【卓球】伊藤美誠2年連続3冠 14歳木原を下した戦術を振り返る<全日本卓球2019・女子単> | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:伊藤美誠(スターツSC)/撮影:ラリーズ編集部

大会報道 【卓球】伊藤美誠2年連続3冠 14歳木原を下した戦術を振り返る<全日本卓球2019・女子単>

2019.01.20

文:ラリーズ編集部

<天皇杯・皇后杯 平成30年度全日本卓球選手権大会(一般・ジュニアの部)丸善インテックアリーナ大阪>

20日、全日本卓球選手権大会の最終日、女子シングルス決勝で伊藤美誠(スターツSC)が木原美悠(JOCエリートアカデミー)をゲームカウント4-1で下し、2年連続、単・複・混合複での3冠を決めた。

丸善インテックアリーナ大阪に詰めかけた多くの観客の拍手喝采を浴び、伊藤・18歳と木原・14歳、日本を支える“小さな巨人”たちがコートを挟んで対峙。そして、勝負の幕が切って落とされた。

伊藤美誠 vs木原美悠 全ゲームの解説

第1ゲーム、ファーストポイントは木原が「みまパンチ」に酷似したフォアハンドスマッシュで先制。対する伊藤も、得意のサーブから浮いたレシーブをスマッシュ。戦い方の似ている2選手だ。

伊藤、木原はともに、バック面に表ソフトという表面に多数の突起がある変化ラバーを使用しているため、バックハンドを打つと、自然と無回転(ナックル)の相手にとって打ちにくいボールが生まれる。これが伊藤・木原ともに武器になっている。

加えて、木原は巻き込みサーブを得意とする選手である。伊藤はそれをしっかりと見極め、木原のサーブを攻撃的なフリック(払い)で対処し、サーブレシーブで優位に立つ。

しかし、木原は伊藤の攻撃に対し守りに入ることなくカウンタースマッシュで反撃する。この決定率が非常に高い。このゲームはデュースになり、木原が先制。11-10で木原リードの場面で、木原サイドがタイムアウトを取った。

会場からは「みまちゃん頑張れ!」の声が多くかかり、この決勝への注目の高さを伺わせた。

タイムアウト後、伊藤は強気にロングサーブから速攻で得点。最後もロングサーブで木原のレシーブミスを誘い、このゲームを取った。

第2ゲーム、伊藤は木原のフォアハンドスマッシュを警戒し、ミドル(相手の懐付近)からバック側にボールを集める。木原はフォアも、バックもそれぞれ攻撃力はあるが、ミドルは一般的にフォアで打つかバックで打つか迷うシェークハンドの弱点だ。この伊藤の徹底したミドル攻め戦術が功を奏し、伊藤がゲームを連取した。

第3ゲーム、伊藤は引き続きミドルからバックのコース取りを徹底しつつ、木原の意識がバックに行ったところでフォアに意表をついたボールを送り、8-3と大きく離す。次球では木原の甘くなったボールをバックに流し打ちし、木原の狙いを絞らせない。伊藤が木原を見事に攻略し、このゲームを奪った。これで伊藤は連覇に王手がかかる。

第4ゲーム、伊藤は強気に2連続で下回転のロングサーブ。ショートサーブ待ちだったのか、木原は上手くレシーブができない。この2点が大きかったか、レシーブも上手い伊藤に対して、木原は焦り、ミスが多くなる。木原も思い切ったレシーブやバックハンドで食らいつき、伊藤リードの9-8まで追い上げたところで、今度は伊藤がタイムアウトを取る。

そして、タイムアウト明けのポイントを木原がフルスイングのバックハンドで得点すると、今度は伊藤にミスが出始め、このゲームを逆転で落とした。これが14歳のメンタルか、挑戦者の“開き直り”なのか、恐るべし。

第5ゲーム、ここで気を引き締め直したか、伊藤が息を吹き返す。バックハンドで回転のかかったドライブを打ったかと思えば、フォアハンドで無回転の快速スマッシュ。これには木原も対応できない。

5-1の場面ではネットインのボールを下回転をかけて返球し、台で2バウンドさせる妙技も披露。これぞ伊藤美誠だ。この後も伊藤らしい、変化あふれるプレーで点差を離し、最後は11-5と大差で優勝を決めた。

伊藤美誠、木原美悠 試合後のコメント

優勝を決めた伊藤は「嬉しい気持ちもあるけどホッとしている。勝った瞬間は嬉しかった。でも4-0で勝てた試合で、9-3から逆転されたのでそこは反省したい。去年の優勝から自信もついて、さらにレベルアップできた。全日本に帰ってきても3冠。強くなったと思った。自分の成長に拍手したい」と安堵の表情を浮かべつつも、

「木原さんは絶対に向かってくるだろうなと思ってたので、私も挑戦者だと思って臨んだ。五輪に出るという夢があるのでこのシーズンを楽しんでやり遂げたい。もっとレベルアップは可能だと思うので、準備していきたい」と早くも次を見据えたコメントを残した。

一方の敗れた木原は「準優勝できてよかった。全日本始まる前は決勝まで行けるとは予想していなかった。これからの大会は自信を持って臨みたい」とコメントした。

大会史上最年少での決勝進出については「自分が最年少で出場したことが不思議で違和感があるのですが素直に嬉しい。今後も今回の試合を思い出しながら勝ち抜いていきたい」と笑顔で語った。

全日本卓球2019 女子シングルス決勝


写真:木原美悠(JOCエリートアカデミー)/撮影:ラリーズ編集部

伊藤美誠(スターツSC) 4-1 木原美悠(JOCエリートアカデミー)
13-11/11-9/11-6/9-11/11-5