:スカイホール豊田(愛知)>

全卓球人にとっての憧れの舞台である全日本選手権、通称「全日本」。出場するには各都道府県予選を通過しなければならないため、「出るだけでも難しい大会」としても知られている。

しかし、そんな全日本に17年連続で出場した男がいる。

写真:宝利貴也(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部
写真:宝利貴也(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部

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初出場は中学3年

男の名は宝利貴也(ほうりたかや)。実業団のJR北海道に所属し、現在は日本リーグを主戦場としている。

北海道出身で高校は尚志学園高校(現:北海道科学大学高校)。大学は道外の埼玉工業大学に進学するも、卒業後はJR北海道に入団するなど、その経歴はまさに“北海道のレジェンド”とも言える。

そんな宝利は、中学3年生でジュニアの部に始めて出場したのを皮切りに、17年連続で全日本の舞台に立ち続けてきた。

写真:宝利貴也(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部
写真:宝利貴也(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部

「はじめて全日本に出たときの記憶はあまりなくて、頭が真っ白になったことだけは覚えてます(笑)」

高校2年生まで出られるジュニアの部に中学生で出場した宝利は、その後は一般の部でも代表権を獲得できるようになっていった。

そして、2021年には男子シングルスで4回戦まで勝ち進み、五輪日本代表経験のある吉村真晴と対戦した。

写真:宝利貴也(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部
写真:宝利貴也(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部

「2021年はコロナ禍で棄権する選手が出たこともあって運よく勝ち残れて。4回戦でスーパーシードの吉村選手と対戦できたことは、17回の全日本のなかでも一番印象に残っていますね」

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「大好きな卓球に失礼」

卓球の実業団選手は仕事をしながら競技に取り組むことが基本であり、それは宝利が所属するJR北海道も同様である。

「普段は駅員として働いていて、泊まり勤務で1日勤務したあとに次の日が非番になるので、練習はその日にしています。あとはそれ以外の休日にも練習していて、平均すると練習頻度は週3~4回ぐらいですね」

写真:宝利貴也(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部
写真:宝利貴也(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部

日本リーグに加盟する実業団チームの中では練習時間が多いとは言えないが、それでも「卓球が大好き」と語る宝利は、32歳に至る今まで仕事と両立しながら卓球を続けてきた。

しかし、宝利は今回の全日本が「最後の全日本」と語る。

「一応今年の12月まで日本リーグで現役を続ける予定ですが、個人戦は今回の全日本が最後のつもりです」

引退を決めた理由を尋ねると、少し考えながら宝利はゆっくりと口を開いてくれた。

写真:宝利貴也(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部
写真:宝利貴也(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部

「一番は家庭との両立が難しくなってきたことですね。子どもが2人生まれて妻にも負担をかけてしまっているので、僕だけが卓球をやっているわけにはいかないなと」

もちろん、なんとか頑張れば育児と仕事をこなしながら卓球を続けられるかもしれない。しかし、もしできたとしても今よりも練習時間が少なくなることは明らかだ。

「大好きな卓球を続けるなら本気でやりたいので、中途半端な状態でやるのは卓球に対して失礼だなと。だからこそ、今年の全日本は本気でやる最後の全日本にしようと決めたんです」

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執念の一勝

強い覚悟を持って挑んだ今年の全日本。残念ながら男子シングルスでは初戦で敗退してしまったが、北川加純(JR北海道)と組んだ混合ダブルスでは、先に2ゲームを奪われる苦しい展開となるもなんとか勝ち切り、1回戦を突破した。

「第1ゲームはあっという間に0-6にされてしまったんですけど、そこから挽回して逆転できたことが大きかったですね」

この試合での宝利のプレーは、パートナーの北川も目を見張るものがあったという。

写真:北川加純(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部
写真:北川加純(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部

「相手がカットマンで想像以上に(ボールに)回転がかかっていたので、“キツイな”って思ってたんですけど、宝利さんがいつも以上に振ってくれたので、心強かったです」

宝利にとって今回が最後の全日本ということは北川も事前に知っていた。それだけに絶対に初戦で負けるわけにはいかなかった。

写真:宝利貴也/北川加純(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部
写真:宝利貴也/北川加純(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部

「試合前は(私が)めちゃくちゃ気合入っていました(笑)。それが空回りせず、なんとか1回戦は勝てて本当によかったです」

そして2回戦では、昨年ベスト8に入ったスーパーシードの伊藤礼博/萩井菜津子(日本大)ペアと対戦。第3ゲームはデュースまで粘るも、最後は11-13でゲームを落とし、ストレートで敗れた。

写真:宝利貴也/北川加純(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部
写真:宝利貴也/北川加純(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部

「相手が強いことは分かっていたので、一点でも多く取ることだけを考えていました。負けはしましたが、強い選手と試合できたので本当に楽しかったです」

写真:北川加純(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部
写真:宝利貴也/北川加純(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部

結果として、宝利の全日本の最高成績は2021年の男子シングルスベスト64となった。

表彰台やランク入りなど目立った戦績を残せたわけではない。しかし、17年間全日本に出続けたことそのものが、宝利の卓球選手としてのキャリアを彩っていることは、疑いようのない事実である。

「やっぱりこの全日本は特別な舞台で、中学3年生で初めて出たときからたくさんの思い出ができました。もうこの舞台に立てないことは寂しいですが、自分のなかでは“やりきった”と思っているので、何も後悔はありません」

試合後にそう語った宝利の目に、迷いの色はなかった。

写真:宝利貴也/北川加純(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部
写真:宝利貴也/北川加純(JR北海道)/撮影:ラリーズ編集部

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全日本卓球選手権

混合ダブルス1回戦

〇宝利貴也/北川加純(JR北海道)3-2 烏田東(呉青山高)/福井蓮彩(専修大)
11-9/9-11/10-12/15-13/11-5

混合ダブルス2回戦

宝利貴也/北川加純(JR北海道)0-3 伊藤礼博/萩井菜津子(日本大)〇
8-11/9-11/11-13

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