卓球の理論や感覚を一から教えてくれる「卓球処やまぶき」に行ってみた | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

卓球×エンタメ 卓球の理論や感覚を一から教えてくれる「卓球処やまぶき」に行ってみた

2018.10.03

夏の日差しが暑い中、東京メトロ有楽町線の江戸川橋駅に降りた。

歩いて5分のところに2018年4月にオープンしたユニークな取り組みをする卓球場があるという。

建物の前についたので、卓球場の電話に連絡してみたところ、ビルの3階からユニフォーム姿のオーナーが窓から顔を出して手を振ってくれていた。

学生の頃から続けてきたコーチ業がライフワークに

今回は新宿区山吹町にある卓球処やまぶきを紹介したい。卓球場を運営する佐久間龍巳氏にお話を伺った。

 

卓球処やまぶきの入り口

佐久間氏は大学まで現役選手として関東学生リーグでプレーしていたが、その傍らで卓球コーチもしていた。
中野区にある「みなみだいいつも」という卓球場で学生の頃からコーチとして関わってきた佐久間氏は大学卒業後もコーチ業を続けてきた。

佐久間氏(写真)は独自の卓球コーチングを学生時代から続けて来た

10年近くコーチを続ける中で、コーチに関するノウハウが自分の中で蓄積されてきた。そしていつしか独立したいという意思が強くなったという。そして準備期間を経て、青山スポーツで以前コーチをしていた千絵コーチと一緒に4月1日から新宿区山吹町で卓球場をオープンすることになった。

コーチのプロを目指すキャリア

卓球界では、かつての名選手が監督やコーチをするケースも多いが、指導力と選手時代の実績が必ずしも直結しないことは、これまで数多くのスポーツで実証されている。

佐久間氏はインターハイにも出場し、大学時代まで卓球を続けてきたものの、実業団で活躍できるほどの実力は持っていなかった。

純粋に卓球が好きで卓球をライフワークにしたいと考えた時、これまで続けてきたコーチという選択肢が浮かんできたのだ。

「(教えている人が)自分の一言に反応してもらえることがコーチとしてのやりがいになりました。現役の選手としてプレーして活躍するよりも楽しかったです。」

元実業団選手でなくてもコーチという形で卓球を続けられる。卓球を長く続けてきた人にとって、卓球コーチという仕事がよりメジャーになれば、仕事で好きな卓球と関われる可能性が広がる。佐久間氏は、「卓球コーチがキャリアの一つの選択肢となれば」と語る。

卓球の理論・原理を一から教えてくれる教室

卓球処やまぶきでは、曜日時間帯を決めた2種類の教室(コツコツ教室とエンジョイ教室)と不定期で開催する「ときどき教室」がある。

また、それ以外の時間帯では1人からの個人レッスンと2~5人の少人数のグループレッスンを行なっている。

最近では、30分の個人レッスン+マシン練習の30分の計1時間のレッスンで3000円で受けられるミニレッスンコースも人気だと言う。

「リーズナブルにワンポイントレッスンが受けられることが人気の理由ですね」と佐久間氏は語る。

練習場としての利用予約も受け付けており、最近では昼休みの時間帯に気軽に打てるキャンペーンなども行なっている。

初心者向けのエンジョイ教室では、卓球に関する感覚や基礎的な打ち方について、理論や原理から教えてくれる。この理論や原理の伝え方が他の卓球場と大きく異なるところだという。

柄の部分から先が上下に曲がるラケットなど様々な道具でレッスンを工夫している。

例えば、ラバーでボールをこすり回転をかける感覚は、初心者には分かりづらい。そこで、グリップから先が曲がるようになっているしなるラケットを使って、回転をかける感覚から伝えている。

また、ボールにも印を付けてどの方向に回転がかかっているかを分かりやすく工夫している。(佐久間氏は回転には大きくジャイロ回転(船のスクリュー回転)・横回転(ヘリコプターのプロペラ回転)・上下回転(車のタイヤ回転)があると説明する。)

他にもブロックの感覚を伝えるために、まな板にラバーを貼り合わせた物を持たせたり、ドライブやチキータの感覚は、ゴルフボールを置くティーにプラボールを置いて、まずは止まった球に対して打ち方を教えるなどあらゆる自作の小道具を駆使して、最初に適切な卓球の感覚と癖を体で覚えさせているのだ。

卓球の理論を感覚的に理解しやすくする為、佐久間氏が考案したひみつ道具の数々

これは、卓球を長年やってきた人にとっても目から鱗になる取り組みだろう。

卓球のコーチはこれまでの経験則から受講者に教えるために、コーチ一人一人で技術の伝え方が異なる場合がある。コーチの伝え方によっては、何が正解なのか悩んでしまう人もいると聞く。

佐久間氏は、様々な独自の取り組みを行い、卓球の技術に悩んでいる人に対して分かりやすく理論を教える工夫を日々凝らしている。卓球のコーチ業を追求し続けていると言って過言ではない。

粒高の対策などをメインで担当する千絵コーチ(写真)

また、千絵コーチはペンホルダーに粒高ラバーを貼った戦型なので、カットマンなどの粒高ラバーを用いた特殊な戦型の選手との戦い方を対策することも出来る。逆に粒高ラバーの使い方のレッスンも得意としている。

「守備系の戦型に対する戦い方にはやってはいけない事が複数あるので、それを知っているだけでも大分戦い方が楽になると思います」と佐久間氏はアピールする。

佐久間氏(左)と一緒にコーチを勤める千絵コーチ(右)

新しく卓球を始める人に来て欲しいです

昼休憩時に近隣の人が卓球しやすい場所を提供している

佐久間氏は、「新しく卓球を始める人に来て欲しいです」と話す。

同氏によれば、新しく卓球教室に通い始めるのは、学校のPTA対抗戦が主なきっかけの一つになるという。

PTAは幼稚園~中学・高校まで考えると、10年以上のスパンがある。PTAの催しで卓球大会が行われると、親子同士の戦いで白熱し、よそより上手くなりたいという思いから卓球教室に通い始める人が多いそうだ。

また、卓球を始めた親の子供が影響されて卓球を始めるというケースも考えられ、親子でリピーターとして卓球を楽しんでくれれば、卓球教室もより盛り上がることが考えられる。

そういう意味では、社会人になってから卓球を始めるには、20〜30代が大きなチャンスとも言えるだろう。卓球は、80代まで続ければ、50年以上の選手キャリアを積むことができる生涯スポーツだ。

佐久間氏も「僕らと同じくらいの年代の人にも是非来て欲しいですね!」と楽しそうに話していた。

卓球は学生時代にプレーする選手がもっとも多く、社会人になるまでに離脱する人が多い。卓球を始めたことがなかった人、卓球を仕事にすることを諦めていた人が、卓球を様々な形で楽しみ、卓球人口の裾野が広がれば、もっともっと卓球が盛り上がるだろう。

そんな思いを胸に卓球処やまぶきを後にした。

文・写真:座間辰弘(ラリーズ編集部)

卓球処 やまぶき

施設名 卓球処 やまぶき
住所 東京都新宿区山吹町362 みどりビル 3階
営業時間 9:00~21:00(不定休)
アクセス 地下鉄有楽町線 江戸川橋駅 1b出口徒歩1分
地下鉄東西線 神楽坂駅 2番出口(矢来口)徒歩10分
TEL 03-5579-2364 (電話受付 10:00~20:00)