【現地レポート】"絶対王者"中国代表に何が起こっているのか 現地で見た2つのポイント | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:(ワンチューチン・中国)/撮影:ラリーズ編集部

大会報道 【現地レポート】“絶対王者”中国代表に何が起こっているのか 現地で見た2つのポイント

2024.10.10

取材・文:ラリーズ編集部

中国男女代表に何が起こっているのか。

現在の世界の卓球界において、“最強”中国代表の団体1位は、ほぼ揺るがない存在であった。男子代表は世界選手権で11連覇、オリンピックでは男女とも団体戦5連覇を果たし、連勝記録を更新し続けている。

しかし、現在カザフスタンで行われている第27回アジア選手権では、男女ともに中国代表選手に“絶対王者”の面影はない。

10月9日、女子団体決勝戦では、日本が中国をマッチカウント3―1で勝利し、優勝を決めた。日本が中国代表に勝利しての団体優勝は実に50年ぶりという、歴史的勝利を飾ったのだ。

もちろん、張本美和(木下グループ)が孫穎莎(スンイーシャ・中国)に勝利するなど女子日本代表の成長が第一の理由だが、今回、男子中国代表でも団体準々決勝で世界ランキング1位の王楚欽(中国)が、14歳のベンヤミン・ファラージ(イラン)に敗れている。

今回のアジア選手権ならではの事情がなにかあるのか、現地での取材を通して、主に2つの理由が浮かんできた。


写真:孫穎莎(スンイーシャ・中国)/撮影:ラリーズ編集部

中国代表“異変”2つの理由

一つ目の理由は、慣れない大会球と卓球台である。

今回の大会球は、シームレスボールと呼ばれる繋ぎ目のない球である。直前まで行われていたWTTスマッシュ北京を含め、多くの大会では半球と半球を組み合わせて成型されるボールが主流である。

中国選手をはじめ多くの選手がシームレスボールへの対応に苦しんでいるが、中国選手のプレースタイルが日本選手よりも“細かい感覚、回転量を有する技術、台上、カウンター”などを軸にするため、結果的に中国選手に影響が大きく出ている可能性はある。


写真:ボールが割れたと主張する中国代表/撮影:ラリーズ編集部

卓球台の弾みについても同様のことが言える。大会で採用されるメーカーによって、卓球台は微妙に弾みが異なる。

ある海外選手は「今回の卓球台はボールが滑る感じがあって、バウンドの変化が大きく軌道が変わることが多い」と対応に苦慮していることを明かした。

前述したように、台が滑ることで軌道が読めず、中国卓球が強みとする回転量やその高い技術がかえってミスを誘発している可能性がある。今大会は特に、台の弾みの変化にナイーブになる中国選手の様子が見られる。


写真:王楚欽(ワンチューチン・中国)/撮影:ラリーズ編集部

中国代表の過密日程

2つ目の理由は、過密日程である。
日本でも、代表選手の過密スケジュール問題はよく取り沙汰されるが、中国選手もまた同様である。

中国代表はパリオリンピック終了後、休むことなく各種イベントに参加し、試合にも出場してきた。この直前まで地元北京で行われたWTTスマッシュにも全力のパフォーマンスで挑んでいた。

関係者に話を聞くと、中国代表が今回の開催地カザフスタンに到着したのは、大会初日7日の正午だったということだ。コンディションに影響していてもおかしくはない。選手に「疲れていないか」と尋ねると「大丈夫だよ」と笑顔で返答するので、わからないのだが。

もちろん、どの国の選手にとっても試合条件は同じだが、各国のWTTスマッシュ出場選手たちの多くに“良いパフォーマンスをしたいが身体がついてこない”という疲弊の色が見られるのは確かである。

勢いに乗る日本代表

しかし、中国代表がこのまま黙って“眠れる獅子”のままだとも思えない。大会は13日まで、ここからの男女シングルス、男女ダブルス、混合ダブルスなど、個人戦ではさらに中国代表は強い姿勢で勝利を狙ってくるだろう。

日本代表も、50年ぶりの中国を破っての女子団体優勝で勢いに乗っている。短期決戦において、なにより大切なのは勢いである。

熱いアジア選手権は、ここからが佳境である。


写真:応援する日本ベンチ/撮影:ラリーズ編集部

アジア選手権 今後の試合予定

11日

男子シングルス1回戦、2回戦
女子シングルス2回戦、3回戦
男子ダブルス2回戦、3回戦
女子ダブルス2回戦、3回戦
混合ダブルス準決勝、順位決定戦

12日

男子シングルス3回戦、4回戦、準々決勝、順位決定戦
女子シングルス3回戦、準々決勝、準決勝、順位決定戦
男子ダブルス準々決勝、準決勝、決勝、順位決定戦
女子ダブルス準々決勝、順位決定戦
混合ダブルス決勝

13日

男子シングルス 準決勝、決勝
女子シングルス 決勝
女子ダブルス 準決勝、決勝