中国ペア破った平野美宇/石川佳純ペアの"2つの準備"とは<ドイツオープン> | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:平野美宇・石川佳純/提供:ittfworld

大会報道 中国ペア破った平野美宇/石川佳純ペアの“2つの準備”とは<ドイツオープン>

2020.02.04

文:P.N 家

白熱した試合をラリーズ独自の視点で振り返る、【シリーズ・徹底分析】。

今回はドイツオープンで平野美宇(日本生命)/石川佳純(全農)ペアが中国の孫穎莎(スンイーシャ)/丁寧(ディンニン)ペアを破った試合を振りかえる。

国際ツアーでは初の組み合わせとなった中国ペア。世界ランキングは孫穎莎が2位、丁寧が7位と共にトップランカーだ。対する平野/石川はともに1月に東京五輪の団体代表に内定し団体でのダブルス起用も確実視されている。

昨年シングルス代表レースを争った2人が勝利を喜ぶ姿には胸が熱くなる卓球ファンも少なくないのではないだろうか。その勝利に至った要因をいくつかのポイントに絞って振りかえってみる。

1. 平野のストップレシーブ→4球目のコース取り


図:平野のレシーブイメージ/作成:P.N 家

まず平野のレシーブでの武器といえばバックハンドでのチキータや台上ドライブといった攻撃的な技術が印象的だ。しかしこの試合において平野は一度もバックハンドで回り込んでレシーブしていない。

サウスポーの石川と組んでいるため、バックハンドでレシーブした場合そのあとの動きが遅れてしまうことを避けての策だと考えられる。ここが平野のダブルスにおける成長が感じられるポイントとなった。


図:石川の4球目攻撃/作成:P.N 家

この試合、平野は終始ストップレシーブを徹底していた

まず孫穎莎のサーブを平野がサウスポーの丁寧の身体から最も離れたフォア前に落とし丁寧を台の中まで出させる。丁寧はフリックやツッツキで3球目を対応するが、平野の質の高いストップにより決定的な攻撃にはならない。それを石川が孫穎莎のバックに回転量のあるボールで返す。

丁寧・孫穎莎それぞれのフォアハンドに対しては安易につなぎのボールを送らずに、決定打となるボールを選んで相手のフォア側に強打するという展開を狙っていた。


写真:日本ペアに苦杯を喫した丁寧・孫穎莎(写真右)/提供:ittfworld

この展開は孫穎莎のサーブだけに限らず、丁寧のサーブにも同じことが言える。孫穎莎のフォア前からミドル前にストップし、丁寧のバックに4球目攻撃、というパターンも多くあった。

ときにはストップが浮いてしまい強打される場面もあったが、粘り強く冷静にストップレシーブを続けることで中国ペアが嫌がるラリーへの入り方ができていたと言える。

中国ペアがこの展開を嫌がっていたと思われるのは中国ペアのサーブの変更に表れている。2ゲーム目5-5で丁寧のサーブ。それまでには出していなかった上回転サーブを平野に対して出した。

それまで下回転系のサーブをストップしてきた平野はオーバーミスをしてしまった。日本ペアは即座にタイムアウトを取り、相手の見事ともいえる戦術変更に対策を取らざるを得なかった。その後5-8までリードを許したが試合を通して、平野のフォアハンドでのストップレシーブが効果的であったことは見て取れた。

2. 第2ゲームでの日本ペアのサーブ変更


写真:平野美宇のサーブ/提供:ittfworld

やはり世界ランキング2位と7位の中国ペアだけあって、質の高いサーブを出していてもダブルスの限定されたコースでは対応される。その対応力が国際大会でのあと1本を譲らない中国の強さとも言える。

この試合、平野/石川ペアはその対応力に捕まってしまわないサーブ戦術の変更ができた。

まず1ゲームリードされた状態で迎えた2ゲーム目。5-7とリードされた場面で平野のサーブ。巻き込みサーブを短く出すも孫穎莎のバックハンドで強打されてしまう。

次を落とすとかなり厳しくなってしまうポイントで次に日本ペアが選択したのはロングサーブだった。

この思い切った選択が功を奏し6-8と日本ペアは差を縮めた。そして同じ第2ゲーム、5-8から追いついて8-8とした場面で今度は石川のサーブだった。この第2ゲームでは使っていない、すなわち石川から丁寧にはこの試合初となる巻き込みサーブを出した。フォアハンドで合わせにいった丁寧のレシーブはネットミスとなり日本ペアは9-8と、5-8から逆転し第2ゲームを奪った。

続く第3ゲームを奪った日本ペアは勝利に王手をかけた。第2ゲームで丁寧に対して効果的だった巻き込みサーブを石川は出した。このゲームでもサービスエースを奪い、石川からのサーブの展開で合計4得点をあげた。

まとめ


写真:石川佳純・平野美宇(写真右)/提供:ittfworld

試合後のインタビューでも2人は、準備してきたサーブ・レシーブからの戦術が上手く出せてよかったとコメントしている。こうして試合内容を振り返ると、全体を通じて冷静な台上での展開を徹底したことで勝利を引き寄せたことが分かる。

速い展開が多い女子のダブルスで右利き・左利きのペアでは平野のバックハンドでのレシーブ強打が発揮されないのではないかと不安もあったかもしれないが、東京五輪団体を視野に入れて平野・石川ペアの引き出しは確実に増えていくだろう。次回の国際ツアーでの優勝に期待が高まる。