文:ラリーズ編集部
<天皇杯・皇后杯 平成30年度全日本卓球選手権大会(一般・ジュニアの部)丸善インテックアリーナ大阪>
白熱した試合をラリーズ独自の視点で振り返る、【シリーズ・徹底分析】。
今回は、平成30年度全日本卓球選手権大会・女子シングルス決勝の伊藤美誠(スターツSC)と木原美悠(JOCエリートアカデミー)の試合に迫る。
2年連続の3冠というビッグタイトルをかけた決勝戦に、伊藤がどのような戦術で臨んだのか。
全日本卓球2019・女子シングルス決勝:伊藤美誠 vs 木原美悠
写真:木原美悠(JOCエリートアカデミー)/撮影:ラリーズ編集部
<スコア>
伊藤美誠(スターツSC) 4-1 木原美悠(JOCエリートアカデミー)
13-11/11-9/11-6/9-11/11-5
中盤でのミドル~バックへの集中砲火
写真:中盤でのミドル~バックへの集中砲火/画像:ラリーズ編集部
なんとか1ゲームを先制した伊藤だったが、第1ゲームから木原のフォアカウンターが火を噴いていた。14歳の新鋭・木原は高速化した現代卓球に忠実であり、さすがの伊藤も木原のフォアスマッシュに対して警戒モードに。伊藤は2ゲーム目以降の中盤で、木原のミドル(相手の懐付近)からバック側にボールを集めることで、強烈なフォアの一撃を防ぐとともに、ミスを誘う戦術に切り替えた。
ミドルは一般的にフォアで打つかバックで打つか迷うシェークハンドの弱点である。もちろん木原もミドルを狙われた際の練習はしているだろうが、伊藤の早い打点と小さなモーションに少し反応が遅れることが多くなった。
伊藤はミドルからバックのコースにボールを散らすことにより、木原の強烈な
フォアを防ぐことに成功し、見事に2ゲーム目も連取した。
相手の意識を察知してフォアへもボールを散らす状況判断
写真:伊藤は相手の意識を察知し、フォアへの攻撃に切り替えた/画像:ラリーズ編集部
第3ゲームからは、木原もミドルからバックのコースを意識するようになった。その意識の変化を見逃さないのが、世界トップレベルの中国選手と対峙し続けている伊藤美誠の真の強みだ。タイミングを見計らった正確な判断で、木原のフォアに側に意表を突くボールを送った。これで的を絞らせない状態を作り出し、フォア・ミドル・バックのコースを巧みに打ち分け、木原をシャットアウトした。
伊藤は第4ゲームこそ逆転で失ったが、第5ゲームも同様に木原を揺さぶり、見事に大会連覇を決めた。
全日本選手権で2年連続3冠という女子では史上初となる大記録をつくった伊藤美誠。2020に向けて大事な1年となる2019年を最高の形でスタートできたことだろう。彼女の2019年のさらなる活躍に期待が高まるとともに、14歳で準優勝という素晴らしい成績を残した木原からも目が話せない。