目まぐるしく変わる戦術 張本智和vsオフチャロフ、世界トップレベルの攻防を徹底分析<卓球・WTT男子ファイナルズドーハ2023> | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:張本智和(智和企画)/提供:WTT

大会報道 目まぐるしく変わる戦術 張本智和vsオフチャロフ、世界トップレベルの攻防を徹底分析<卓球・WTT男子ファイナルズドーハ2023>

2024.01.05

<WTT男子ファイナルズドーハ2023 1月3日~5日/カタール>

カタールで開催中のWTT男子ファイナルズドーハ2023の男子シングルス1回戦で張本智和(智和企画・世界ランク11位)はオフチャロフ(ドイツ・同12位)と対戦。

ゲームカウント3-2で張本が勝利をあげた。

張本智和対ドミトリ・オフチャロフ

2023世界卓球選手権ダーバン大会(個人戦)では男子シングルスベスト8、混合ダブルスでは準優勝に輝いた張本は、先日行われたITTF混合チームワールドカップ2023でも樊振東(ファンジェンドン・中国・同1位)にゲームカウント2-1で勝ち越すなど、2024年パリ五輪に向けて仕上がりを見せている。


写真:張本智和(智和企画)/提供:WTT

対するオフチャロフは、東京五輪男子シングルス銅メダリストであり、2018年1月には世界ランク1位になったこともある世界トップの実力を持つ選手だ。最新の世界ランキングでも12位につけており、長きにわたり第一線で活躍するドイツのベテランである。


写真:ドミトリ・オフチャロフ(ドイツ)/提供:WTT

プレースタイルとしては、強烈な回転のバックサービスやチキータ、中陣からパワフルな両ハンド攻撃を叩き込むプレーを得意とする。

直近では張本が3連勝しているものの、これまでの対戦成績は5勝4敗と実力の拮抗したオフチャロフとの対戦をどのように制したのか。サービス・レシーブの戦術転換に注目しながら、解説していく。


写真:張本智和vsドミトリ・オフチャロフ/提供:WTT

WTT男子ファイナルズドーハ2023 男子シングルス1回戦:張本智和対ドミトリ・オフチャロフ(ドイツ)

○張本智和 3-2 ドミトリ・オフチャロフ(ドイツ)
8-11/11-8/5-11/11-4/11-7

第1ゲーム 8-11

サービス

全面へのショートサービス(フォア前中心)+ミドルへのロングサービス

レシーブ

ミドル~バックへ


写真:ドミトリ・オフチャロフ(ドイツ)/提供:WTT

オフチャロフの強烈なチキータレシーブを防ぐために、張本はフォア前へのショートサービスを軸にゲームを組み立てていく。

台上プレーからラリーの応酬となるも、互いに高いラリー力を持つことから互角の展開となる。実際、第1ゲームのサービス時得点率は50%(5/10本)であった。

一方で、オフチャロフの強烈な回転のサービスに対して、張本はミドルからバックへレシーブを集めてしまう。このレシーブに対してオフチャロフは強烈なバックハンドドライブを打ち込み、第1ゲームを優位に進める。

張本のレシーブ時得点率は約33%(3/9本)となり、8-11で第1ゲームを落としてしまう。

第2ゲーム 11-8

サービス

ミドルへのロングサービス中心 

レシーブ

フォア~ミドルへ


写真:張本智和(智和企画)/提供:WTT

ショートサービスからの展開だと決め手に欠けると判断した張本は、ミドルへのロングサービスを中心とした配球へと大胆に切り替える(5/9本)。

強烈な両ハンド攻撃を持つオフチャロフだが、ミドルへのロングサービスに対してはバックハンドで持ち上げることしかできず、張本が優位な形でラリーを開始する。

第2ゲームのサービス時得点率は約56%(5/9本)とやや上昇した。

張本が第2ゲームを奪取できた大きな要因はバックではなくフォア~ミドルへとレシーブコースを変更したことだと考えられる。

オフチャロフは得意のバックドライブで攻めることができず、張本が優位な形でラリー勝負へと持ち込むことに成功した。ラリーの精度でやや上回った張本のレシーブ時得点率は60%(6/10本)となり、11-8で第2ゲームを取り返した。

第3ゲーム 5-11

サービス

全面にショートサービス+ミドルへのロングサービス 

レシーブ

フォア~ミドルへ


写真:ドミトリ・オフチャロフ(ドイツ)/提供:WTT

ミドルへのロングサービスを狙い打たれることを警戒した張本は、第3ゲームでは全面へのショートサービスを中心にロングサービスを織り交ぜる戦術へと変更する。

オフチャロフはショートサービスに対して台からギリギリ出る長さのツッツキレシーブを選択。張本はこのツッツキレシーブを強く攻めることができず、持ち上げたボールを狙われてしまう。

サービス時得点率は25%(2/6本)と一気に低下。第3ゲームを5-11で奪われ、後がなくなってしまう。

第4ゲーム 11-4

サービス

フォア前にショートサービス+ミドルへのロングサービス 

レシーブ

フォア~ミドルへ


写真:張本智和(智和企画)/提供:WTT

あとがなくなった張本はオフチャロフのレシーブコースを限定させるためにフォア前へとサービスを集める。

フォア前のボールに対してもバックハンドで対応するオフチャロフ。フォアからミドルへとレシーブしてしまうとストレートを狙われてしまうため、バックへとレシーブを集めざるを得なくなる。


写真:ドミトリ・オフチャロフ(ドイツ)/提供:WTT

バックへのレシーブは約67%(4/6本)となり、このレシーブを狙い撃ちした張本がラリーを優位に進める。サービス時得点率は約57%(4/7本)と上昇した。

既にレシーブ時も優位な展開を進めていたことから、11-4で張本が第4ゲームを取り返し、フルゲームへと持ち込んだ。

第5ゲーム 11-7

サービス

フォア前へのショートサービス中心+ミドルへのロングサービス  

レシーブ

ミドル中心


写真:張本智和(智和企画)/提供:WTT

最終ゲーム、張本は再び第1ゲームと同様にフォア前へのショートサービスを軸にゲームを組み立てていく。

第1ゲームと異なり、フォア前へのショートサービスを意識したオフチャロフは他コースへのサービスに対するレシーブが甘くなり、張本が三球目攻撃を打ちこむ展開を作ることに成功。サービス時得点率は60%(6/10本)となる。

さらに、レシーブコースをミドル中心へと変更。オフチャロフが持ち上げたボールを更にミドルに打ち込む戦術で一気にリードする。レシーブ時得点率は約62%(5/8本)となり、11-7で勝利した。

まとめ

サービス・レシーブの戦術変換に注目して解説したが、いかがだっただろうか。

ともに世界トップレベルのラリー力を持つ両者の明暗を分けたのは、サービス・レシーブ時に自身の得意な展開に持ち込むための戦術転換だと考えられる。

次回対戦で両者がどのような戦術を見せるのか注目したい。

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