文:ラリーズ編集部
15日、卓球男子で東京五輪代表に内定している張本智和(木下グループ)がカタール遠征から帰国し、オンラインでの取材に応じた。
張本は、新設されたWTT2大会の男子シングルスに出場し、1大会目のコンテンダーでベスト4、2大会目のスターコンテンダーで優勝という結果を掴んだ。
仙台出身の張本は「今大会はいつもと違って3.11から10年というのを胸に刻んで戦っていたので、自分のために嬉しいというよりは節目の10年で優勝できて、皆さんに優勝を届けられて嬉しいなという気持ちでした」と“WASURENAI 3.11”を胸にプレーしていたことを明かした。
張本智和、オンライン会見でのコメント
写真:オンライン会見に応じた張本智和(zoom画面より)/撮影:ラリーズ編集部
今季国際大会初優勝の要因
コンテンダーの大会では、全日本ぶりのトーナメントの大会で少し自信はなかった。(コンテンダーの)準決勝で負けてからも、良い試合はできたという実感はあったので、自信をしっかり掴んで2大会目で決勝まで行くことができて、最後しっかり勝ち切れて良かったです。
2大会とも準決勝で対戦したオフチャロフ選手との試合について
(1大会目の)コンテンダーの方が出だしが良かったが、簡単に点を取りすぎた分、長いラリーのときに対応できなくて、2-0から簡単に逆転されて粘りが全然なかった。
逆に(2大会目の)スターコンテンダーは1ゲームとられてからも、最初から粘ろうという気持ちがあった。いろんなサーブを試したり、コースで崩したり、そこがコンテンダーより準備できたところだと思います。
優勝の瞬間、胸の「WASURENAI 3.11」の文字を見せていた。特別な気持ちがあったのか
写真:張本智和(木下グループ)/提供:新華社/アフロ
いつもは自分のために勝つ、勝たないといけないというプレッシャーがあった。今回はみなさんのためにという気持ちで、逆にその分気持ちも楽に戦えましたし、皆さんがついていると思ってプレーしていました。
「みなさんのために」という気持ちで楽に戦えた今回の経験は今後に活きるか
今大会(節目の10年ということで)どうしても勝ちたかった。ただ、今までの反省として特に勝ちたいというときに全然勝てていなかった。
勝つためにそこまで勝ちたいと思わないようにプレーすることで、出だしはそんなに緊張せずに戦うことができましたし、逆に競った場面では勝ちたい気持ちを前面に出して、残り1ゲーム、2ゲームのときは後がない気持ちで戦って、そのメンタルのバランスはこの2大会で良かったと思います。
中国選手が不参加の大会で、ランキング下の選手に確実に勝って優勝できたことの意味
一番は五輪の準決勝までの試合を想定していたので、そこまで行けるのかもしれないと今大会を通じて思えました。
負けたのもオフチャロフ選手との1回。(五輪でオフチャロフ選手と)対戦するとしても準々決勝、準決勝になると思うので、そこまでは確実にいけると思えたのは良い収穫だったと思います。
写真:オフチャロフ(ドイツ)/提供:ittfworld
技術的な面での優勝できた要因は
特に(スターコンテンダー)準決勝のオフチャロフ戦では、中陣でも互角に打ち合えたり、相手が決まったと思ったボールを返せたりすることも結構あったので、自分が積極的に攻めるボール以外でも得点が増えたというのは、プレーに厚みがでたのかなと思います。
サーブレシーブへの手応え
サービスはTリーグで結構自信がついていたが、Tリーグで効いたサーブとまた違うサーブが効いていたり、逆にTリーグで効いていたサーブが効かなかったりといろんな発見があった。
それでも全体的にサービスの得点率が高かったですし、(準決勝の)オフチャロフ選手や(決勝の)フィルス選手との試合ではレシーブがあんまりよくなかったので、やっぱりレシーブの課題が今は一番あると思います。
ラリーへの手応え
写真:張本智和(木下グループ)/提供:新華社/アフロ
相手に強打されない展開のラリーだったら、少し押されていても巻き返せたプレーがたくさんあったので、レシーブで大崩れしなければ大体五分五分かそれ以上でいけるなと感じた。
まずはレシーブで丁寧に返すこと、そして引き続きラリーを強化していけばもっと相手が有利な展開でも点数を取り返せるのかなと思います。
競った場面や追う展開でも冷静だったが
自分でもとてもそう思っていて、(スターコンテンダー)準々決勝の鄭栄植(チョンヨンシク・韓国)戦も3ゲームとも逆転でしたし、(準決勝の)オフチャロフ戦も2-2から1-5から(ゲームを取れた)、(決勝の)フィルス戦でも取られはしたんですけど3ゲーム目1-8から10-8まで持っていたのは今までない形だった。
自分がプレッシャーなくプレーできているときは連続して点が取れているなと思える。なのでプレッシャーのかかっている各ゲーム出だしを修正していければ、常にゲームの最初から圧倒できる可能性があるなと感じました。
今後、五輪までには中国やハンガリーで国際大会が開かれるかもしれないとの情報もあるが出場するか
ワールドランキングに関わるか関わらないかまだ詳しいことがわからない。それでも自分は大会があれば出る方向で考えている。まだ(状況によっては)棄権する可能性もあるが、五分五分よりも出たい気持ちの方が少し強い。
東京五輪に向けての自信や手応え
写真:張本智和(木下グループ)/提供:新華社/アフロ
この2大会が始まる前までは、Tリーグではたくさん勝っていたが、全然自信がなくて、日本の選手に負けているのに海外の選手に勝てるのかと思っていた。
この2大会を通して、オフチャロフ選手の試合以外はほとんどストレートだったり差をつけて勝つことができたので、改めて世界で勝てるとわかったので、そこはちゃんとした自信になった
五輪イヤー、今後への意気込み
今大会優勝したからと言って、何かが大きく変わるわけではないと思う。毎回毎回自分のベストを尽くすつもりで戦って、良い結果をこの後も残し続けられれば良いなと思っているので、その気持ちを忘れずに頑張りたい。
張本智和 WTTカタール2大会、全試合のスコア
写真:張本智和(木下グループ)/提供:新華社/アフロ
シングルス(コンテンダー)
準決勝:張本智和 2-4 ドミトリ・オフチャロフ
11-8/11-6/9-11/4-11/3-11/7-11
準々決勝:張本智和 3-1 趙大成(韓国)
13-15/11-7/11-7/11-9
2回戦:張本智和 3-1 李尚洙(イサンス)
11-9/10-12/11-4/11-9
1回戦:張本智和 3-0 荘智淵(チャイニーズタイペイ)
11-9/11-5/11-6
シングルス(スターコンテンダー)
決勝:張本智和 4-2 ルーウェン・フィルス(ドイツ)
11-9/11-9/12-14/11-5/7-11/11-8
準決勝:張本智和 4-2 ドミトリ・オフチャロフ(ドイツ)
8-11/11-8/11-8/11-13/11-7/11-7
準々決勝:張本智和 3-0 鄭栄植(韓国)
11-7/11-8/11-9
3回戦:張本智和 3-0 クアドリ・アルナ
11-4/13-11/11-7
2回戦:張本智和 3-0 サイチヤン・グナナセカラン(インド)
11-4/11-5/11-8
張本智和インタビュー
写真:張本智和(木下グループ)/提供:長田洋平/アフロスポーツ