写真:タール・ライボヴィッツ(アメリカ)/提供:ITTFWorld
大会報道 ホームレスの犯罪者からパラ金メダリストへ 一人の男の人生を変えた卓球との出会い<パリパラリンピック卓球競技>
2024.09.01
文:ラリーズ編集部
<パリパラリンピック卓球競技 日時:8月29日~9月7日 場所:サウスパリアリーナ4>
29日から、パリパラリンピック卓球競技が始まった。約80年の歴史のあるパラリンピックでは、これまで数多くのドラマが生まれてきた。
それは卓球競技でも同様で、数々の名試合、名選手が歴史に残っている。その中でも、1996年のアトランタ大会で金メダルを獲得したタール・ライボヴィッツ(アメリカ)は、最も注目される選手の一人と言える。
なぜなら、彼は「元ホームレスの犯罪者」なのだから。
刑務所から表彰台へ
ライボヴィッツは、全身に良性の骨腫瘍がありながらも、パラリンピックに7度出場し、金メダルを1個、銅メダルを2個獲得した、パラ卓球界のレジェンド。
そんなライボヴィッツは「元ホームレスの犯罪者」という過去を持っていたことでも知られている。
幼いころのライボヴィッツは、両親が精神疾患や薬物乱用に苦しんでおり、13歳でホームレスとなった。ニューヨークの地下鉄に住んでおり、食べ物の窃盗を繰り返して、50回以上刑務所に入っていた。
写真:タール・ライボヴィッツ(アメリカ)/提供:ITTFWorld
そんな生活を送っていたライボヴィッツが変わるきっかけとなったのが、14歳か15歳で始めた卓球だった。
地元のクラブチームで武道をしていたライボヴィッツは、その反射神経の良さから卓球を始めることを勧められた。卓球を始めた彼はすぐに卓球が好きになり、その腕前もみるみる上達していった。
そんなライボヴィッツは、21歳で米国パラ卓球チームのコーチから声がかかり、翌年のアトランタパラリンピックへの出場が決定した。そしてなんと、ライボヴィッツはアトランタパラリンピックで、シングルスの金メダルを獲得したのだ。
ライボヴィッツにとって、卓球は自分を救い、自分を変えてくれたものだった。
写真:タール・ライボヴィッツ(アメリカ)/提供:ITTFWorld
アトランタ大会から東京大会まで7大会連続でパラリンピック出場を果たしたライボヴィッツ。そんな彼は現在、競技生活を続ける傍ら、ニューヨークでホームレスを救済するソーシャルワーカーとしても活動している。
また、現在開催中のパリパラリンピックにもアメリカ代表として出場しており、男子ダブルスMD18では1回戦敗退となったものの、3日に行われる男子シングルスクラス9では、2004年のアテネ大会以来となるメダル獲得を目指している。
ひとりのホームレスの人生を激変させたパラリンピック。そんなパラリンピックの今後の発展から、ますます目が離せない。