全日本のリベンジ達成 張本智和の"修正力"と"強気な姿勢"<ハンガリーOP> | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:張本智和(木下グループ)/提供:ittfworld

大会報道 全日本のリベンジ達成 張本智和の“修正力”と“強気な姿勢”<ハンガリーOP>

2020.02.29

文:ラリーズ編集部

白熱した試合をラリーズ独自の視点で振り返る、【シリーズ・徹底分析】

2020ITTFワールドツアー・ハンガリーオープン決勝にて、張本智和 vs 宇田幸矢という対戦に迫る。1月の全日本卓球選手権大会決勝と同じ組み合わせが実現したが、今回の対戦では張本がリベンジを果たす形となった。

前回対戦では宇田の鋭いドライブやカウンターに屈し、敗北を喫した張本がどのようにして雪辱を果たしたのか。解説していく。

>>宇田幸矢の準決勝を徹底分析!日本人キラー下した3つの勝因とは

2020ITTFワールドツアー・ハンガリーオープン決勝:張本智和 vs 宇田幸矢

詳細スコア

○張本智和 4-1 宇田幸矢
7-11/11-8/11-2/11-6/11-8

全日本選手権決勝での宇田の戦術


図:宇田の戦術/作成:ラリーズ編集部

まずは1月の全日本で宇田がどのように張本を下したかを見ていこう。

1.フォアサイドを切るサーブからフォアで回り込む積極的な攻め

全日本選手権決勝において宇田は、張本のチキータを封じるために、わざとフォア側サイドラインを切るようなハーフロングサーブをメインに出していた。

台から出るサーブに対して攻撃的なチキータをすることは難しいため、張本は一旦チキータの構えをするものの、フォアドライブへと切り替えるような場面が全日本選手権決勝では度々見受けられた。

この切り替えのロスにより、張本は打点を落としたフォアドライブしか打てず、結果的にこのレシーブを狙い打たれる形となっていた。ハンガリーオープン決勝においても、宇田はこのサーブを要所で出し、カウンターを狙う場面が何度も見られた。

2.チキータやバック側へのロングサーブからの連続攻撃

また全日本選手権決勝において、宇田は張本のバック側へのロングサーブも多用していた。このサーブに対して張本はバックで持ち上げるようなレシーブしか出来ず、そこから宇田に連続攻撃を許してしまうような展開が多く見られた。

更に、張本のサーブに対しては殆どチキータでレシーブしていた。これに対して張本はブロックからラリーを展開することが多く、宇田に連続攻撃を許す形となっていた。

ハンガリーオープンでの張本の対策


図:張本の戦術/作成:ラリーズ編集部

1.フォア側サイドラインを切るサーブに対して台上フォアドライブで対応

ハンガリーオープン決勝にて張本は、フォア側サイドラインを切るサーブに対して台上でのフォアドライブで対応していた。打点を落としたレシーブならば宇田はカウンター出来るが、攻撃的なフォアドライブに対してカウンターするのは難しい。

実際、全日本選手権決勝においてフォア側サイドラインを切るサーブからの展開での宇田の得点率は試合を通じて70%(20本中14本得点)、最終ゲームにおいては100%(6本中6本得点)だったのに対して、ハンガリーオープン決勝での得点率は33%(6本中2本得点)まで下がっている。

これにより張本は、全日本選手権決勝における得点源であった宇田の戦術を封じることに成功した。

2. 連続攻撃に対してカウンターで対応

宇田の連続攻撃に対して張本は、全日本選手権決勝とは打って変わり、ブロックではなく積極的にカウンターで対応していた。ブロックに対しては前に踏み込みながら攻めていける宇田も、カウンターに対しては押し込まれるような展開が多く見られた。これにより張本はラリーを優位に進めることが出来るようになっていた。

また宇田のバック側へのロングサーブに対しても、完全に対応出来ているわけではないものの、試合の要所では逆にレシーブエースを決めるような場面もあった。試合全体を通したこの強気の姿勢が勝利へと結びついたと考えられる。

まとめ


写真:優勝を果たした張本智和(木下グループ)/提供:ittfworld

前回対戦から約1か月でしっかりと宇田の戦術に対応した張本。その修正力と強気の姿勢こそが張本の強さであろう。

今回の優勝で張本は、今季ワールドツアー初優勝、通算5個目のワールドツアータイトルを獲得した。全日本での敗戦をバネに、東京五輪に向けて幸先良いスタートを切った張本の今季の活躍が楽しみだ。