大会報道 早田ひな鮮烈デビューも中国の牙城崩せず【日本女子・ITTFチームワールドカップ2018】(大会レポート)
2018.02.26
文:中川正博(Rallys編集部)
<2018年2月22日〜2月25日 ITTFチームワールドカップ2018(ロンドン)>
ITTFチームワールドカップが25日(現地時間)に閉幕し、女子は中国が全試合ストレート勝ちの圧倒的な強さを見せ優勝を飾った。本大会は五輪、世界選手権と並ぶ卓球三大タイトルの一つ。世界のトップ12ヶ国が参加し、3名の選手がダブルス1本、シングルス4本に出場する団体戦方式で世界一を争った。
日本女子は石川佳純(ITTF世界卓球ランキング4位、2018年2月現在)、伊藤美誠(同6位)、平野美宇(同7位)、早田ひな(同14位)がエントリー。早田・伊藤がダブルスとシングルスに1回ずつ出場し、石川がシングルスに2回出場する固定オーダーで予選から決勝まで勝ち上がった。決勝では中国に完敗し準優勝となったが、日本代表(シニア)での団体戦デビューとなった早田が単複で活躍し、リオ五輪メンバーの石川、伊藤が安定した戦いぶりを見せるなど4月の世界選手権(団体戦・スウェーデン ハルムスタッド開催)に繋がる内容となった。またアジアチャンピオンの平野を起用せずに決勝まで勝ち上がれる選手層の厚さも見られた。
日本女子、ITTFチームワールドカップ2018の軌跡
準々決勝 日本 3-1 シンガポール
グループリーグを1位通過で迎えた準々決勝。ドローの結果、日本の対戦相手は世界ランク3位のフォン・ティエンウェイを擁するシンガポールとなった。
日本の1番ダブルスはグループリーグから調子の良い伊藤美誠/早田ひなペア。決勝トーナメントに入っても二人の呼吸は合い、第1ゲームを11-2で勢い良く取ると、第2ゲーム、第3ゲームも中盤までは接戦になるものの、伊藤の早い打点での攻撃が面白いように決まり、ストレート勝ちを収めた。
2番は石川佳純とフォン・ティエンウェイ(世界ランク3位)のエース対決となった。ダブルス勝利の良いムードを石川は第1ゲームから猛攻。台から下がることなく、数々の高速ラリーを制し、第1、2ゲームを取得した。第3ゲームは相手も意地を見せ、9-10とゲームポイントを取られたが、そこから石川が高い集中力を見せ、逆転。13-11でゲームを奪い、ストレートで世界ランク3位のフォン・ティエンウェイに勝利した。石川は見事、エースの役割を果たした。
そして迎える3番は早田ひなと実力者ユ・モンユ(同51位)のカード。第1ゲーム7-6リードの場面で良いラリー展開となるも、相手のボールがエッジをかすめてしまう。そこから試合の流れが相手に傾き、第1、第2ゲームを落とす。第3ゲームはなんとか奪い返したものの、第4ゲームのデュースもモノにできずに1-3で敗れた。早田は相手に勝負所でうまくミドルを突かれてしまい、立て直すことが難しい試合であった。
悪い流れを断ち切りたい日本は、4番で再びエース石川に望みを託した。2番に続き、高い集中力を維持した石川は、相手のイ・ハンフィを全く寄せ付けずストレート勝ち。取られたポイントが合計8点のみという完璧な試合内容を見せ、日本に勝利をもたらした。
準決勝 日本 3-0 北朝鮮
続く準決勝は、リオ五輪で石川佳純と福原愛を倒したカットマン・キムソンイを擁する北朝鮮となった。
1番ダブルスは今大会でも絶好調の伊藤美誠/早田ひなペア。両選手のカウンターが面白いように決まり、第1、第2ゲームを圧倒すると、第3ゲーム6-10とリードされた場面から強気なプレーが光り、6点連取に成功。大逆転でストレート勝ちを収め、2番にいい流れで繋いだ。
2番は戦前の予想通り、石川佳純とキムソンイのカードとなった。リオ五輪のリベンジが期待されたこの試合、第1ゲームを巧みなコース取りで揺さぶった石川が11-3で圧倒。その後のゲームも石川は緩急を付けたミスの少ないカット打ちを見せる。焦ったキムの攻撃ミスを誘う場面も多く見られ、見事ストレートで勝利。リオ五輪のリベンジを果たした。石川が課題としていたカット打ちの進化が光った一戦となった。
いい流れで出番が回ってきた3番・早田は立ち上がり、同じサウスポーのチャヒョシムに対してバック対バックの展開でうまく点数を重ね、第1ゲームを11-8で奪取。続く第2ゲームはデュースで奪われるも、第3、第4ゲームはともに9-9から高い集中力で見事2点連取。早田は日本チームに決勝進出をもたらす貴重なポイントを挙げた。またこの決勝進出が、この日25歳の誕生日を迎えた石川へのバースデープレゼントとなった。
決勝 日本 0-3 中国
迎えた決勝は、互いに真っ向勝負のオーダーでぶつかり合った。
1番はここまで全勝の伊藤美誠/早田ひなペアと、丁寧/劉詩文ペアの対戦。少し日本ペアに緊張が見られ、第1、2ゲームを連続で奪われたが、そこからは自分たちの良い所をうまく出すことができ、第3ゲームを取得した。しかしながら中国ペアの壁はやはり厚く、1-3負けとなった。
続く2番、ここまで5戦全勝の石川佳純と、朱雨玲(同2位)のエース対決となった。石川は今大会を通じて好調のバックハンドで得点する場面も見られたが、ラリーにおいて朱が1本多く返してくるという展開が続き、ストレート負け。ラリー戦でスピード、回転量、ともに朱雨玲の方が一枚上手であった。
後がない日本は、3番で全日本女王の伊藤美誠が出場。世界チャンピオンの丁寧に対して互角のラリーを見せたが、最後は丁寧のロングサーブからのパワープレーに圧され、ストレート負けを喫した。伊藤らしい前陣での強打によるスーパープレイも見られた他、ラリー中に丁寧のスピードにもついて行くことができており、実力が近づいていることが感じられた。
今大会、結果的に中国チームから勝利を挙げることは出来なかったが、平均年齢19.6歳の若い日本チームの伸びしろは大きい。平均年齢25.3歳で円熟味を帯びた中国チームに対し、今春の世界選手権、そして2020年の東京五輪までにどこまで差を縮められるか。期待が高まるプレーが随所に見られた大会となった。
ITTFチームワールドカップ2018の結果
優勝:中国
準優勝:日本
ベスト4:北朝鮮、香港
ITTFチームワールドカップ2018:女子の結果詳細
グループリーグ第1試合 日本 3-0 アメリカ
伊藤美誠/早田ひな 3(6,5,8)0 ワンエイミー/ウーユエ
石川佳純 3(6,5,-11,4)1 チャンリリー
伊藤美誠 3(5,-13,2,14)1 ウーユエ
グループリーグ第2試合 日本 3-0 エジプト
伊藤美誠/早田ひな 3(8,4,6)0 アブデルアジズ/ヘルミー
石川佳純 3(7,5,-9,0)1 メシュレフ
早田ひな 3(5,6,7)0 ヘルミー
準々決勝 日本 3-1 シンガポール
伊藤美誠/早田ひな 3(2,7,8)0 イ・ハンフィ/ユ・モンユ
石川佳純 3(10,8,11)0 フォン・ティエンウェイ
早田ひな 1(-8,-5,8,-10)3 ユ・モンユ
石川佳純 3(2,2,4)0 イ・ハンフィ
準決勝 日本 3-0 北朝鮮
伊藤美誠/早田ひな 3(3,8,10)0 チャヒョシム/キム・ナムヘ
石川佳純 3(3,8,7)0 キムソンイ
早田ひな 3(8,-11,9,9)1 チャヒョシム
決勝 日本 0-3 中国
伊藤美誠/早田ひな 1(-7,-6,6,-8)3 丁寧/劉詩文
石川佳純 0(-5,-7,-7)3 朱雨玲
伊藤美誠 0(-7,-9,-8)3 丁寧
試合結果の見方
表記ルール: 選手名A ゲーム数(各ゲームのポイント)ゲーム数 選手名B
各ゲームのポイントの表記例: 選手Aが選手Bと対戦し、1ゲーム目11対6、2ゲーム目11対5、3ゲーム目12対10で選手Aが勝ち、選手Bが負けた場合、
「選手A 3(6,5,10)0 選手B」 または 「選手B 0(-6,-5,-10)3 選手A」 と表記。