写真:ノシャド・アラミヤン(イラン)/提供:ロイター/アフロ
大会報道 張本智和に勝ったアラミヤンって何者? フォアハンドはイップス、過去には五輪金の中国選手も撃破<第20回アジア競技大会卓球競技>
2026.09.26
文:ラリーズ編集部
<第20回アジア競技大会卓球競技 日時:9月20日~28日 場所:スカイホール豊田(愛知県)>
第20回アジア競技大会卓球競技で男子シングルス準々決勝が行われ、世界ランキング4位の張本智和(トヨタ自動車)が、同344位のノシャド・アラミヤン(イラン)にゲームカウント3-4で敗れた。
男子団体で60年ぶりの優勝に貢献し、決勝では世界ランキング1位の王楚欽(ワンチューチン・中国)をストレートで下していた張本。その日本のエースを破ったアラミヤンとは、どんな選手なのか。
34歳のイランのベテラン
ノシャド・アラミヤンは、1991年11月21日生まれの34歳。世界ランキングは344位で、最高位も2012年12月に記録した40位。数字だけを見れば、トップオブトップの選手とは言い難い。
しかし、アラミヤンには数字だけでは語れない“強さ”を持った選手なのだ。
フォアハンドに抱えている“ハンデ”
アラミヤンを語るうえで避けて通れないのが、フォアハンドの“イップス”である。イップスとは、これまで無意識にできていた特定の動作やプレーが、過度な緊張や精神的プレッシャーなどによって突然できなくなってしまう状態のこと。著名なスポーツ選手では、野球のイチロー選手が「若手時代に送球イップスを経験した」と語っている。
アラミヤンの場合は、かつては得意としていたフォアハンドが、ある時期を境にして思うように振れなくなった。
そのため、アラミヤンのプレースタイルは極めて特異だ。ミドルに来たボールまでバックハンドで処理し、フォア側に来たボールも打たずにブロックで返す。可能な限りバックハンドを使い続ける、世界でも珍しい戦型である。
それでいて世界の舞台で勝ち続けられるのは、武器が明確だからだ。
一つは、圧倒的なサービス力。アラミヤンが多用するYGサービスは回転量が多いうえに回転がわかりにくく、馬龍(マロン・中国)や林高遠(リンガオユエン・中国)といったトップ選手からもサービスエースを奪ってきた。
もう一つが、巧みなバックハンドだ。アラミヤンのバックハンドは回転や球質が特徴的で、前陣・後陣を問わず強烈に振り抜くスタイルも脅威となる。
過去には五輪金メダリストも下した“大物食い”
また、アラミヤンは幾度となく格上を倒してきた“大物食い”としても知られている。
その名が広く知られるようになったのは、2012年のアジアカップ。この大会でアラミヤンは、当時世界ランキング3位で、シドニー五輪男子ダブルス金メダリストの王励勤(ワンリチン・中国)を破って4位に食い込んだ。
アジア競技大会との相性も良い。2018年のジャカルタ大会では、男子シングルス銅メダルを獲得。さらに2023年の杭州大会では、男子団体準々決勝の日本戦で戸上隼輔を撃破。この試合で日本はイランにストレート負けを喫し、中国メディアでも「アジア大会開幕以来最大の番狂わせ」と報じられた。
張本戦もフルゲームの激闘に
もっとも、張本とアラミヤンの直接対決では、これまで張本が圧倒していた。
2024年のパリ五輪でも両者は対戦。アラミヤンのフォア側を厳しく突く戦術で張本が勝利し、ベスト16へと駒を進めている。この時点で張本は、アラミヤンに対して負けなしだった。
だからこそ、今回の一戦は波乱だった。
写真:張本智和(トヨタ自動車)/提供:ロイター/アフロ
第1、第2ゲームを連取したアラミヤンは、第3ゲームを張本に奪われた後も、第4ゲームを取り返してゲームカウント3-1とリードする。しかし、そこから張本に第5ゲームをデュースの末に奪われ、第6ゲームも落として3-3に追いつかれた。それでも、最終第7ゲームを11-9で振り切ったのはアラミヤンだった。
3年前に日本を沈めた男が、今回もまた日本のエースの前に立ちはだかった。
第20回アジア競技大会卓球競技
男子シングルス準々決勝
〇ノシャド・アラミヤン(イラン)4-3 張本智和(トヨタ自動車)
11-9 / 11-7 / 3-11 / 11-6 / 14-16 / 6-11 / 11-9






