大島祐哉、シングルス今季初勝利を掴んだ、最後の引き出しとは<木下vs琉球> | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ)

写真:大島祐哉(木下マイスター東京)/提供:©T.LEAGUE

大会報道 大島祐哉、シングルス今季初勝利を導いた最後の引き出しとは<木下vs琉球>

2020.02.04

文:ラリーズ編集部

Tリーグの見逃せない名勝負をラリーズ編集部独自の視点で解説する【T.LEAGUE名場面解説】。

今回は2月2日のノジマTリーグ・木下マイスター東京VS琉球アスティーダ戦。大島祐哉(木下マイスター東京)とリピン(琉球アスティーダ)の試合にスポットライトを当てる。

大島祐哉は、強靭なフットワークと破壊力抜群のフォアドライブで相手を攻め切る、攻撃的な卓球が持ち味の選手だ。2019年度の全日本選手権では、準決勝で張本智和を下し、準優勝を果たしている。2ndシーズンとなる今季は、シングルスで勝利を挙げていなかった。

対するリピンは、中国出身の33歳。2009年の世界選手権横浜大会で、ミックスダブルス優勝の実績を誇る。その後カタールに国籍を移し、リオオリンピックにも出場した。強烈なバックドライブを武器に、今季からチームを引っ張っている。

シングルスでは初顔合わせとなるこの試合は、大島が自身の持ち味を発揮し、強敵相手に見事初勝利を掴み取った。大島の、ストロングポイントを活かした巧みな戦術と、勝負の分かれ目となったあるポイントを解説する。

ノジマTリーグ 木下マイスター東京対琉球アスティーダ:大島祐哉VSリピン

詳細スコア

○大島祐哉3-2リピン
11-6/2-11/11-5/10-11/12-10

大島VSリピンのハイレベルな試合はこちらから

1.フォアドライブと抜群のフットワークを活かすサーブの配球


図:大島のサーブの配球/作成:ラリーズ編集部

大島は、第2ゲーム以外、自身の得意なフォアドライブの連打で得点できるようなサーブの組み立てを見せた。それが、フォア前に短い横回転のサーブと、バックロングへのスピードサーブの組み立てだ。

一般的に、バックロングサーブは相手に一発で撃ち抜かれたり、全面に速いボールが返ってきたりするというリスクもあるため、ほとんどの選手は、ショートサーブから3球目攻撃を狙う。

しかし、大島は常人離れしたフットワークを持つため、他の選手よりもロングサーブの比率が高い。全面に速いレシーブが来ても、フットワークを活かして得意のフォアドライブで攻撃できるからだ。特に、回り込んでのフォアドライブは、抜群の動きの速さを誇り、何度も得点に結びついた。

しかし、バックロングに対し回り込まれ、フォアで攻撃されると得点するのは難しい。そこで大島は、ショートサーブを遠いフォアサイドへコントロールすることで、バックロングをリピンに回り込ませないような配球を見せた。この組み立てにより、大島は自身のサーブから確実に先手を取ることができ、得意のフォアドライブ連打に繋げたのである。


写真:フォアドライブを振り抜いた大島祐哉(木下マイスター東京)/提供:©T.LEAGUE

2.勝利を手繰り寄せた渾身のチキータ


図:緊迫した場面で見せたチキータ/作成:ラリーズ編集部

4ゲーム目、10-8でマッチポイントを握りながらも、開き直ったリピンの積極果敢な攻撃に押され、このゲームを落とした大島は、続く最終ゲームも6-10と敗戦の瀬戸際まで追い込まれた。

しかし、ここで勝ちを意識し少し消極的になったリピンを、今度は大島が追い詰める。得意のフォアドライブで9-10まで追いつくと、次の一本が勝敗を分けた。

リピンは、得意のバックドライブで3球目攻撃を狙おうと、得点率の高いフォア前にショートサーブを選択。しかし、大島はそのサーブのコースを完全に読み切り、フォアクロスへのチキータで勝負をかけた。これに対しリピンの返球がミスとなり、流れは一気に大島に傾いた。

11-10のマッチポイントでは、リピンの同じコースのサーブを、今度はバックへ強烈なチキータで狙い打った大島。おそらく、リピンの頭の中には、その前のフォアクロスへのチキータが焼き付いていたのだろう。一瞬リピンの反応が遅れ、返球はコートを捉えられず。大島のセカンドシーズン、シングルス初勝利が決まった。


写真:粘りのプレーで熱戦を演じたリピン(琉球アスティーダ)/提供:©T.LEAGUE

まとめ

今回の試合は、大島の、得意を貫く戦術と、勝ちをもぎ取るための最後の引き出しに、勝利の女神が微笑んだ。特に、マッチポイントを握られた中でのフォアクロスへのチキータは、確かな技術力とそれを実行する勇気が存分に発揮されていた。

卓球プレイヤーなら、勝負所での1本の遠さに頭悩ませたことがあるだろう。今回の試合のように、緊迫した場面でトップ選手がどのようなプレーを見せ点をもぎ取りに行くのか、参考にしてみるのも良いかもしれない。